お腹外来(IBS・SIBO・LGS)
- 腸管バリアパネル:33,000
- 腸管バリアパネル+FIT132遅延型アレルギー検査:77,000
- 腸管バリアパネル+FIT176遅延型アレルギー検査:110,000
- 本治療は医薬品医療検査等法上の承認を得ていないため、医療保険制度は使用できません。自費診療となります。
- 副作用として火傷のリスクがありますので、細心の注意を払い行います。
- 足三里:刺激すると、大腸の運動を抑制、逆に胃の動き改善(Ewa M et al, 2006)
- 合谷:刺激により下痢にも便秘にも効果あり。その他神経過敏・精神不安・入眠困難なども改善
- 腹部周辺:関元・天枢・水分:電気刺激の強さと周波数をコントロールして、大腸の動きの促進も抑制も可能(Gao M et al. 1997) など
- 「脳内に痛みを抑制する物質や精神を落ち着かせる物質など作り出す」
- 「強い痛みを伴う電気刺激を与えることで、腸の動きを阻害する=下痢を止める(Lehman AV, 1913)」
- 「手や腹部の皮膚に神経刺激を与え、胃の前庭部の運動機能を低下させる(Camilleri M et al, 1984)」
- 口 食事は、パンや麺類などの炭水化物が中心
- 口 甘いお菓子、ジュースや炭酸飲料が好き
- 口 子どものころ、耳やのどの感染症に頻繁にかかった
- 口 2~3年に1度以上、抗生物質を服用する
- 口 胸焼けや、胃酸の逆流を防ぐ胃腸薬を飲んでいる
- 口 食べ物や化学薬品にアレルギーがある
- 口 自己免疫疾患と診断されたことがある
- 口 2型糖尿病にかかっている
- 口 帝王切開で生まれた
- 口 母乳よりほとんど粉ミルクで育った
- 口 標準体重を9キロ以上上回っている
- 口 気分が落ち込みがちだ
- 口 日常的に便がゆるい、あるいは便秘症だ
- 警告症状~微熱、関節痛、血便、予期せぬ3㎏以上の体重減少(6か月)などあるかどうか
- 危険因子~50歳以上の発症または大腸器質的疾患の既往歴、家族歴などがあるかどうか
- 通常臨床検査~血算、生化、CRP、甲状腺、便潜血、などで異常が見られないかどうか
- 上記➀~➂において問題があれば大腸検査(大腸内視鏡・X線など)を積極的に行う
- オリゴスキャン~体内のミネラルと有害重金属を測定可能。そこから腸管内に対して ミネラル不足が無いか、また体内の解毒機能が働いているかなどをチェック(ルクセンブルグのラボとコンタクトし施行)
- こもれび採血検査~胃の働きから酵素活性、炎症の程度など通常では行わない血液検査を行うことで、体の状態を別角度から精査(日本の検査機関)
- 有機酸検査~消化管内のカビや悪玉菌の有無、ミトコンドリアの機能障害の有無、メチレーション回路が働いているか蛋白、脂肪などの栄養をきちんと利用できているかなどを精査(米国の検査機関)
- 反応低血糖及び副腎疲労検査~14日間の血糖チェック、および唾液による副腎コルチゾールチェックを行い、副腎疲労が起こっていないかを精査
- 糞便検査~腸管内で起こっていること(実際の菌の培養、その菌に効果のある抗生剤やハーブの科学的検査、消化液の量など)を科学的に分析、検討(米国の検査機関)
- 推奨検査:1)分子栄養学的血液検査 2)有機酸検査(または総合便検査)
- 治療
- 腸粘膜再生を目的:L-グルタミン
- 腸粘膜の抗炎症を目的:ベルベリン・タキシフォリン・L-グルタミンなど
- 腸粘膜の修復目的:ビタミンA・ビタミンD・マグネシウム・プロバイオティクス・プレバイオティクス・酪酸・亜鉛、など
- 胃酸消化能力アップ:消化酵素 など
- 天然抗菌剤:ベルベリン・グレープフルーツシード・キャンディバクティン・カプリル酸、梅エキスなど (SIBOも陽性の場合は抗生剤を使用する場合がある)
- 抗真菌対策:・グレープフルーツシード・キャンディバクティンなど 食前、食間。最低2か月継続。
- バイオフィルム対策:真菌の蛋白バイオフィルムを破壊する
- 状況によっては抗真菌剤
- 腸内環境を真菌が増殖しにくい状態に維持:プロバイオティクス・プレバイオティクス
- カンジダ除菌中は免疫力が低下しやすいため、ビタミン D・A が足りない場合は積極的補充。腸内環境改善後、亜鉛、マグネシウム等もプラスする
- ダイオフ症状~治療時、死んだカンジダ細胞の中にたまっている有害物質が一気に放出されることで、全身症状が出る現象。マグネシウム・ケイ素・MSM(硫黄)などでそれらを吸着、排便できるように対応する。抗真菌対策薬内服後60~90分後に服用し、有害物質を吸着する。
- 解毒~カンジダは有害金属を体内にため込む性質を持つために、有害金属が多い場合はデトックス対策を同時に行う。必要かどうかはオリゴスキャンで確認するのがベスト。ちなみに体内に水銀多いとカンジダ殺しにくいことも理解しておく。
- 心の治療
- 小腸上部:胃液に含まれる塩酸が細菌の過剰な増殖を防ぐ
- 小腸内:・胆汁酸と膵臓内の酵素が細菌の過剰な増殖を防ぐ・小腸内免疫機能により、小腸内細菌増殖を抑制する
- 小腸下部:回盲弁により小腸と結腸が区別されており、大腸から小腸内への菌の侵入を防ぐ
- 伝播性消化管収縮運動:小腸収縮運動により細菌を小腸側から大腸側に洗浄する
- おなかが張って苦しい
- 異常な頻度のげっぷがでる
- 胃酸が逆流する
- 下痢、便秘などを繰り返す(下痢型SIBOは小腸内に「水素ガス」を発生する腸内細菌が多い場合、便秘型SIBOはメタンガスを発生する腸内細菌が多い)
- 太りやすくなる:メタンガスを発生する腸内細菌が多い便秘型SIBOは肥満を起こしやすくなる。
- マグネシウム、亜鉛、鉄などミネラル吸収障害が起こる:皮膚トラブル、生理痛、ムズムズ足などひきおこる危険がある。SIBO治療によりムズムズ足が治癒したとする論文あり。
- 蛋白吸収障害がおこる:蛋白不足により精神安定ホルモンであるセロトニンが作れない→不眠、うつ的感情のリスク(セロトニンの90%以上は小腸粘膜で合成される) ある種の自閉症スペクトラムも、腸内環境乱れが関係しているとの報告あり。
- 脂溶性ビタミン吸収、生成不全がおこる:SIBOに伴う消化不良、及び胆汁酸減少の影響で、脂溶性ビタミンであるビタミンA・D・E・Kの吸収、生成できなくなる。
