がん外来

    こもれびの診療所のがん治療方針

    「がんは治る」
    「がんは治らない」
    「〇〇を飲んだらがんが治った」
    「〇〇を行ったけどがんは治らなかった」

    様々な情報があふれ、がん患者さんは非常に混迷しています。
    ここの問題はそもそも、「がん」をすべて同じように考えて、「がんの種類」と「がんのステージ」を無視しているからだと思います。
    よって、この視点から、がんを考えてみます。

    がんは同じにあらず

    がんには非常にたくさんの種類があります。
    肺がん・腎臓がん・肝臓がん・膵臓がん・悪性リンパ腫・白血病など、一般的にはすべて「がん」と呼ばれるものです。しかし、これらは大きくは「がん」という種類であっても、予後も治療方法も全く違います。

    また、同じがんであってもステージで治療も予後も異なります。
    がんの進行の程度は、一般的には「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的で、がんの大きさや広がり具合、リンパ節や他の臓器への転移の有無といった指標を組み合わせて、がんの状態を0期~Ⅴ期の5段階で表します。

    ステージ0

    がん細胞が上皮内にとどまっている状態。ほぼ100%完治する状態。

    ステージⅠ

    原発巣(最初にがんが発症したとされる部位)に留まって存在している状態。9割以上が治せる状態。

    ステージⅡ

    原発巣と近くのリンパ節にがんが転移した状態。通常は8割近くのがんが治せるといわれる状態。

    ステージⅢ

    原発巣と近くのリンパ節だけではなく、遠くのリンパ節にまでがんが転移した状態。一般的には進行がんと呼ばれる。ただし部位によっては6割近く治すことも可能。

    ステージⅣ

    原発巣と近くのリンパ節、遠くのリンパ節、さらに他の臓器にまでがんが転移した状態。この状態では、通常かなり治癒率が下がる。

    ステージⅤ

    ステージⅣ期(多臓器転移がん)を超えた悪液質(脂肪組織と骨格筋の両方が消耗している病態)という末期がんの状態。ここからの回復は困難とされる。

    がんの種類及びがんのステージによる5年生存率

    【胃がん】
    ▼ステージI:97.2%
    ▼ステージII:62.8%
    ▼ステージIII:49.0%
    ▼ステージIV:7.1%

    【大腸がん】
    ▼ステージI:98.8%
    ▼ステージII:90.3%
    ▼ステージIII:83.8%
    ▼ステージIV:23.1%

    【肝がん】
    ▼ステージI:62.3%
    ▼ステージII:37.3%
    ▼ステージIII:14.8%
    ▼ステージIV:0.9%

    【肺がん(腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、その他)】
    ▼ステージI:83.3%
    ▼ステージII:48.8%
    ▼ステージIII:22.7%
    ▼ステージIV:5.8%

    このように、おなじ「がん」のくくりであっても、「種類」と「ステージ」で、5年生存率は全く異なるということです。
    大胆に言ってしまえば、一般的な西洋医学では
    「Ⅰ~Ⅱ期」は治る可能性のあるステージ、「Ⅲ~Ⅳ期」、特に「ステージⅣ以降」は延命を主体に考えるステージ
    ということになります。
    この点を理解しておかないと、「〇〇でがんは治る」、「〇〇でがんは治らない」という言葉に振り回されることになります。

    こもれびの診療所を訪れる2グループのがん患者様たち

    こもれびの診療所にがんの治療を希望する場合は基本、以下の2つです。

    • 西洋医学的な治療はできるだけやりたくないと望んでいる場合
    • ステージⅢ期以降で、西洋医学のみでの治癒が難しい場合

    どちらにおいても、基本方針は同じで、以下の統合医療の定義に基づき、一人一人の患者様にとって、最も幸せな方法とは何かを話し合います。

    「統合医療とは、個人の年齢や性別、性格、生活環境さらに個人が人生をどう歩み、どう死んでいくかまで考え、西洋医学、補完代替医療を問わず、あらゆる療法からその個人にあったものを見つけ、提供する受診側主導医療」
    ただし、上述のように種類と早いステージングにおいては、西洋医学は非常に有用です。
    実際、ステージ0~1における281名のがん患者さんにおいて、標準治療と代替療法のみの比較をした場合、標準治療群の方が、はるかに高い生存率でした。

