痛み外来

「こもれびの診療所には、痛み外来が設置されており、通常の医療では改善が見られなかった痛みを抱えた人たちが日々、たくさん来院されています。
ここでは、当院における診察・治療プロセスをお話したいと思います。


痛み外来における診察・治療の7ステップ

Step.1急性か慢性か明らかにする

まずは現在の痛みが急性痛か、慢性痛かをチェックします。

急性痛~発症3か月以下の痛み

この場合、痛みの原因追及を主にします。なぜなら、急性痛は、体の警告信号のため、痛みを感じている部位をいち早く特定し、原因を追究・対応することが必須となるからです。よって、急性痛の場合はその原因を見つけ、痛みを取り除くことを主にします。
原因検索は西洋医学が得意とするところであり、治療としては手術、サポーター固定、消炎鎮痛剤(内服やシップ剤など)などが行われます。

慢性痛~発症後3か月以上続いている痛み

急性疾患の経過後、あるいは外傷の治癒に相当する期間(1か月以上)を越えても持続する痛みを指し、一般的には3~6か月を越えて継続する痛みを言います。
この時点で、難病性疼痛疾患を除くと、ほとんどが急性痛の原因となった組織は治癒していると思われ、痛みのみが残存している場合が主となります。
この状態では、原因と思われるものを解決しても痛みが改善しない、感情により痛みの増減がある、などがみられるようになり、単純な組織の治療だけでは解決しない場合が多くなります。

Step.2痛みの原因組織を予想する

痛みを起こす組織は以下の8つです。
皮膚 ②神経 ③筋肉 ④関節 ⑤椎間板・靭帯 ⑥内臓 ⑦ ⑧精神
この中でどれが原因で痛みを感じているのかを、以下3つの質問でチェックします。

問診1痛みの質をチェックする

「どのような痛みですか?」
この時「鋭い」と答えれば、皮膚・神経の痛み、「鈍い」と答えれば筋肉・内臓・関節・骨が予想されます。(ただし炎症時には鋭くなる可能性がある)

問診2痛みの部位をチェックする

「痛い部位は何処ですか?」
ある程度場所が限定される(点の痛み)場合は皮膚・神経・骨・関節を疑います。一方、痛みの場所が大まかである(面の痛み)場合は、内臓・筋肉・靭帯・(神経)を疑います。(ただし、組織も炎症時には点になる可能性がある)

問診3痛みの軽減・悪化因子をチェックする

「どんな時に痛い、または楽ですか?」
常に痛い場合は神経、触られたときは皮膚、動作に伴う場合は骨・筋肉・関節、食事や排せつに関係する場合は内臓を、不安・緊張などの精神的負荷で痛みが悪化すれば精神の痛みを予想します。

問診4心因性の痛みをチェックする

「最近、気分が重かったり、憂うつだったり、絶望的に感じることはありませんか?」
「何かやろうとしても殆ど興味を失ったり、楽しくないと感じることはありませんか?」
この2つは、うつ病を予測する基本的な問診です。これがなければ基本うつは除外して良いと考えます。

Step.3疾患名を把握する

当院にはレントゲン、超音波などの一般的な検査機器がありません。よって上記の問診により、ある程度予測をつけ、さらに様々な理学的検査を加えてある程度疾患を絞り込みます。なお、上述したように疾患名の把握は急性期ほど重要になります。

Step.4危険因子(レッドフラッグ)を確認する

まず当院で行ってよいのか、それとも速やかに入院を含め西洋医学的な治療が必要かを把握します。

  1. 激しい痛みがある
    →炎症、損傷のリスクがあります。場合によっては入院治療などを必要としますので、痛みの程度によっては速やかに検査・入院可能な施設にご紹介します。
  2. 箸がもてない、ボタンの留め外し不可
    →急激にこの運動障害が見られた場合は神経系の異常を考慮し、速やかに頭部検査などできる施設をご紹介します。
  3. 動悸・冷や汗・嘔吐など
    →自律神経系の反応が強く出ています。状況を見つつ対応します。
  4. 全身、半身に広がる痛み
    →脊髄・脳の疾患を考慮します。状況を見つつ対応します。
  5. 痛みが48時間以上たっているのに進行
    →進行性疾患です。速やかに病院を紹介します。
  6. 便・尿出にくい
    →膀胱直腸障害が出ている重症化した脊髄異常のため速やかに病院を紹介します。

Step.5痛みレベルを考える

現在、痛みのレベルがどこまで進んでいるかを考えます。レベルとしては、末梢組織レベル、 脊髄レベル、脳レベルと順を追って深くなると考えます。

  • 末梢組織レベル~基本急性期であり、障害を負った組織に関連した痛みで、局所痛が中心。シンプルな疼痛構造である。
  • 脊髄レベル~急性期から慢性期に移行中。分節エリア(デルマトーム)・局所的な自律神経反応などが見られる。
  • 脳レベル~全身性・天候で変化・不定愁訴・感情(過去のできごと・病気に対する無力感・悲観的・自己肯定感低い・ リラックスできないなど)で痛みが変化する。痛みとしてはかなり複雑化していると考える。