- 免疫システム異常がおこる:小腸は栄養の入り口と同時にウイルスや細菌などの侵入者が入ってくるリスクがある場所でもあるため、命を守る門番として免疫機能を担っている。しかし、SIBOで小腸内に問題が起こると、このシステムが破壊され、様々な問題が生じる危険がある。自己免疫の不具合、リーキ-ガット症候群(腸漏れ症候群)など
-
小腸上部の問題:胃液減少(プロトンポンプ阻害剤、制酸剤など医原性も含む)により細菌の過剰な増殖を防げなくなる
-
胆汁酸・膵臓内の酵素減少:細菌の過剰増殖を防げなくなる
-
小腸内免疫機能不全:小腸内細菌増殖を抑制できなくなる
-
小腸下部の回盲弁閉鎖不全:大腸から小腸内への菌の侵入を防げなくなる。狭窄、癒着、占拠性病変、先天性の解剖学的異常、憩室炎、婦人科系の症状(例:子宮内膜症、卵巣嚢胞)など物理的なことも原因となる
-
伝播性消化管収縮運動低下:細菌が大腸側から小腸側に移動できるようになる。急性胃腸炎による細菌毒素(急性)や感染後の自己免疫反応、慢性的なストレス(交感神経優位=自律神経異常)などが原因となる
- オレガノオイル:抗菌、抗ウイルス、抗真菌作用あり。消化を促進する効果
- ベルベリン:ヒイラギナンテンなどの薬草に含まれる化合物。SIBOに効果
- カプリル酸:抗菌、抗ウイルス、抗真菌作用あり。
- 御岳百草丸:日本原産。5種の植物使用
- 抗真菌作用のある食べ物を積極的に食べる:ニンニク 梅肉エキス ココナッツオイル ローズマリー リンゴ酢 など
- 腸内環境維持(乳酸菌や抗炎症サプリメント):プロバイオティクス・プレバイオティクス(あくまで悪玉菌除菌後)
- 抗真菌対策:抗真菌剤(ハーブ・漢方・抗真菌薬など)
- バイオフィルム対策(enzyme酵素):真菌繊維消化酵素(細胞壁破壊)~食前30分前に内服します
- 食べ物:小麦のグルテン・牛乳蛋白のガゼイン
リーキーガットの原因の一つ、小麦たんぱく質のグルテンを例にご説明します。 - グルテンから分解されたグリアジン(①)が、小腸の上皮細胞に結合してゾヌリンを作る(②)。
- 分泌されたゾヌリンが上皮細胞に結合する(③)ことで、タイトジャンクションが壊れて細胞間の隙間を広げてしまう(④)。
- 脳の問題:脳の発達または過去の脳損傷や変性、脳内ホルモンを含めたホルモン異常。なおゾヌリンは脳のバリア機能(血液脳関門)も破壊し、リーキーブレインも引き起こす
- 腸の問題:腸の自己免疫異常(ビタミンA/D不足)、腸内環境異常(悪玉菌のアンバランス)
- 慢性的なストレス:慢性的な睡眠不足など
- 薬物:ステロイドホルモン、抗生物質、NSAID、およびその他の薬物
- 解毒機能の低下:グルタチオン欠乏症など
- 腸を痛めつけている食べ物を取り除く:遅延型アレルギー検査が必要。行わない場合は以下を避けるようにします。
・小麦:消化困難なタンパク質「グルテン」、血糖の乱高下をもたらす「アミロペクチンA」、中毒性をもたらす「グリアドルフィン」
・牛乳(カゼイン):乳糖不耐症、がゼイン不耐症
*牛乳と小麦は2週間完全に断つ!!
・トランス脂肪酸:プラスチックを食べているのと同じ。ハンバーガーやフライドポテトに使用されている
・精製糖質:悪玉菌、カビの大好物。ちなみに血糖値の不安定性 - 慢性的な高血糖または低血糖も要因となる。アルコールの糖や酵母も問題になる
・GMO(遺伝子組み換え食品)
・他の食品(乳製品、卵、大豆、レクチンなど)に対する過敏症。 - 善玉菌摂取:乳酸菌は細胞間の緊密および接着結合タンパク質の合成と分解に関わる遺伝子の代謝回転が高く、損傷した腸の修復プロセスに高い効果をもたらす(Mujagic ら Sci Rep,2017;7)。 (乳酸菌プライム・ビオフォーラ・酪酸・ミヤリサン)
- ビタミンを摂取する: 腸管内の免疫を安定させ腸バリアを回復させる
・ビタミン A~IgA抗体産生細胞へと分化や、特定のリンパ球が正しく小腸組織へ移入させる(岩田誠 腸内細菌学雑誌 2007 21:297-304)
・ビタミン D:ミオシンリン酸化(細胞骨格の収縮:タイトジャンクションを開く)を阻害し、腸バリアの完全性を維持する(F.Lacerda らNutrients,2021 Feb;13(2):642)
*リーキーガットはその他ビタミンB 群やミネラル(亜鉛・マグネシウム・鉄)の吸収が悪くなるため、それらを補給することも重要(血液検査を見て対応)
- 腸感染症対策 - 細菌、寄生虫、または真菌による感染。腸内感染により小腸の機能が低下。除菌する(キャンディバクティン・百草丸・グレープフルーツシードなど)
- L-グルタミン酸:腸透過性亢進を改善させる
・LGS伴う過敏性腸症候群(IBS)の患者では、グルタミンサプリメントがすべての主要な IBS 関連エンドポイントを劇的かつ安全に減少。(Zhou ら GUT,2019)
*グルタミン酸は、腸漏れを塞ぐだけでなく、小腸・大腸にさらに有用な役割を果たしてくれます。
・ロタウイルス胃腸炎(冬に子供を中心に流行するお腹の風邪):グルタミン投与で下痢改善
・炎症性腸疾患:グルタミンを投与すると、2週間以内に大多数の患者で下痢が止まり、腹痛が改善。最終的には普通の食事がとれるようになった
・短腸症候群(重篤な腸の疾患により腸管を大部分切り取られたため、水分が吸収できず1日3L以上の下痢を繰り返す重篤な疾患):6~11年間頸静脈から栄養点滴していたのが、グルタミン投与で普通食ではないが、食物を口から摂取することが出来るようになり、1日2~3回の軟便に改善。
それ以外にも、グルタミンは、脳の栄養素としても利用されています。ストレス時に体内でグルタミンが大量に消費されることなども考慮すれば、ストレスが発症誘因となるIBS患者などは積極的に摂取すべき栄養素だと考えています。
当院では、安全、安心の純度99.9%の日本製天然グルタミンを使用しています。 - 西洋医学:アイピーディ・タリオン・アミティーザ・ムコスタ
- 抗体が多い時~タチオン・フルボ酸・NAC・αリポ酸・MSMなど。また小麦を完全に避けるのが難しい場合は小麦分解酵素の活用
- その他:フラクトオリゴ糖(3gを基本。下痢になる場合は減量。便秘の場合は増量)・オメガ3油(EPA・DHA・亜麻仁油)・ショウガ・ニンニク(大丈夫なら)・発酵食品・野菜海藻(味噌汁 鍋)など
*ただし遅延型アレルギー陽性のものやSIBO陽性の場合、摂取不可の場合あり。 - こもれびの診療所に特化したLGS治療
病院をはしごしても、下痢・腹痛・お腹の張りの原因がわからない、治療方法がないあなたへ