    また他のデータにおける5年生存率(2010年)は通常の西洋医学のみでステージ1で90%、ステージⅡで80%でした。
    よって1)の場合、その情報を共有し、そのなかで一緒にベストの治療法を考えていきます。
    これに対して2)の場合です。
    ステージⅢ以降、特にⅣの場合、西洋医学では基本抗がん剤一択となり、そこに活路を見出すことは困難と言わざるを得ません。
    よって、補完代替医療の出番となります。
    ただし、こもれびの診療所ではがんと闘い続けるだけの医療は行いません。

    なぜなら、特にステージⅢ以降のがんにおいて「死」は「無視することのできない現実」だからです。その現実から目を背け、「死」を「ない」こととし、ただがんを治すことだけを考える「ふり」をするのは、決して幸せながん治療ではありません。実際、死から目を背け続けた結果、余命のすべてをがんの治療のみに使い、大切な言葉を伝え忘れて後悔する家族をたくさん見てきました。

    もちろん、死と向き合う不安はあるでしょう。
    でも大丈夫です。
    院長である加藤は日本で唯一死生学研究により博士号を持っており、その研究結果を一言で述べれば「死後世界は愛いっぱいの素晴らしい場所である」と断言できるからです。
    これさえわかれば、がん治療にとってマイナスな「死の恐れ」という感情は減少します。
    がんの恐れ、死の怯えをなくし、右手に「治る」という希望を、左手に「一日一生」の覚悟を持って輝ける毎日のお手伝いをさせていただければと思っています。

    こもれびの診療所における補完代替医療的がん治療

    当院は「がんのエネルギーシステム」と「がん細胞の特徴」の2つの面からその人にあったベストの対策を考えていきます。

    1)エネルギーシステムから考えるがん治療

    統合医療的がん治療はオットー・ハインリッヒ・ワールブルク博士(ドイツ 1924) の
    がん細胞はミトコンドリアが少なく、 酸素の要求度が低い。つまりがん細胞は嫌気性の解糖系で大量の糖を使ってエネルギーを産生している」
    から始まりました。
    簡単に言えば「がんは、ミトコンドリアに酸素を送ることでエネルギーを生み出す通常のシステムではなく、酸素を嫌い、砂糖だけを食べてエネルギーを生み出すシステムを利用して活動している」ということです。

    ●ミトコンドリアとは

    ミトコンドリアとは人間を形成する37兆個全ての正常細胞内にあるエネルギー産生器官で、1細胞内に平均2000個、つまり体内に合計200000000000000(12京)存在し、24時間365日休むことなく、一つの糖、または脂肪から32個のATPエネルギーを生産し続けています。
    これに対してがん細胞は、このミトコンドリアシステムを放棄し、無酸素下において糖だけを利用してエネルギーを生み出す”解糖系”というシステムのみで活動しています。
    よってまず最初のがん対策は「がん細胞のエネルギーシステム”解糖系”を止める」ということが基本指針になります。

    対策1:がん解糖系エネルギーシステムを止める

    解糖系のポイントは
    1)糖しか使えない 2)無酸素下で働く 3)通常体温より5度低下が至適温度(37532度)
    の3点です。とすれば、解糖系ブロック対策は「糖を減らし、酸素を送り、熱を加える」ということになります。

    ●ラジオ波温熱療法:熱を加えて酸素を送る

    がんは正常な組織に比べて熱に弱いことが昔から知られています。
    実際がんが40度を超える発熱で消えてしまった、という例はこれまでも多数報告されております。
    これを踏まえて当院ではがんに対して「ラジオ波温熱療法」を導入しています。

    治療1:ラジオ波温熱器による高加温(42度以上)
    体温が42℃以上になるとタンパクの凝固が始まり、がん細胞は死滅することがわかっています。正常組織のなかにある血管は温度の上昇に伴って、血管が拡張し血流が多くなって温度を下げる反応が起こります。しかし、がん組織中の腫瘍血管は未熟血管のために、血管の拡張反応がなく、血流が一定のため温度が下がりません。がん細胞だけが高温で死滅する結果となります。よって当院では、癌の位置が外よりある程度同定できる場合は、積極的に高加温を行っていきます。