治 療

末梢神経レベルの治療

1)オピオイド受容体を介した鎮痛

炎症のある所には痛み抑制物質オピオイド含有免疫細胞が多数存在しています。そしてこれらがオピオイド受容体に作用すると鎮痛効果を発揮します。この痛みを抑制するオピオイド細胞が作用するオピオイド受容体を出現させることで痛みを速やかに軽減する治療を行います。

A)鍼灸治療~患部付近にできるだけ刺激の少ない鍼刺激を行います。これにより、オピオイド受容体を出現させ、痛みを抑制します。

B)ラクリスマッサージ~ラクリスにて柔らかい刺激を与え、同様の効果発現を行います。

C)交流磁気治療~筋肉疲労の改善、血流、リンパ流改善、痛み改善作用を持つ交流磁気は、超急性期でなければ基本使用していきます。

2)アデノシンAl受容体を介した鎮痛

急性期を過ぎてきた痛みに対して、鎮痛をオピオイド受容体からアデノシンA1受容体への刺激へと変えていきます。簡単に言えば、鍼灸刺激で微小の組織損傷を起こさせることで、細胞からアデノシン3リン酸(ATP)を漏出させ、最終的にアデノシンを増やし、これによりアデノシンAl受容体に作用させて鎮痛メカニズムを発揮させるという治療方針です。組織損傷を試みるため、疼痛局所の刺激とすると、強めの刺激(鍼に加えて、通電治療など)を行うことになります。

脊髄レベルの治療

繰り返される痛み刺激により、痛みを脳に伝える役割を持つ脊髄後角が変化し、慢性的に痛みを伝えやすい脊髄に変化してしまっている可能性があります。また脊柱管狭窄症や脊椎のヘルニアなども脊髄レベルの痛みになります。この時の治療方針です。

1)ゲートコントロールを介した鎮痛

障害のある脊髄神経と同じ支配エリア(デルマトームなど)に刺激を行うことで脊髄神経の治療を行います。

 

デルマトームとは脊髄から出る神経が体の皮膚のどの領域の感覚を支配するかを示しているものです。脊髄は場所によって、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄に分かれます。首の場合、頸髄からは8対の末梢神経が出て、第1頸神経(C1)から第8頸神経(C8)まであり、頭から両手までの皮膚の感覚を支配しています。例えば、デルマトームを見ますと、第6頸神経 (C6) は手の親指側を支配します。よって、C6の脊髄レベルの問題だと感じたら親指側の前腕を治療点として使用する事になります。

では、この部位をゲートコントロールとして治療する場合にはどのように使うのかです。
脊髄後角には痛みの番人としてゲートを守る膠様質細胞(SG 細胞)と中枢に伝える T 細胞があります。この門番は非常に柔らかくさするような感覚の刺激を受けると、その刺激を伝える Aβ 線維が興奮することで、門番である SG 細胞が興奮して、痛みを伝えるゲートを閉じます。これによりT 細胞には情報が伝わらず、痛みを脳へ伝えることができなくなり、痛みが楽になるという理論です。
よって、このような場合は、オピオイドを使った治療方法と同様、痛みをほぼ感じない柔らかい鍼や置き針、ラクリスによる低刺激マッサージを使った治療を行うことになります。
なお、皮膚を柔らかく刺激すると、
ア)皮膚刺激により角質細胞が刺激を受ける→ イ)NO(一酸化窒素)放出→ ウ)視床下部刺激→ エ)βエンドルフィン(幸せ)ホルモン)放出→ オ)痛みを感じにくい脳になる、という治療効果もプラスされます。子供のころ、「痛いの、痛いの、飛んでいけ」とさすってもらうと痛みがなくなったのは、迷信でも思い込みでもなく、科学的根拠のある行動なのです。
なお、明らかに脊髄に異常を伴う場合は、特殊な局所注射や、オゾンマグネ療法を併用することもあります。

脳レベルの鎮痛

1)下行性疼痛抑制系を利用した鎮痛

体の抹消を刺激することで脳の視床下部、中脳中心灰白質、延髄大縫線核から内因性オピオイド物質を放出するメカニズムを利用する疼痛治療です。このメカニズム活性の為にはAδやC繊維を興奮させる刺激が必要です。よって、現在の痛みに最もかかわる経絡、筋肉を意識しながら、鍼通電や響きを伴うような刺激が行います。
なお、この際の鍼通電は、痛みに応じて周波数を変えながら対応いたします。
基本的な方針は以下のようなものになります。