「だめだ、電車に乗れない」
通勤のための最寄駅で、腹部に鋭い痛みを感じトイレに駆け込みました。
激しい下痢と腹痛のため、どうしても電車に乗れることができなかったのです。
これが、私が自分の抱える疾患「過敏性腸症候群」と本気で向き合うきっかけとなった出来事でした。
振り返れば、子供の時からお腹の弱い子供でした。
祖母から、下痢に効果のある置き薬をもらっては、よく飲んでいました。
その後も、テストの途中でトイレに行ったり、大きな行事の前になると、緊張でお腹を壊したりしました。
ただ部活、勉強、仕事などの妨げになるというほどの事はなく、日常生活は問題なく過ごせていました。
ところが、数年前、九州から東京に統合医療という分野の勉強するために家族で上京してから、徐々に、私の体に大きな変化が表れるようになりました。
統合医療とは、さまざまな医療を融合し患者中心の医療を行うもののことです。治療手段としては科学的な近代西洋医学はもちろん、漢方や鍼灸などの伝統医学、ハーブなどの補完・代替医療、更に経験的な伝統・民族医学や民間療法などまで組み合わせたものの総称です。
なぜ、統合医療なのか。それは、子供のころの体験が大きく影響しています。
私は、プロ野球選手を目指す夢見る野球少年でした。しかし、技術のない中ボールを投げすぎ、さらに痛みを我慢して投げ続けたために、気が付いたときは、屈曲制限と痛みでボールを投げることができなくなっていました。それから様々な整形外科、鍼灸などの治療を2年近く行いましたが改善は見られず、最後に行った整形外科ではサッカー選手になる様に指導されました。そう宣告された夜、号泣したことは今でも覚えています。そして治癒を半ば諦めていた時、山重先生に出会いました。先生は、精神科・内科の医師でしたが、統合医療も勉強されていた方で、最後の望みを託しての受診でした。
診察は鍼と電気を組み合わせたとても不思議なものでした。
治療時間はほんの数分。そしてその後「曲げてごらん」の声。疑心暗鬼しかなかった私でしたが曲げた瞬間、驚きました。これまで2年近く90度以上曲げることができなかった肘が痛みなく曲がり肩に手が届いたのです。その時の感動と興奮は今でも鮮明な記憶となっています。そして感動を与えてくれた山重先生の医療スタイルが、私の目指すべき医師像となりました。
そして子供のころからの夢を実現するための一歩が、東京への転居でした。
しかしこれは同時に、私にとって苦しみの一歩にもなりました。
統合医療を勉強し始めてすぐ、私はこの学問の果てしなさを知りました。わかってはいたつもりでしたが、改めて西洋医学はもちろん、伝統医学から世界中の民間療法と、要求されるあまりにも膨大な知識量に私は圧倒されてしまいました。また、この分野の成功の難しさも同時に知りました。日本は国民皆保険で、医療費は3割以下、条件に応じては全額無料の人たちもいる医療費が非常に安い国です。その中で、西洋医学以外、つまり保険が使えない、場合によっては100%自費が求められる統合医療を成功させることは非常に難しく、実際にこの道を志して成功している医師はほとんどいないという現実でした。
普通に医師として一般病院に勤務していれば、お金も社会的地位も保証されます。それを捨て、日本の医療制度において成功者がほとんどいない統合医療という分野へのキャリアチェンジは、自分の夢であったはずなのに、日に日に不安に代わっていきました。
「本当にこの道を進んでやっていけるだろうか」
「家族を路頭に迷わせることはないだろうか」
不安が何度も頭を廻りました。そして、その不安が、「頑張るしかない!」「絶対に成功させなければ!」という強いプレッシャーとなって私の体にのしかかりました。
そのような中、思いがけないトラブルが私と家族を次々と襲いました。
上京してすぐ、夜中に階段から転落し膝の靱帯を損傷。私は1か月の松葉づえ生活を余儀なくされたのです。まだ満員電車での通勤に慣れていないのに、松葉づえは大きなストレスでした。
さらに、私たちの住んだ家の目の前のアパートに、子供嫌いで、近隣の住民をことごとく追い払い続けたクレーマーがいることが分かったのです。子供が3人いる私たち家族は特に目をつけられ、理不尽で心ない言葉を投げかけられるなど、子供たちを含め、私たち家族は皆、心に大きな苦しみを負いました。
私たち家族は引っ越しをして、今は自然も多く、近所の人たちもよい人ばかりの環境で暮らせていますが、上京直後のこの体験は、目に見えない傷となって私の心に残りました。
その後、電車での通勤にもなれ、仕事にも落ち着いて取り組めるようにはなったものの、今度は統合医療という分野の厳しさ、果てしなさ、この道で医師として経済的に自立することの難しさが、知れば知るほど身に染みてきました。私はその不安を振り払うために、さらなるスキルアップを目指し、学校、塾、学会、セミナーと、ありとあらゆるものに参加し、休日のほとんどを勉強に使いました。空いた時間があればできる限り論文や関係図書を読むことに費やしました。
今思えば、私は張りつめた糸のような精神状態でした。
そのような余裕のない毎日を送る最中、さらに大きな出来事が起こりました。
妻の妊娠です。それは、もちろん私にとっても家族にとってもうれしい報告でした。それなのに、余裕のない毎日を送っていた私には、この出来事が、プレッシャーにもなりました。
「この子たちを、新しく生まれてくる子供も、絶対不幸にしてはならない。もっともっと頑張って成功しなければ」
しかし、そのような思いとは裏腹に、悪阻(つわり)のせいで妻が体調不良となり、私は土日を自由に使うことができなくなりました。
本来なら、家族との時間を楽しむべきだったのに、その時の私は、それができず、これも不安の材料にしてしまいました。
「このセミナーに出たいけど出られない。多くの先生たちは学んで先に進んでいるのに、自分だけ置いて行かれてしまう」
という焦りに襲われていたのです。
そのころ、もう一つ大きな出来事がありました。私が中心になって、新しい医療従事者のための学会を立ち上げることになったのです。
事務局の立ち上げに始まり、口座の作成、会則作り、多くの先生たちとのやり取りなど、日常の勤務を行いながらの作業はとても大変で、さらに大きな負荷を私に与えました。
そんな、心の糸が伸びきったような状態が続く中で、気がつけばある症状が、私に表れていました。
下痢です。
「あれ、またお腹が痛い」
トイレに駆け込む回数が日に日に増えていきました。