    治療2:マイルド加温(39度くらい)

    1. 血流改善し、がん細胞に酸素を送る、また至適温度を上昇させることで、がんの解糖系システムを動きにくくする
    2. 免疫力を上昇させる
    3. 精神・自律神経を安定させる(1度温度が上昇するごとに、幸せホルモンエンドルフィンが12~14%上昇)
    4. HSPを増産する(ヒートショックプロテイン:熱刺激で体内で生産される修復蛋白)

    これにより正常細胞の活性化、免疫力の増強(樹状細胞やNK細胞)と、がん細胞の抗原性顕在化が起こり、明瞭になったがん細胞に対し活性化したリンパ球が攻撃すると同時に、化学療法など各種治療の感受性を高め治療効果が増強する

    治療方法:
    腫瘍のある部分の体を挟むように機械をセットし、通電クリームを塗布後に最初の3分間はほとんど動かさないで、十分にエネルギーを供給します。 その後、ゆっくりと小さな円を描くように温めます。腫瘍がある場所に一致して熱い痛みを訴えるのを待って、わずかにプローブの位置をずらして患部周辺を温め、また患部に戻ってそこを温める施療を計約30分間行います。
    なお、高濃度ビタミンC点滴との相性の良さが多数報告されています。併用の場合は点滴前に30分間行います。点滴中か後にはマイルド加温を追加するとさらに良い結果が期待できます。

    ●治療間隔:
    腫瘍細胞に熱に対して抵抗性を作らせないために、治療後3日間はあけることをお薦めしています。(2回/週程度)

    対策2:ミトコンドリアエネルギーシステムを復活させる

    がんという疾患はミトコンドリアエネルギーシステムが動かないとお話しました。なぜがんは、解糖系の16倍ものエネルギーを生み出すミトコンドリアシステムを放棄したのか。それは、ミトコンドリアシステムが動いている細胞はがん化できないからです。また、がん細胞の体内にあるミトコンドリアシステムが動き出すと、アポトーシス(自死)に導かれるからです。よってがん細胞は、このシステムを放棄し、解糖系というシステムを使う選択をしました。ということは言いかえれば、ミトコンドリアシステムを復活させれば、がん細胞の無限増殖を止めることができるという事です。

    ●ミトコンドリアを理解する

    グルコース(ブドウ糖)が細胞内に入ると10段階の代謝を経てピルビン酸になります。この時生み出されるのエネルギーシステムが「解糖系」といわれるもので、この2ATPのエネルギーを使ってがんは生きていきます。
    これの対してピルビン酸以下のアセチルCoAから円状の「クエン酸回路」とその下の「電子伝達系」を合わせてたものがミトコンドリアのエネルギーシステムになります。これによりの解糖系の16倍の32ATPエネルギーが生み出されることになります。

    このミトコンドリア復活させるにはまず、クエン酸回路と、電子伝達系のシステムを分けてそれぞれの特徴をしっかりと理解することが大切になります。

    クエン酸回路(ミトコンドリア内マトリックス)

    クエン酸回路を詳しく見ると、このようになります。青で囲ったものは、この回路を回すために必要なもの(ビタミンB群・マグネシウム・亜鉛・グルタチオンなど)、逆に黒で囲ったものはこの回路を止めるもの(ヒ素・アルミニウムなど)となります。

    よってまずはこれらの成分を調べて、どうすれば最もクエン酸回路が回るかを考えます。なお、それにあたっては、有機酸検査、オリゴスキャン検査がとても有用です。

    これらにより、必要なミネラルやビタミン、除去すべき有害金属などが測定できるため、その人にとってクエン酸回路を回すためのベストのアドバイスができます。

    電子伝達系(ミトコンドリア内外膜)

    クエン酸回路を回して作ったNADHを使い、今度は電子伝達系というシステムが動き出します。電子伝達系システムの稼働にはさらに、食べ物から取り出した水素イオン、マイナスイオン、CoQ10なども必須となります。(CoQ10の有無は有機酸検査で調べられます)
    なお、当院には電子伝達系システムで利用されるマイナス電子を法主することができる”プラズマパルサー”という特殊な機械を活用しています。