下行性疼痛抑制系刺激周波数
  2Hz 2〜15Hz 100Hz
誘発物質 βエンドルフィン エンケファリン ダイノルフィン
鎮痛 ++ ++
沈静 ++ ++
消化管運動抑制 ++
咳嗽反射抑制
情動性
利尿作用
適応範囲 あらゆる痛
特に脊髄・末梢の痛み
情動系の痛み 自律神経系
薬物依存患者
最低15分以上の刺激。即効性はないが持続性があるメカニズム

βエンドルフィン=μ受容体を利用する疼痛抑制です。全身に存在するためあらゆる痛みに対応できる周波数です。
エンケファリン=δ受容体を利用する疼痛抑制です。怒りや悲しみなどの情動と関係する扁桃体(脳)などに受容体が多いため、情動に伴う痛みに利用します。
ダイノルフィン=κ受容体を利用する疼痛抑制です。自律神経に関与する部分に受容体が多いため、気分変調・ストレス・天候などで悪化する交感神経依存性疼痛のような交感神経性の痛み、さらにはかゆみなどに利用します。

2)脳そのものを利用した鎮痛

脳は2段階で痛みを感じます。第一痛は、痛みの信号が脊髄-視床路を通って一次、二次体性感覚野に到達することで痛みを感じます。第二痛は脊髄-中脳路を通ってきた信号が脳幹(結合腕傍核)に到達、さらに島・扁桃体・前帯状皮質まで刺激を伝えることで痛みを感じます。(ここは痛みに関する感情的、認知的反応にかかわる場所)
慢性疼痛の場合、末端からの刺激が継続されるため、脳そのものが痛み過敏脳になっています。これを、院長である加藤が最も得意とする山元式新頭鍼療法(YNSA)を使って脳からアプローチしていきます。
また、ミネラル不足が疼痛を誘発している場合も多々あります。よって、オリゴスキャンなどを使ってチェックし、必要なミネラルを補ったり、不必要な重金属を除去することで根本的解決を図ります。

3)瞑想を利用した鎮痛

瞑想により痛みに対して無意識に起きてしまう不安感を弱め、痛さの不快を軽減させていきます。実際、瞑想の達人は前帯状皮質のベースラインの活動が小さく、痛みに伴う情動をコントロールできるようになっています。しかし、瞑想が習慣化していない場合、それは難しいのですが、当院にはアルファコイル、ヘミシンクという瞬時に瞑想状態に脳を変換できる装置があります。これを使うことで瞑想に伴う鎮痛と同じ機能を発揮させます。

Step.6イエローフラッグ確認

痛みに対して、治りにくい状態に陥っているかを判断します。

  • 痛みが完全に治るまで仕事などを休むべきだ
  • 今までに痛みのために仕事を休んだことがある
  • 痛みのためにやりたいことを制限している
  • 痛みを抑えるためには安静が一番であると考えている
  • 動くと痛みが悪化すると思う
  • 常に不安や緊張がある
  • 常に憂うつな気分である
  • 仕事が重労働もしくは、単純作業が多い

この質問にイエスが多い場合、体の治療だけでは治癒することは困難です。考え方の変化が必須となりますので、認知後療法や心理療法も考慮していきます。

Step.7ゴール設定

治療家、患者が話し合い、ともにゴールを設定します。
「痛みがなくなればいい」
というのがゴールになりそうですが、イエローフラッグのあるような方は「0-100思考」つまり、痛みが全くないことがゴールと考えると、そこはなかなか到達しません。
よって現在の状況を踏まえて、実現可能な長期目標から短期目標を考えていきます。それは画一化したゴールではなく、経験・エビデンス・患者の経済状況・家族の協力体制・交通事情などの環境因子まで踏まえて、最高の答えを共に考えていきます。

組織別治療指針

  1. 皮膚の痛み~鍼治療・通電治療・オゾン軟膏・Va軟膏・オゾンマグネ療法
  2. 神経の痛み~鍼治療・通電治療・オゾンマグネ療法・幹細胞上清
  3. 筋肉の痛み~鍼治療・通電治療・オゾンマグネ療法・トリガーポイント注射・ラクリスマッサージ
  4. 関節の痛み~鍼治療・通電治療・オゾンマグネ療法・局所注射(幹細胞上清・オゾン・プラセンタ)
  5. 椎間板・靭帯の痛み~鍼治療・通電治療・オゾンマグネ療法・トリガーポイント注射・ラクリスマッサージ・局所注射(幹細胞上清・オゾン・プラセンタ)
  6. 内臓の痛み~状況に応じて
  7. 骨の痛み~鍼治療・通電治療・オゾンマグネ療法・局所注射(幹細胞上清・オゾン・プラセンタ)
  8. 精神~YNSA・通電療法・オゾンマグネ療法・アルファコイル/ヘミシンク瞑想・催眠療法・認知行動療法
    これを全てやるという意味ではありません。状況に応じて取捨選択していきます。なおそれぞれの治療に関する詳細はホームページの治療項目をご参照ください