また、このころよりお腹の膨満感にも苦しめられました。特にお昼後の診察ではお腹の張りが強く、カイロをお腹に張りなんとか乗り切る、という日々が続きました。
これに対して食事をセーブしたり、消化の良い食材を選んだ食事に変えたりしたのですが改善は乏しく、気がつけば、常にお腹の調子を気にしている自分がいました。
「何かおかしい。こんなことは今までになかった。大丈夫だろうか」
そのような心配が日に日に強くなっていく中、とうとう、通勤すら思うようにできなくなってしまったのです。
その時になってやっと、私は自分の症状と向き合いました。
「この症状を何とかしなければ、私自身がだめになってしまう」
医師として、自分自身をあらゆる角度から診察しました。
そして自分自身を「過敏性腸症候群」と「SIBO」と診断しました。
ただし過敏性腸症候群は、西洋医学的には完治のための確立した治療はなく、症状を抑える方法しかありません。
またSIBOは日本の保険診療の中では病名すらありません。だからこそ、私自身が勉強してきた統合医療の出番でした。
私は、消化器内科・心療内科などの西洋医学、漢方・お灸・針・瞑想などの東洋医学、サプリメント・食事療法・運動療法などの補完代替医療のすべてを駆使して自分の下痢と向き合いました。
そして、約1年半。通勤電車にさえ乗れなかった私は、飛行機に乗って学会に参加できるまでに回復したのです。
私と同じように、この疾患で苦しんでいる人は世界中にたくさんいます。米国では人口の14%、日本でもほぼ同様の13.1%が過敏性腸症候群で苦しんでいると報告されています。(H. Miwa , et al.2012)つまり、日本国内だけでみても1000万人以上が過敏性腸症候群で、お腹の苦しみを抱え、かた過敏性腸症候群の80%以上がSIBOを併発していると報告されています。
その苦しみを知っている私だからこそ、皆さんをなんとか楽にしてあげたい、その思いで開業したのが「こもれびの診療所」です。
当院でおこなっている治療は、突如襲ってくる腹痛、下痢、腹部膨満に対して医師として、そしてそれに苦しんだ患者として戦った私のカルテであり、処方箋です。
またこの処方箋は、10年ブラッシュアップし続け、そして生まれたのが、「こもれび式治療法」です。
現在は、北は北海道から、南は福岡まで、日本中からお腹の困った方たちがたくさん訪れてくれています。
そして多くの笑顔が見られるようになりました。
「私と同じ苦しみを抱えている患者さんに笑顔になってもらいたい」
その思いと効果が詰まった治療です。
ぜひ、一人でも多くの人にこの治療方法を知り、体験してほしいと心より願っています。
大切な人たちと共においしいご飯を食べる、旅行に行く、通勤する、そんな普通の毎日があなたに訪れますように祈って。
追記:当院のお腹外来では、
1)通常の保険診療では寛解に至るのが難しい「過敏性腸症候群(IBS)」
2)日常生活を妨げるほどのお腹の張りやガス腹を引き起こすにもかかわらず保険診療に病名が存在しないため、通常の病院では治療対象とならない「小腸内細菌増殖症(SIBO)」
3)お腹の張りや下痢などお腹の症状に加え、不眠症、記憶力低下、不安感、疲労感、口臭、神経過敏、食欲低下、じんましん、喘息、アトピー性皮膚炎など、様々な症状を引き起こすリーキーガット症候群(全身腸漏れ症候群 LGS)
の3つをメイン治療疾患として対応しております。
検査
まず患者様の現在の状況を把握するために、詳しい問診と検査を行います。
ウェブ問診(メルプ)に、お腹を含めて、現在の状況に対してかなり詳細に答えていただきます。お手数ですが、診断・治療にとって非常に重要な情報となりますので、そちらの記載をお願いいたします。
その問診票と実際の診察の後、さらにいくつかの検査を行います。
当院は、自費診療であり、米国に提出するものや、ルクセンブルクのホストコンピューターと通信でつないで行う検査など、通常保険診療では行えないものがベースとなるため、検査項目が増えるほど、当然ですが料金も加算されます。
ただし、医師にとっては、これらの検査が増えれば増えるほど、患者様を正確に診断し、治療を決定するうえで、より詳細な計画表を作ることが可能になります。
このジレンマを抱えつつ、ここでは、「なぜ検査を行う必要があるのか?」、「数が増えるとどのようにいいことがあるのか」、「できるだけ検査を少なくしたいと考えると、自分の症状にベストだと思われる検査はどれか」
についてお話させていただきたいと思います。
●検査の意味
医療の目的は、患者さんの困った(ここではお腹の張りや下痢)の原因を考え、治すことです。
それにおいて必要になるのが「検査」です。
検査の意味は、登山に例えるとわかりやすいかもしれません。
登山の目的は「山の頂上に登る」、これは治療でいえば「患者さんの困った症状が改善し元気になる」にあたります。
それにおいて、知らなければならないことは2つ、「今、山の何合目にいるのか?」と「どのルートを使って登るのか?」という事です。
■「今、山の何合目にいるのか?」
お腹の問題を治療するにあたり、お腹だけを考えればよいのか、それともストレス(脳や自律神経)や食事・睡眠(生活習慣)まで考えないといけないのか、つまり検査(問診を含む)は、患者さまの現在の状況(スタート地点)を教えてくれます。
この「今、患者さんはどのような状態なのか?」を知るために、検査はとても重要な意味を持ちます。
■「どのルートを使って登るのか?」
検査のもう一つの役割は「病気の治し方の方針」を立てる事です。
小腸に菌がたくさんいる、カビが多い、ストレスで腸が動いていない、副腎疲労やミトコンドリア機能不全でエネルギーが不足している、これらの情報が多ければ多い程、目の前の山(=患者さんの治す順序)を左に迂回するのか、右に迂回するのか、それとも遠回りだけど一回下って裏側から登るのか、最短ルートを選択するのか登り方(治し方)が全くかわってきます。
つまり、検査が増えれば増えるほど、その患者さん一人一人のマニュアルではない、ベストな治療方法がわかるということになるのです。
■ベストな検査を選択する
上述のように、検査は増えれば増えるほど私たちのとっても患者様にとっても治療の方向性を決定するにはベターです。ただし繰り返しになりますが、検査項目が増えれば患者様にとって「金銭」というデメリットが発生します。よってそれぞれの検査のメリット・デメリットを考慮し、患者様と相談の上、一人一人のベストを共に考えたいと思います。