    プラズマパルサー
    高電圧パルス電源から発生したプラズマにフィルターをかけ、有害なプラス電子ポジトロンを排除し、毎秒250万個ものマイナス電子のみを体内に取り込むことができる装置です。
    プラズマパルサー10分使用により、毛細血管内の血流速度が3倍に上昇、体温が0.5度上昇、ATPの生産量が3倍上昇(個人差あり)、などの報告があります。プラズマを使った医療報告は世界中から報告されており、今後のさらなる発展が期待されています。

    外部からミトコンドリアを活性化する

    近年ミトコンドリア研究は進み、様々な機序で、ミトコンドリア機能の亢進、ミトコンドリアの新生が促進されることが報告されています。これを踏まえてオリゴスキャン、有機酸検査、さらに血液検査の結果から、その人のあったベストのミトコンドリア改善方法を考えていきます。
    この中で、当院のがん治療で最もよく使われている一つ”水素”についてご説明いたします。

    水素療法

    水素も、活性酸素除去によるミトコンドリアの機能回復、PGC-1α活性によるミトコンドリア新生亢進として、ミトコンドリアという面で見てももカギになる治療方法です。
    さらに水素はがん治療において多くのが報告されています。

    水素の抗がん作用については1975年に Baylor 大学の Dole 博 士らが 『Science』に「高圧水素療法がん治療法の可能性」という論文を投稿しました。 それ以降数多くの研究により水素の抗がん効果が明らかにされています。
    2019年に『Frontiers in Oncology』に発表された総説では、水素ガスはがんの成長を抑制するとともに、抗がん剤、放射線 の副作用の軽減によって、抗がん作用を発揮すると報告されています。
    最近の研究では、水素がPD-1の発現を抑制するという、免疫チェックポイント阻害剤と同様の作用機序を持ち、がんの増殖に関係しているNF-kB経路を阻害したり、転移や浸潤に関係する好中球NFTsの産生を抑えたり、さらにキラーT細胞を活性化して抗がん効果を示す可能性が報告されています。

    がんに対する水素の効果のまとめ

    • 抗がん剤の副作用軽減~マウス実験で抗がん剤の副作用軽減が報告。
    • 放射線療法の副作用軽減~水素水6週間継続にて放射線治療後の抗酸化能(活性酸素を消去する力)が維持されたと報告。
    • 手術の副作用軽減~手術による炎症を抑え、術後の傷の回復を促す。
    • 免疫力アップ~T細胞は免疫システムの攻撃の要ですが、T細胞の表面にあるPD-1というたんぱく質ががん細胞のPD-L1と結合すると、T細胞にブレーキ (抑制)がかかるのです。その結果、がんの増殖が進んでしまうと考えられています。これに対して水素は、PD-1を減少させることが報告されており、これにより免疫力機能回復→がん抑制が期待されています。
      実際、水素吸入4週間の投与にて、ステージIII、IVのがん患者82名の前向きコホート調査において、患者の倦怠感、不眠症、食欲不振および痛みの有意な改善を報告や、腫瘍マーカーの減少、画像診断による疾患制御などが報告されています。(Chen JB, KongXF et al.Med Gas Res.2019;9(3):115-121.)

    以上のような理由で、当院ではがんに関する治療を行う場合、積極的に水素吸入をお薦めしています。

    がん治療における水素療法とビタミンC点滴併用の可能性

    加藤の前職が、日本の高濃度ビタミンC点滴の第一人者である水上治先生が院長を務める健康増進クリニックであったため、加藤はビタミンC点滴療法に関してはかなりの経験と知識があります。そんな中、2020年に水素療法を知ってから、ビタミンCに水素の併用は非常に可能性があるのではと考えました。ともに抗酸化作用、抗炎症作用、放射線防護効果を持つ水素とビタミンC の組み合わせによってがん治療の副作用をより強力に抑え、さらに抗が効果も高めることができるのではないかと考えたのです。
    この着想により実際併用を行ったところ、がん患者さんたちの経過が、ビタミンC点滴単独の時に比べて、明らかに良くなり、また抗がん剤や放射線の副作用を非常に少なくすることが経験出来ました。よって現在では、高濃度ビタミンC点滴には基本、水素を併用するようにしています。

