Bスポット療法

Bスポット療法 〜慢性上咽頭炎のための治療〜

Bスポットの「B」は「鼻咽腔」の「ビー」を指す和製英語です。世界的な治療ではなく、日本でしか行っていない治療です。現在Bスポット療法の学術団体(日本病巣研究会)ではEAT(Epipharyngeal Abrasive Therapy、上咽頭擦過治療)と呼ばれています。
この治療は歴史的には非常に古く、1960年代山崎春三先生(大阪医大初代耳鼻科教授)および堀口申作先生(東京医科歯科大初代耳鼻科教授)が開始した治療法です。収れん作用(止血、鎮痛、防腐、殺菌作用)を持つ1%塩化亜鉛溶液を染みこませた綿棒を上咽頭に擦りつけることで、上咽頭の炎症を鎮静化させます。

上咽頭とは

鼻と咽頭との境界部分を指し、ウイルスや細菌、花粉などから体を守る門番の役割をしています。その表面には自己防衛作用を持つリンパ球が多数存在し、体にとっては「免疫前線基地」と言い換えることができます。

上咽頭炎とは

呼吸で取り入れた空気に含まれる細菌やウィルス、またアレルギー性鼻炎や疲労、ストレスなどを契機に上咽頭に炎症が起きた状態です。
風邪などの急性期の時はのどの痛みとして感じることも多いのですが、急性期を過ぎると、上咽頭炎とは気が付かないケースが多く、気づかれないまま、様々な不調の原因となっていることがあります。

慢性上咽頭炎の症状

  • 直接感染による慢性上咽頭炎そのもの、あるいは炎症の放散による症状
    頭・顔・鼻・目・耳・歯・喉などの痛み、鼻閉・鼻汁・後鼻漏などの鼻の症状、耳閉感・難聴・耳鳴りなどの耳の症状、咳・痰・声がれ・違和感などの喉の症状 
  • 自律神経系の乱れを介した症状(上咽頭が、舌咽神経、迷走神経、自律神経と繋がっているために起こる)
    全身倦怠感、めまい、慢性疲労、睡眠障害、胃腸障害など
  • 上咽頭を病巣とした血流やリンパ流を介した全身性の感染の蔓延によるもの
    原因不明の発熱など
  • 自己抗体などの免疫機序を介した二次性の疾患によるもの
    IgA腎症、慢性関節リウマチ、掌蹠膿疱症、尋常性乾癬、アレルギー性紫斑病、ベーチェット病など

このように慢性上咽頭炎は、いくつかのメカニズムを介して異なる病態を引き起こすため、結果としてその症状は多彩で経過も多様となります。

診断

痰や咽頭異物感がなかなか治らない人、また上述したような症状がある場合、自分の耳下を押してみてください。
ここを押したとき痛みや硬さを感じる場合は、慢性上咽頭炎の可能性があります。
その場合はBスポット療法を行い、痛み、出血があれば、慢性上咽頭炎と判断します。(上田麟也 口咽科23:1;23~35、2010)

治療(1%塩化亜鉛擦過治療)

治療回数は個人差がありますが、10回程度が一つの目安となります。

治療効果

症状により差がありますが10~15回行った場合、1999年の臨床報告では約70%に効果ありとされています。

めまい:76.7% 頭痛:72.0% 耳閉感:71.1% 咽頭痛:67.2%
肩こり:67.2% 咽頭異物感:66.7% 後鼻漏:64.0% 耳鳴り:62.5%

こもれびの診療所におけるBスポット療法(慢性上咽頭炎治療)の適応

まずはアレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患に対して、Bスポット療法に鼻腔内アレルギーネブライザー、漢方薬などを随時加えて治療を行います。
もう一つは、慢性上咽頭炎が、全身疾患の症状の原因として強く疑われる場合の補助治療として行います。
例えば、過敏性腸症候群(IBS)を例に説明します。
まずは検査を行い、腸管内に必要な環境整備を行います。その上で、慢性上咽頭炎が自律神経を介してIBSの原因となることは充分あり得るので、鼻咽腔内の慢性炎症の有無を確認します。慢性炎症があることがわかればBスポット療法を加えます。

現在の医療は細分化が進み、鼻の治療は通常耳鼻科でしか行えません。また、上咽頭の炎症を全身疾患の原因と考えることもほとんどありません。
しかし当院では、心を含めた全身をトータルで考え、常に広い視点で治療に当たることを目指しています。
そのため、「私はなぜこの治療を受けているのか?」と、疑問に思われることもあるかもしれません。その時は遠慮なくご質問ください。

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