ひとまずここに、お腹の問題において行われることがおおい検査の一覧をお示しします。
検査名 |
メリット |
デメリット |
値段(税込) |
➀SIBO呼気検査(呼気ガス) |
SIBOかどうかの判定ができる。また自宅で行えるため、来院しなくても判定可能 |
米国で行うため、2~3週間程度結果が出るまでかかる |
55,000 |
②有機酸検査(尿) |
腸管内の菌の種類がカビも含めてざっくりわかる。その他ミトコンドリア機能、栄養状態、解毒機能、炎症なども見ることができる。自宅で行えるため、来院しなくても判定可能 |
米国で行うため、2~3週間程度結果が出るまでかかる(尿) |
55,000 |
③総合便検査(便) 対象:SIBO・IBS・LGS |
便を見ることで菌の種類、カビの種類が詳細にわかる。また消化能力や腸の炎症状態、免疫状態、悪玉菌等に使える治療薬の感受性などもわかる。またリーキーガット症候群かどうかの推定も可能。自宅で行えるため、来院しなくても判定可能 |
米国で行うため、2~3週間程度結果が出るまでかかる(便) |
77,000 |
④血液検査(血液) 対象:SIBO・IBS・LGS |
日本で行えるので速やかに結果が出る。消化能力、ミトコンドリア機能、ミネラルの一部、ビタミンの一部など、ある程度、また広範囲に確認できる |
血液検査を分子栄養学的にみるため、一般の評価と異なり、様々な問題点が確認できる。 |
20,000前後 |
⑤オリゴスキャン 対象:SIBO・IBS・LGS |
体内のミネラル量(20種類)と有害金属(12種類)の検査が瞬時にわかる。血液を必要としない検査なので痛みが一切ない。 |
腹部関係においてはあくまでも補助診断となる。来院が必要となる。 |
16,500 |
⑥腸管バリアパネル検査および遅延型アレルギー検査 対象:LGS |
ゾヌリン・カンジダ・オクルディン・LPSの抗体(IgG、IgA)、炎症物質(C3d)を測定。同時に食べ物におけるリーキーガットの原因検索として、遅延型アレルギー検査を併用。 |
米国で行うため、2~3週間程度結果が出るまでかかる |
|
●お腹の治療はお腹だけにあらず
「脳腸相関」「腸はセカンドブレイン(第二の脳)」など言う言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは腸は脳と強く相関がある、ということを意味する言葉なのですが、実際、IBSやSIBOにおいては、特にこもれびの診療所に受診されるような方は、これまで様々な病院に行かれるも改善が乏しく、長期の苦しみと共に来院されることがほとんどです。よって、消化管はもちろんですが、それにかかわる自律神経、脳の両方もひどくダメージを付けている場合がほとんどであり、その治療において、当院では脳科学、分子栄養学、東洋医学、心理学などを利用して対応していきます。
なお、なぜ腸の治療に脳や自律神経のことを考えないといないのか?という疑問については、以下映像でも解説しておりますので、ご参照ください。
1)腸を治す
突然ですが「リフォーム」と「リノベーション」の言葉の違いをご存じですか?
「リフォーム」は「悪い状態からの改良」を意味し、基本的に壊れていたり、老朽化したりしている建物を部分的に直すことで、マイナスをゼロの状態に戻すことを意味します。
これに対して「リノベーション」とは「革新、刷新、修復」を意味し、リフォームにプラスアルファし、新たな機能や価値を向上させることで、元のものよりさらにいいものに変えるという事を意味しています。
つまり、腸をもとに戻すのが「リフォーム」、これまでの腸をさらに良くするのが「リノベーション」です。
これを踏まえて、腸治療をご説明いたします。
1)腸管リフォーム療法・腸管内善玉菌群移植療法
私は腸管を家、腸内細菌を住民と考えます。そして、この両方がベストな状態になったとき、腸は健康になると考えます。
よってまずは、家である腸管をオゾン注腸療法と交流磁気治療を使って修復する「腸管リフォーム療法」を行います。これは、血流改善、活性酸素除去、免疫安定、抗炎症、自律神経調整などの作用を持つ治療法を組み合わせたもので、これにより「腸管の改善=リフォーム」を目指します。
次に行われるのが、善玉菌群の移植、「腸管内善玉菌群移植療法」です。リフォームされた腸管に、多種類の善玉菌を大量に注入することで、腸管内の腸内細菌のバランスを善玉菌優位に導き、腸の状態をより良い状態に導いていきます。
リフォームされた家(腸)に、良い人達(善玉菌たち)ばかり住み着かせることで、腸をさらに良い状態にする、つまり「リノベーション」を目指すのがこもれび的腸治療となります。
「腸管リフォーム療法」、「腸管内善玉菌群移植療法」、そしてこれらを合わせることで行う「腸管リノベーション療法」、これがこもれび式腸治療となります。
その他基本治療としては
・腸粘膜再生:「L-グルタミン」・ボーンブロス(骨蛋白スープ)など
・腸粘膜の抗炎症:カプリル酸・フィッシュオイル(EPA DHA)・L-グルタミンなど
・腸粘膜の修復:ビタミンA・亜鉛(抗炎症作用もあり)・ビタミンD(腸壁のタイトジャンクションを守るのに必要)・マグネシウムなど
があります。
●注意事項
■本治療は医薬品医療機器等法上の承認を得ていないため、医療保険制度は使用できません。自費診療となります。
■ 未承認医療機器であるオゾン生成機器(専用注射筒など)は、医師の責任において適切な輸入許可のもと輸入され使用されています。
■ 本治療に使用できる同一の性能を有する他の国内承認医療機器・医薬品はありません。
■ 血液オゾン療法は、海外、特にヨーロッパでは長い歴史のある治療法です。数多くの臨床試験が諸外国において行われていますが、重篤な副作用の報告はありません。
2)ラジオ波温熱マッサージ療法
当院のお腹2大疾患、SIBO、IBS治療において、飛躍的に治療効果を上げることに成功した治療方法です。
特にお腹だけでなく、心や自律神経に問題のある方は積極的に行うことをお薦めする治療方法となっています。
●注意事項
2)脳を治す
脳の治療として、当院では以下の治療を行っています。
1)ハーブ・サプリメントを使った治療:以下画像をご覧ください。
2)YNSA(山元式新頭針療法)®。
YNSA学会®の代表を務める加藤が、世界でもトップクラスの技術にて、頭針治療により脳の調節を行っていきます。