    ビタミンD
    非常に身近なビタミンDは、当院のがん患者さんにおいては非常によく使われるサプリメントとなっています。ミトコンドリア機能改善の期待もありますが、多数の論文により、ビタミンDの血中濃度とがん抑制の関係が多数報告されているからです。

    例えば全体のがんにおいてはビタミンDの血中濃度が50ng/ml以上あれば75%程度、40ng/ml程度で39%程度抑制が可能だと報告されています。
    もっとも低い33ng/mlで大腸癌の抑制率が50%となっています。

    これに対して、日本人のビタミンD血中濃度の結果です。
    なんと調査全年齢の75%が30ng/ml以下、さらに30~100の正常と言われる範囲に入っている大半が40未満という結果でした。(Miyamoto T, et al. 2016)
    また当院で測定した結果においても、がん患者さんにおいて30以上の濃度を持っていた方は皆無でした。

    ただしビタミンDは、脂溶性ビタミンであるために、過剰症の注意も必要です。よって、必ず血中濃度を測定し、がんの抑制及びミトコンドリアの改善のためにベストの量を一緒に考えさせてほしいと思います。

    2)細胞の特徴から考えるがん治療

    ここまではがん対策を“エネルギーシステム”という視点で考えてきました。
    次は“がん細胞の特徴”という視点で見ていきたいと思います。

    図:がん細胞の特徴一覧

    がん細胞は「酸素が欠乏し糖だけをエネルギーにして活動している細胞」だとお話しました。
    しかし本来の細胞は酸素を使い、ミトコンドリアを動かすことでエネルギーを得ていたはずです。
    なぜ、がん細胞は、この本来のエネルギーシステムが破綻してしまったのでしょうか?
    そのスタートは不摂生に伴う細動脈内皮障害、つまり「血管障害」です。

    対策1:血管・血流を取り戻す

    近年の座りっぱなしの生活は、物理的圧迫という血流障害を引き起こしやすくなりました。
    これに加えて、運動不足、睡眠不足、食の乱れなどは血管に「酸化」と「糖化」という状態を引き起こすようになりました。
    これにより、血管のバリアは崩れ、血液がドロドロになり、また血管内皮細胞に炎症がおこることで、細動脈の内腔が非常に狭い状態になります。この結果、1)酸素を運ぶ血球成分である赤血球が通れなくなる→酸素欠乏、2)しかし糖質の解けた血漿成分は通れる→糖はたっぷり来る
    という現象が起こり、その結果がんが発生しやすい状況となるのです。
    つまり、「血流障害」が正常細胞におけるがん化の第一歩であり、またがん細胞の増大、増殖のカギとなるのです。

    ●血管・血流治療
    基本対策は”抗酸化・抗糖化”です。
    よって、糖質制限、適度な運動、良い睡眠、バランスの良い食事、禁煙などが生活習慣の改善として必須になります。
    またサプリメントも有効な手段で、私は、「抗酸化」「抗糖化」「抗炎症」の作用を持つ”タキシフォリン”や”黒ガリンガル”を良く利用しています。

    対策2:慢性炎症を改善させる

    不摂生による血流障害は血管壁の内皮障害を引き起こします。ここに白血球が集まることで、うっ滞が起こり慢性炎症が引き起こされます。
    慢性炎症の最大の問題はがんの「転移」「浸潤」を促進させることです。よって慢性炎症対策は、がん治療において必須となります。

    慢性炎症の治療
    抗炎症効果のあるものとしては、オメガ3の油を持つ青魚(EPA/DHA)・アマニ油・シソ油が有名です。また先ほど紹介した”タキシフォリン”や”黒ガリンガル”も抗炎症効果を持つため、これらを積極的に摂取します。
    また慢性炎症を悪化させるNF-κBを特異的結合し炎症抑制効果を持つだけでなく、血流改善作用を持つためオゾン療法もよい適応になります。
    しかし、がん及び慢性炎症を考えた時は、”高濃度ビタミンC点滴”がやはり有用だと思います。

