アルファ(α)リポ酸点滴

    当院ではアルファリポ酸点滴を「疲労系疾患」、「デトックス」、及び「がんの補助療法」の治療として行っています。

     

    1)エネルギー回復

    αリポ酸は、細胞のミトコンドリア内でエネルギーを作る酵素を助ける「補酵素」として働いています。
    αリポ酸を点滴で取り入れることで、ミトコンドリア内で速やかに糖や脂肪酸のエネルギー変換効果が高まり、体の中に入ってきた「糖」や「脂肪酸」を消費してエネルギー産生を、速やかに回復させることができるようになります。
    また、糖が十分に消費できないまま体に残ると、タンパクと結び着き、疲労やがんの原因となる最終糖化産物「AGEs」になるのですが、αリポ酸が十分あると糖代謝を促進させるため、AGEs生成の抑制にもつながります。
    副腎疲労などの疲労系疾患で見られる、頭に霧がかかったような「ブレインフォグ」に対しても、αリポ酸は非常に分子量が小さいため、脳のBBB(血液脳関門)を容易に通過し、脳のエネルギー代謝も向上させてくれることで回復をはかってくれます。

     

    2)活性酸素除去

    人間関係のストレスや有害物質の多量摂取は、体内において処理できないほどの多くの活性酸素を生み出しています。これにより、細胞のがん化促進、副腎疲労の悪化が引き起こされてしまいます。
    これに対してアルファリポ酸は、抗酸化物質の代表であるビタミンCの400倍もの抗酸化力で活性酸素を除去するだけでなく、ビタミンCなどの他の抗酸化物質をリサイクルする、水にも油にも溶ける性質を利用して、体のあらゆる場所で抗酸化作用を発揮する、ビタミンC・ビタミンE・コエンザイムQ10・グルタチオン・αリポ酸の互いのネットワークを作り、酸化された抗酸化物質を還元して元に戻す=リサイクルする「抗酸化ネットワーク」を形成することで継続的な抗酸化作用を可能にしてくれます。
    ●αリポ酸の活性酸素除去作用
    (1)活性酸素や一酸化窒素ラジカルなどのフリーラジカルを直接消去
    (2) グルタチオン、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化力を再生。なおαリポ酸は脂溶性と水溶性の両方の性質をもつので、ビタミンC(水溶性)とビ タミンE(脂溶性)のどちらの還元にも寄与
    (3) グルタチオンの合成酵素での産生を高め、グルタチオン産生に必要なシステインの細胞内取り込 みを促進し、グルタチオンの産生を高める
    (4) フリーラジカルを発生する鉄や銅などのフリーの金属イオンをキレート(結合)することによっ活性酸素の産生を抑える
    (5) αリポ酸は親水性と疎水性の両方の性質を持つため、細胞膜でも細胞質でも働き、蛋白質や脂肪など全ての細胞内成分の酸化も、血液中の物質の酸化も抑制

     

    3)有害重金属や毒素の除去=デトックス作用

    αリポ酸には体内に入った毒素を分解するための解毒作用と、有害ミネラルを排出するキレート効果があります。
    特に大きな特徴となるのが、体内でデトックスのキーとなる「グルタチオン」の再活性化作用があることです。
    この作用を考慮して当院では基本的に、グルタチオン点滴を併用しています。

     

    4)がんの補助療法としての可能性

    αリポ酸は、以下のような報告があります。

    • 細胞へダメージを与え癌化の原因となるフリーラジカルを減少させる。
    • がんの発生に関わるとされる転写因子(Nfκβ)の活性を阻害する。
    • 免疫に関与するリンパ球のひとつであるT細胞の活性を向上する。
    • がん細胞をアポトーシス(細胞死)に導き、また酸素を使った好気性解糖を活性化させることで、がん細胞のアポトーシスを促進させる。
    • がん細胞のアポトーシスにおける阻害因子を抑制し、促進因子を活性化することでがん細胞のアポトーシスが起こりやすくなる。
    • 新生血管の形成を抑制する。
    • 標準治療(手術、抗がん剤、放射線治療)との併用が可能である。
    • 高濃度ビタミンC点滴療法や重曹点滴との併用も可能である
    • 胸水・腹水の貯留や慢性腎臓病で高濃度ビタミンC点滴療法が難しい患者様においても治療適応がある

    などの特徴も加味して、がんの補助療法として選択の可能性があると考えます。

     

    リスクと副作用

    1. 薬剤に関係なく点滴治療として針を静脈に穿刺するので、局所出血や感染の可能性を100%否定することはできません。
    2. αリポ酸点滴は保険診療で認められていないため、厚生労働省における薬機法上の承認は得られておらず、また高濃度量に対する日本製がありません。よって300㎎以上の場合は輸入製剤を使用します。ただしアルファリポ酸点滴においては海外において様々な臨床試験が行われ、論文として公表されていますし、これまで治療を中止せざるを得ないような副反応の報告はありません。
    3. アルファリポ酸そのものはすべての人間の体内にあるものですからアレルギーを非常に起こしにくいとされます。
    4. ただし、稀に低血糖症状(冷汗、寒さ、震え、動悸など)の出現がみられることがありますので、血糖降下剤服用中の患者様は必ず医師にご報告下さい。
    5. アルファリポ酸はビタミンBの消費を亢進させるので、点滴終了後にビタミンB群製剤を追加投与が必須となります。

     

    治療の流れ及び料金表

    初回は100㎎から開始し、最終的には600㎎へと増量します。

    1回目:アルファリポ酸100㎎:5,500
    2回目:アルファリポ酸300㎎:8,800
    3回目以降:アルファリポ酸600㎎:11,000

    投与時間:30~60分の点滴投与

     

    参考文献

    1. Clin Exp Pharmacol Physiol. 2020 Dec;47(12):1883-1890
    2. Apoptosis. 2005 Mar;10(2):359-68.
    3. FEBS Open Bio. 2020 Apr;10(4):607-618.
    4. Neoplasma. 2008;55(2):81-6.
    5. Anticancer Research June 2017, 37 (6) 2893-2898
    6. Int J Oncol. 2016 Oct;49(4):1445-56.

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