自律神経機能の中枢部である脳幹は腸治療において特に大切な治療部位となります。よって、ここは非常に意識して治療していきます。
3)物理療法(電気・磁気・高周波)
こもれびの診療所では脳治療に、物理療法を多用しています。
この治療法を取り入れてから、改善効果が飛躍的に上がりました。特にラジオ波温熱マッサージはお腹の治療には必須アイテムとなっています。
3)自律神経を治す
自律神経とは脳の中枢奥になる脳幹からの指示を腸管に伝える神経で、交感神経と副交感神経の2本を手綱のように操って、腸を含め、体中の臓器を最善の状態に導くように働きます。
図は自律神経を簡単に図示したものです。
交感神経と副交感神経を使って体内のすべての臓器をコントロールしているのがわかると思います。特に最も大きな臓器である小腸と大腸は、非常に多くの神経が分布しており、腸と自律神経は気に話すことができない関係です。
しかし、脳幹及び自律神経は、ストレスに弱く、ストレスの過剰状態が長期続くとシステムエラーを起こします。その結果、自律神経がコントロールする小腸、大腸は機能不全を起こし、下痢、便秘、腹部膨満などの腹部の異常な状態が引き起こされてしまいます。
これに対して、こもれびの診療所は「東洋医学」をベースに近代治療器具を組み合わせて対応していきます。
1)電気温灸・低周波治療・YNSA
東洋医学の知識に科学的根拠を加え、熱刺激や電気刺激を与えて脳、自律神経を通じて腸を整えていく方法です。
ツボの電気刺激による論文はいくつか出ており、代表的なものとしては
があります。
また、電気温灸により温めるという行為(冷えはお腹症状の最大のリスク)、経皮的神経電気刺激の強さと速さを変えることで可能となる以下の行為
などの科学的データも加味して、その人の現在のお腹の困ったに最も適している刺激方法を行っていきます。
また脳でご紹介したYNSA®は自律神経の治療にも高い効果を発揮します。よってYNSA®を併用する場合は、脳だけでなく自律神経の治療も加えていきます。
2)プロバイオティクス・プレバイオティクス
実はお腹の治療で有名な善玉菌のプロバイオティクス、そして善玉菌のエサとなるプレバイオティクスは、お腹の治療において「脳」や「自律神経」の治療も行うことがわかってきました。よってここでその研究結果を踏まえてどのような方針でこれらを摂取した方が良いのか、お話させていただきます。
なお、プレバイオティクスとして出てくる「グアガム」はSIBOでも使用可能ですので、とても良いと思われます。
以上、当院における「腸」、「脳」、および「自律神経」の治療を通して、お腹の困ったを治していく点を説明いたしました。それぞれの詳細は「治療」の項目に記載していますので、ご覧いただければと思います。
4)その他
・プロゲステロン:女性のIBS下痢型の場合、黄体ホルモン(プロゲステロン)が不足している場合があります。というのは、プロゲステロンは大腸の蠕動運動を抑制するからです。よって女性の場合、血液検査でプロゲステロンを測定し、不足の場合はプロゲステロンの処方を考慮します。
各論
こもれびの診療所では、腸のトラブルで日常生活が非常に難渋しているにもかかわらず、通常の検査では「異常なし」と言われる消化管疾患、中でも
過敏性腸症候群(IBS;irritable bowel syndrome)
小腸内細菌異常増殖症(SIBO;Small intestinal bacterial overgrowth syndrome)
リーキーガット症候群(LGS;leaky「漏れる」gut「腸」syndrome=腸漏れ症候群)
などの疾患が治療の主となっています。
なかでも最も得意とするのが下痢型IBSです。これらを中心に詳しくお話していきたいと思います。
腸は治療の一丁目一番地
腸の問題は、単純に腸の不調だけでなく、様々な病気の原因となっていることが、近年多数報告されるようになりました。
よって、腸の状態をベストにしておくことは、単純に腸の病気の改善だけでなく、すべての健康にとって必要不可欠な対策と言い換えることができます。
なので、まずはあなたの「腸内環境」をチェックしてみましょう。
次の質問に「はい(Yes)」が多いほど、腸内環境にダメージを受けている可能性が高く、様々な不調や病気、脳にかかわるトラブルのリスクが高まっていきます。
ここにチェックが多い場合で、何か疾患を持っている場合は、少し腸の改善を意識されるのが良いと思われます。
では、いよいよ、当診療所でメインに行う腸疾患、①IBS、②SIBO、③リーキーガット症候群についてみていきましょう。
過敏性腸症候群(IBS;irritable bowel syndrome)
IBSは「腹部の痛みや腹部膨満感など不快な症状を伴った下痢や便秘などを繰り返すにもかかわらず、腸に器質的異常が見つからないもの」と定義される疾患です。
なおIBSは罹患率が非常に高い疾患で米国では人口の14%、日本では人口の13.1%と報告されています。つまり日本国内だけで1,000万人以上の患者さんが苦しんでいる計算になるのですが、実際に病院受診するのは25%程度で、多くは一人でお腹の苦しみを抱えて苦しんでいることになります。
実は加藤もIBSで苦しんだ一人です。よって、常にお腹のことを心配し、日常生活を制限される苦しい気持ちは、誰よりも理解できます。なので一人で苦しまず、ぜひ私たちに相談してください。一緒に悩み、そして解決するための最善の策を考えていきましょう。
IBSの診断(総合便検査)
先ほどIBSは「腹部の痛みや腹部膨満感など不快な症状を伴った下痢や便秘などを繰り返すにもかかわらず、腸に器質的異常が見つからないもの」とお話しました。
つまり、少なくとも臓器には異常のない疾患で、基本命にかかわることはありません。
これに対して、IBSに症状が似ているのですが、中には重症化する疾患が隠れていることもあります。
よって、IBSの治療の前に、まずはIBS以外の重症な疾患が無いかを鑑別することが大切になります。
鑑別診断
(日本消化器学会 機能性消化管疾患IBS診療ガイドライン2014)
以上のすべてが基本マイナスとなれば、基本重症疾患の可能性は少ないと考えられるため、IBSを考えて、IBS診断基準RomeⅢチェックへと進んでいきます。
この基準を満たした場合、「IBS」が基本的に疑われます。
●さらなる戦略の為の「総合便検査」
IBSとの戦いにおいて、どのような治療戦略を行いIBSを克服するのか?