    高濃度ビタミンC点滴療法
    これは高用量のビタミンCを静脈から点滴する対症療法と原因療法を兼ねた治療です。微小なガン細胞の状態になった段階 では根治も狙えます。 補助療法として他の治療法と併用すれば、その治療法の効果を底上げしたり、副作用を低減する効果が見込めます。
    糖を栄養とするがん細胞は、構造が類似したビタミンCを積極的に取り込みます。その際、 毒性のある過酸化水素が大量に発生しますが、がん細胞は過酸化水素を除去する酵素が乏しいため、結果として死滅します。

    がん治療においては、近年においても、様々な報告がなされています。

    • 進行膵臓がん患者に抗がん剤と高用量ビタミン を投与した場合の生存期間中央値は13か月であった一方、抗がん剤治療だけを実施した場合は6~7か月であった(Reo H, et al 2020)
    • 肺がん、大腸がん 卵巣がん、乳がんなどの進行がん患者を対象とした最近の研究では、 高用量ビタミンC点滴を併用すると、抗がん剤による副作用を通常より3割程度減少させる
    • 放射線治療の効果を高め、副作用を軽減したりする

    これに加えてビタミンC点滴の持つ作用として、今回のテーマである”抗炎症作用”(堀尾 文彦 2018)はもちろん、それ以外にも

     

    1. 胆汁酸の合成(脂溶性ビタミン吸収促進・解毒)
    2. 酸化ストレスの軽減
    3. コラーゲンの合成(創傷治癒促進)
    4. インターフェロン合成(免疫改善)
    5. ストレス耐性(副腎疲労改善作用)
    6. カルニチン合成(ミトコンドリア機能改善)

    など、がん治療において有用な作用が非常に多く報告されています。
    よって、がん治療においては、やはり高濃度ビタミンC点滴はカギとなる治療の一つと考えられます。

    対策3:酸性を改善させる

    がんが進行すると、健康な組織周囲がPH7.4と弱いアルカリに対して、がん組織の周りはPH6.8と酸性に傾くことがわかっています。これにより、免疫細胞ががん細胞を攻撃する力が落ち、増殖・転移することが知られています。

    検査:尿PH検査~当院では、尿PHを測定、7.5以上(できれば8.0以上)を基本とし、それ以下の場合は体をアルカリに傾ける「重曹点滴療法」を準備し、これによりがんの増殖・転移を抑えるようにしています。
    治療:重曹(炭酸水素ナトリウム) 水点滴療法~古くから行われてきた重曹を点滴する治療法。 注射液・点滴溶液である「炭酸水素ナトリウム注射液」を使用して7%濃度の重曹水250~500mlを点滴します。

    【ポイント】
    大阪大学教授により悪性腫瘍や耳鼻咽喉科系疾患に対して著効との論文があります。 またイタリアのトゥーリオ・シモンチーニ博士 も同様の治療法を提唱しています。
    放射線治療や抗ガン剤治療に対する補助療法として、また体力及び食欲の増強、副作用低減などの目的で使われます。

    対策4:血液検査で栄養状態を把握したうえで対策を考える

    がん患者の3割は栄養不良と言われます。
    実際108人のがん患者のうちがんそのものでなくなった人17.8%だけで、その他82.4%の人は感染症=栄養状態の低下における免疫力の不足、で亡くなっています。
    とすると、がんを乗り切るためには、本人の栄養状態が非常に大切だということになります。
    がん細胞から考える基本ポイントは
    1)砂糖を減らす(複合炭水化物をベースにする)2)塩分を減らす 3)タンパク質(アルブミン)をしっかり摂取する 4)乳製品をとらない
    の4つとなります。
    ここではタンパク質(アルブミン)を主に取り上げます。現在の自分の栄養状態が戦える状態であるかどうかは、血液検査を使ったこの計算式でわかります。

    ・がん患者の栄養評価(PNI):10xALB(アルブミン)+0.005x総リンパ球数>40
    まずこれを目指してタンパク質を摂取するように努力します。もしも食事だけで難しい場合は、内服のタンパク、また点滴でアルブミンを補い、戦える体に変えていきます。

    対策5:腸の状態を最善にする

    乳製品はがん活動を亢進させるmTOR軸を活性化させてしまうため、摂取の制限が必要と考えられるのですが、さらに腸の内部状態を悪化させることも問題となります。
    以下は、腸内視鏡検査の写真ですが、乳製品摂取で非常に腸内が悪化していることが分かると思います。

    免疫に関わる細胞の7割以上が腸に存在しているため、腸は体内で免疫安定において最重要内蔵機となります。
    よって、このように腸の悪化予防のためにも乳製品摂取制限はもちろん、同時に消化管及び腸内細菌叢の安定は非常に重要となります。

    消化管及び腸内細菌叢の改善

    消化管の改善には1)消化管機能、および2)腸内細菌叢の改善が望まれます。

    ●腸管の機能改善(腸管リフォーム療法)
    これに対しては、当院では腸管リフォーム療法を積極的に活用します。これはドイツのオゾン注腸療法を改変したものです。機能としては以下が報告されています。

    • 血行促進作用に伴う腸管機能の改善の可能性(Bocci, 2009)(Valacchi, et al. 2000)
    • 消炎鎮痛作用 ~IBSは腸管内に異常は認めないがリーキーガット症候群など腸内炎症は示唆されているため改善を導いた可能性(Matsuda, et al. 2014)
    • 免疫細胞活性化作用~NFkB因子とNrf2因子によるサイトカインによる免疫担当細胞活性化、免疫関連因子の産生調整、炎症/抗炎症のバランス改善に伴い、腸管内の細菌バランスが整った可能性
    • 内分泌の促進作用~オゾン療法に伴う多幸感、難病患者のQOL向上などの改善効果あり。証明されていないが脳内ホルモンに影響を与えている可能性

    ●腸管細菌叢の改善(腸管内善玉菌群移植療)
    こもれびの診療所では有機酸検査総合便検査を行い、腸内細菌叢をチェックしたうえでベストの改善策を講じます。
    特に腸管内善玉菌群移植療法は腸内細菌叢の改善に効果の高い治療方法となっています。

    対策6:免疫システムを改善させる

    がんの対する免疫システムの基本方針を一言でいえば、慢性炎症を起こす好中球を減らし、がん細胞を攻撃するリンパ球を増やす、ということになります。
    基本方針の決定医おいては血液検査を重用しており、慢性炎症の指標としてはCRP検査で0.05以下、免疫システムの指標としては N(好中球)/L(リンパ球)比1.5以下、リンパ球数2000以上を目指します。リンパ球数が1500以下だと、免疫力が不足していて大変危険です。またNL比(好中球/リンパ球比率)が2.0以上あるとガンの勢いが強くて大変危険だと考えられます。

    図:血液検査の一例。この場合は、N/L=64.2/29.5=2.17(好中球優位)、リンパ球数 7400×29.5=2183と考えます

    免疫改善対策のカギは自律神経の安定
    自律神経は、交感神経と副交感神経の2つからなる体内安定神経システムです。
    簡単に言えば交感神経は闘争と逃走の神経といわれ、・激しい運動 ・興奮、緊張、恐怖、イライラなどで活発になります。
    これに対して副交感神経は癒しとメンテナンスの神経といわれ・睡眠や休息 ・安心感、達成感、リラックス状態で活発になります。
    実は、この自律神経システムなのですが、これは免疫細胞にも搭載されており好中球は交感神経亢進で上昇するアドレナリンレセプターを、リンパ球:は副交感神経興奮時に上昇するアセチルコリンレセプターを持つことが分かっています。
    つまり交感神経が抑制、副交感神経が亢進すれば、それはイコール好中球減少、リンパ球増加、つまり”がん対策に理想の免疫”の状態になるということです。

    リンパ球を増やす:
    まずは自律神経の安定、副交感神経亢進を行います。
    基本はリラック状態ですから、深呼吸や瞑想、休養や温泉保養などは当然効果的となります。
    これ以外にも、脳の不安が強い場合はYNSA®を中心にした脳自律神経治療、腹部も問題を抱えている場合はラジオ波温熱マッサージなど、その人の状態に合わせてベストの自律神経安定治療を行っていきます。

    ●低用量ナルトレキソン(LDN)療法
    ナルトレキソンは、海外で30年以上前から使われていた医薬品です。
    これを低用量の使用にすることで、副作用もなく、免疫力や抗がん作用を増強し、また自己治癒力をも高めることが報告されています。
    その機序の一つであるメトエンケファリン及びベータエンドルフィン(幸せホルモン)上昇作用は、まさに副交感神経亢進に伴うリンパ球の活性が考えられますから、自律神経という視点からも、非常に有用な治療薬になると考えています。