その戦略及び戦術のために、当院では「総合便検査」や「有機酸検査」を行っています。
1)腸内細菌叢の情報~細菌の情報(細菌の種類、量、効果のある治療薬の解析)、真菌(カビ)の情報(真菌の種類、量。真菌に対して効果のある治療薬の分析)が手に入ることで、腸内細菌の改善方法の戦略が立てられる
2)消化吸収能力の情報~消化酵素量・脂肪・筋繊維・野菜繊維・炭水化物などの解析により、その人の消化吸収力がわかる
3)IBSの鑑別診断および重症度の情報~ラクトフェリンとカルプロテクチンを見ることで、炎症性腸疾患と過敏性腸症候群の鑑別の鑑別ができ、治療の有効性の判定にもなる。またリゾチームや便中の白血球と粘液をみることで、腸内の重症度が推定される
4)腸管免疫の情報~分泌型IgA(腸粘膜組織から分泌され、消化管粘膜を守る)により腸管の免疫状態及び腸管の危険度が推定できる
5)野菜摂取量の是非~短鎖脂肪酸(SCFAs)分により善玉細菌量と現在の野菜摂取量が妥当かが判定できる
6)ゾヌリン検査によりリーキーガット症候群が背景にないかを判定できる
これらにより、悪玉菌や真菌の除去の是非や、善玉菌の投与方法及び投与量、消化能力改善のための補助の有無などの戦略が立てられ、その人にあった適切な最高戦術・戦略の提案及び実行が可能になります。
なお、有機酸検査は「検査」の項目に詳しくかいておりますので、そちらをお読みください。
IBSの一般的治療
これが一般的な西洋医学的治療となります。
通常のクリニックにかかり、この治療によって軽快、もしくは改善があれば、特にこもれび外来を訪れる必要はないのかもしれません。
ただし、これらは基本対症療法であるため、根本的な治療とはなりにくく、症状が継続する方も少なくないでしょう。
ではこもれびではどのような治療を行うのか?
こもれびにおけるIBS治療
1.腸管リフォーム療法
まずは、下痢や便秘を引き起こす消化管システムを改善していきます。
消化管システム改善対策として当院で中心的治療となっているのが「腸管リフォーム療法」です。ドイツを中心にヨーロッパ各国で100年以上続く「オゾン注腸」と日本で開発され40年以上の歴史を持つ「交流磁気治療」を合わせたもので、効果と安全性は十分に検証された治療法です。
●治療効果
現在、以下の理由でオゾン注腸療法がIBSを含めた消化管疾患に効果があると考えられています。
1)血行促進作用に伴う腸管機能の改善(Clavo, J.L. Pérez, L. et al. 2003)
2)抗酸化系酵素の誘導を通しての抗炎症効果 (医療・オゾン研究 第2号.2012)
3)免疫細胞活性化作用に伴い、腸管内の細菌バランスが整った可能性
4)メンタルの改善~オゾン療法に伴う多幸感、難病患者のQOL向上などの改善報告あり(作用機序はまだ証明されていない。脳内ホルモンの影響が示唆)
当院におけるIBS治療効果:有効率83%(2020年5月~12月)
なおこの効果については、2021年11月 Vol28「医療・環境オゾン研究」に「過敏性腸症候群(IBS)におけるオゾン注腸の可能性」と題して論文発表しております。
●副作用:ほぼ皆無です。少しお腹が張る、軽い排便感が出る、などの訴えがある程度です。しかしこれも30分以内におさまります。
詳細は「腸管リフォーム療法」を参照ください。
●2021年日本オゾン療法学会でのIBSにおける腸管リフォーム療法(オゾン注腸療法)の発表です。
2.腸内善玉菌群移植療法
腸管内を最善の状態に保つために、有用であるとの科学的報告がある善玉菌(プロバイオティクス)や酪酸を注腸し、大腸に定着、安定させる方法です。
なお、腸内の改善だけでなく、免疫、神経、炎症、生活習慣病などの改善も報告されています。(Makoto Usami, et al. 2019)
詳しくは、「腸管善玉菌群移植療法をご参照ください。
3.検査に伴う腸対策
「腸管リフォーム療法」と「腸管内善玉菌群移植療法」を合わせた「腸管リノベーション療法」でIBSの症状は改善することが非常に多いですが、改善乏しい場合は体内の状態を、必要に応じて検査を行いながら対策を検討していきます。
4.その他メンタル的な問題に対する治療
IBSの治療として一般的に、通常のお腹をメインにした治療を行い効果が乏しいときは、心理的な治療法も併用していきます。
まずはセルフケアとして、加藤の著書「下痢止めbook」を読んでいただき、その中で使えそうな心理療法を毎日の生活に取り入れてもらいます。
なお、こもれびの診療所では
・「脳」と「自律神経」の治療
を取り入れることで、心理的、自律神経的な側面から改善を目指して治療していきます。
●こもれびの診療所におけるIBS(下痢タイプ)の基本的治療指針のまとめ
食事の基本指針
1)小麦を減らす:グリシン(腸でグリアジンとグルテニンに変化)における3つの問題
A)消化困難:グリアジンは消化管で分解できず未消化のグリアドルフィンになり、吸収後脳内オピオイド受容体を刺激してモルヒネ様作用を生じさせるリスクあり。
B)リーキーガット:グリアジンとグルテニンは小腸上皮にくっつくことでゾヌリンを過剰分泌→”腸漏れ症候群=リーキーガット症候群”を誘発、種々の疾患を引き起こすリスク。
C)グルテン過敏症による種々のアレルギー反応
2)乳製品(牛乳・チーズ・ヨーグルトなど)を減らす:ガゼイン蛋白はグルテン同様消化困難で、未消化蛋白カソモルフィンへ→脳内オピオイド受容体刺激→モルヒネ様作用
3)加工食品、食品添加物をできる限りとらない:グルタミン酸、アスパラギン酸は代表的な興奮剤で、不安や怒りなどを誘発。また保存料は腸内細菌叢を狂わせ、またキレート作用によりミネラルの吸収阻害などを引き起こす。増粘剤は亜鉛吸収阻害。
4)マイルドな糖質制限:お菓子などの砂糖製品はできるだけ減らす。ご飯はOK。
腸治療の基本方針
1) 腸管リフォーム療法:治療回数:10回を基本(症状に合わせて増減)
2) 腸管内善玉菌移植療法:腸管リフォームの最後の1~2回を基本に行う。なお酪酸を混ぜると効果がアップすることが文献上わかっていますので基本併用とする。
3) ラジオ波(超音波)深部温熱マッサージ:腸管の血流改善・腸自律神経ニューロン刺激による自律神経調整・脳内の幸せホルモンオキシトシン、エンドルフィ増加作用など、脳―自律神経―腸という3本柱の治癒を目指す。さらに腸の温度上昇は、身体の全ての細胞の修復、整備を行うことができるHSP70を上昇させることができるため、これにより腸だけでなく、神経や脳の修復も可能にする。ストレスでお腹の症状が明らかに変化する、下痢と便秘を繰り返す、お腹が膨満するなどの場合は必須の治療と考える。
治療計画
腸管リフォーム療法・善玉菌移植療法・ラジオは温熱マッサージ:1クールの基本スケジュール
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1回 |
2回 |
3回 |
4回 |
5回 |
6回 |
7回 |
8回 |
9回 |
10 |
➀注腸 |
1~2回/ 週 |
1~2回/ 週 |
1~2回/ 週 |
1~2回/ 週 |
1回/2週 |
1回/2週 |
1回/2週 |
1回/2週 |
1回/月 |