    低用量ナルトレキソン療法の腫瘍増殖抑制機序及び報告
    • ナルトレキソン 3.0~4.5mgを就寝前に投与すると、約3時間だけオピオイド受容体拮抗作用が働き、その後にリバウンドで血流中のメトエンケファリンおよびベータエンドルフィンが上昇する。
    • 上記➀の作用により腫瘍細胞膜上のオピオイド受容体の数・密度の増加を誘発→癌細胞のアポトーシス(細胞死)を起こす。
    • エンドルフィンの濃度上昇に反応してナチュラルキラー(NK)細胞の数および活性、リンパ球活性化CD8細胞の数を増加させる。
    • 2004年3月、Bihari医師は標準治療に反応しない450例の癌患者にLDN療法を行い  60%以上で有効であったと報告している。

    *低用量ナルトレキソン(LDN)療法によるがん治療は、放射線治療や化学療法剤などの、がん細胞を殺す治療法ではなく、がん細胞の成長・分裂・アポトーシスをコントロールする治療法であるため、高濃度ビタミンC点滴療法やアルファ・リポ酸点滴療法・重曹点滴療法との併用により相乗効果がより期待できます。

    *注意事項
    ・ 本治療は医薬品医療機器等法上の承認を得ていないため、医療保険制度は使用できません。自費診療となります。
     本治療に使用できる同一の性能を有する他の国内承認医療機器・医薬品はないため、購入・輸入した製剤を、院内調剤して使用します。
    ・諸外国においても重大な副作用・リスクに関する報告はありません。
    ・値段は1か月27500円です。

    免疫改善安定の適切な栄養を取る
    免疫安定の代表的な栄養素をとる事で、リンパ球をアップし、免疫状態を維持することも、非常に有用です。
    以下のビタミン・ミネラルを中心に、その人に合ったベストの栄養療法を提案できるように、血液検査やオリゴスキャン検査を駆使して行います。

    1. ビタミンD~血中濃度を測定し40ng/ml以上を目指すようにします。低い場合は点滴で一気に上昇を図ります。
    2. ビタミンC~免疫システムをサポートの主役です。高濃度ビタミンC点滴療法が有名ですが、通常内服も免疫アップには効果があります。ウイルス疾患に対する論文多数出ています。
    3. 亜鉛~キラーT細胞は亜鉛と結合して初めて活性化します。亜鉛濃度低下は感染症増加と相関との報告もあります。
    4. マグネシウム~日本人のほとんどが不足。300以上の酵素に関わります。マグネシウムの有無が免疫力の増減に間接的に関わってきます。
    5. セレン~世界最強ウイルスエボラ出血熱への対策でも活用されたミラクルミネラルです。近年では抗癌ミネラルとしても注目されています。
    6. α-リポ酸~ミトコンドリア活性、デトックス促進で生体内の免疫状態を改善に導きます。
    7. ミトコンドリア回復~がん撃退の中心的役割を持つ免疫細胞「キラーT細胞」などが働くためのエネルギーもミトコンドリアによって作られます。よって免疫という面から見てもミトコンドリア機能回復は必須となります。
    副腎疲労症候群のケアを行うことでストレス耐性を高くする

    がん患者さんはほぼ例外なく極度のストレスにより「副腎疲労」を発症しています。副腎疲労が強いと、ストレスに対応できず、またがんを増殖させる炎症を止めることができませんので、副腎のケアはがん治療にとって非常に大切になります。よって、がん治療において、まずは副腎疲労を検討し、必要あれば治療を行っていきます。

    検査:血液検査・コルチゾール唾液検査
    治療:疲労回復点滴

     

    以上がこもれびの診療所におけるがんの積極的な治療方針であり、スタート時に右手に渡した「治る」という希望の治療です。
    ただし左手に渡した「死」もとても大切な考え方です。
    これは自分自身もですが、残された家族にとって必要な考え方です。ぜひ、『がん・終末期安息外来』ものぞいてみてください。

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