1回/月 |
②善玉 |
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〇 |
〇 |
③ラ波 |
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1~2回/ 週 |
1~2回/ 週 |
1~2回/ 週 |
1~2回/ 週 |
1回/2週 |
1回/2週 |
1回/2週 |
1回/月 |
1回/月 |
4)サプリメント療法
基本血液検査及び有機酸検査(または総合便検査)を行うことで状況を把握して対応します。
➀腸管治療
②腸管細菌叢治療(除菌・除真菌)
悪玉菌が多い場合
カビ(真菌)が多い場合
*真菌対策の基本治療期間は2か月程度が目安となる。
IBSの治療においては必ず脳ー自律神経治療が必須であり、そのためには物事のとらえ方や考え方などのメンタル領域の改善が重要になります。またお腹を良い状態に維持するためには日常生活の取り組みも必要です。それらの方法はすべてを「下痢止めBOOK]に詰め込みました。必ず御一読ください。
以上が当院におけるIBSに基本治療です。
料金の概算としては、初診料+再診料 14,300、検査(血液検査:15,000~20,000・有機酸検査:55,000) サプリメント 50,000~70,000 腸管リフォーム(1クール)71,500のスタンダード治療で200,000~250,000程度。これに善玉菌移植1回(1兆個+酪酸 15,000)、メンタル的な要因が強い場合ラジオは温熱マッサージ(1回6,600)を行うと300,000~330,000程度かかることになります。ただしこれはあくまでも概算で、症状が軽い場合はこれより安くなりますし、経過が長かったり、症状が重い場合はもう少しかかることになります。あくまでも大まかな目安だとご理解ください。
SIBO(Small Intestinal Bacterial Overgrowth 小腸内細菌異常増殖)
聞きなれない病名だと思いますが、「お腹が張る」「お腹のガス」で苦しんでいる人はSIBOの可能性があります。
私達の「腸」は、「小腸」と「大腸」に分かれており、小腸は食べ物からの栄養を吸収、大腸はその残りかすから水分を吸収し便を生成する仕事を行っています。 この腸の中には、腸内細菌が多数いるのですが、その大半は大腸の中にいて、小腸内腸内細菌は大腸に比べると100万分の1以下の数しか本来存在しません。(小腸内細菌:10⁴個/μl・大腸内細菌:1010∼14個/μl)
なぜ、このようになっているかというと、小腸内は以下のように腸内細菌が増殖できないシステムを持っているからです。
しかし、上記システムの機能障害が起こると、大腸にあるべき細菌が小腸に入り込み、そのまま小腸にとどまって爆発的に増えてしまいます。 この増えすぎた腸内細菌は、食事を摂取することで大量のガスが発生します。この病態をSIBO(小腸内細菌異常増殖)といい、この現象により、ほんの少し食べただけでもお腹がパンパンに膨れて、消化管を中心に様々は苦痛症状が出現します。
症状1:消化管症状
なお、細菌だけでなく、カビが原因となる症例も2~3割くらいあるといわれます。
また、細菌が小腸内で過剰増殖すると、消化器以外の症状も出現します。
症状2:消化管以外の症状
なお健康と思われる人の腸を調べると、約31.25%がSIBOだったというデータもありますから、これは実は非常に身近で、そして見逃されている病気といえるのです。
SIBOと関連のある疾患
IBS(過敏性腸症候群)症例の50〜84%の症状の根本原因はSIBOである可能性が研究で実証されています。
なお、細菌の過剰な増殖を根絶することでこれらの症状は大幅に減少することが報告されていることから、IBSとSIBOは、片方がもう一方の病気を誘発するトリガーになっている可能性が考えられます。
また、SIBOは現在、酒さ(主に頬・眉間・鼻などの部位に、赤みやほてりなどが生じる慢性の皮膚疾患)や胃食道逆流、慢性難治性疼痛、中枢神経変性疾患など、数えきれないほどの病態の原因であるか、または関連性があると報告されています。
SIBOの原因
SIBOは、小腸の動きが止まって細菌が局所的に増殖しやすい環境になるときに発症します。SIBOの発症につながる可能性がある原因は多種多様です。
SIBO呼気検査
消化管内に生息する細菌は、糖質をとると、水素ガスやメタンガスを発生します。
通常は大腸にしかいないため、糖質摂取後、これらのガスが放出されるのは120分後以降です。しかし、本来存在すべきでない小腸内で腸内細菌が増殖すると、小腸内で糖質摂取に伴い、本来よりはるかに速い時間でガスを発生させます。
つまり、糖質摂取後の吐いた息(呼気)のガス分析を行うことで、小腸内に菌が増えているか、またその量はどれくらいかを判定することができ、それに伴いSIBOの診断および重症度がある程度推測されるようになります。
なお、呼気検査に加えて「有機酸検査」または「総合便検査」を追加が基本必須です。なぜなら現在「SIFO」の方が非常に多くなっているからです。
●SIFO
当院には「SIBOと診断されて治療したのですが、あまり効果がなかった」
と訴えてこられる患者さんが非常に多くいます。この中で多く見られる一つが、カンジダなどの真菌(fungus、カビ)の異常増殖が合併しているこことで起こる腹部膨満「SIFO」です。
SIBOが「Small Intestinal Bacterial Overgrowth:小腸内細菌増殖症」なのに対して「SIFO」とは「Small Intestinal Fungus Overgrowth:小腸内真菌増殖症」という概念です。
Dr. Ruscioらの研究によるとSIBOを疑わせる症状を伴う患者の小腸から内視鏡を使い腸液を採取し、培養検査を行ったところ、細菌の増殖に加えて、その約25%には真菌の異常増殖(SIFO)も伴っていました。
また、細菌異常増殖はないが真菌の異常増殖を認めたケースが20%あったと言います。
つまり真菌だけで見るとなかなか良くならない腹部症状のうち約40%に真菌の異常増殖があったということです。
細菌の異常増殖(SIBOS)と真菌の異常増殖(SIFO)では治療方法が異なるため、SIBO呼気検査に加えて、真菌の存在を見ることができる有機酸検査、または総合便検査を併用して鑑別をしておくことが必須と考えています。
SIBO治療
1)SIBO呼気検査で陽性
・低FODMAP食事療法スタート(最低2か月は徹底する)
2)除菌
呼気検査で悪玉菌が多いことがわかったら場合、抗生剤を投与します。
ただし、SIBOの場合、抗生剤が血中に入ってしまうと、副作用が出る危険があるため、腸管内の細菌だけに働く特殊な抗生剤(難吸収性抗生剤「リファキシミン」。96%糞便吸収¥14日間(または21日間)投与を基本にします。
菌数が多くない場合、逆に抗生剤のみで厳しいと判断した場合は、植物性抗菌薬も使用します。
●植物性抗菌薬
なお総合便検査を組み合わせると、抗生剤に加えて植物性抗菌薬の感受性も調べてくれるため、より正確な除菌が可能になります。
その他
消化酵素:悪玉菌や真菌が作っているプラーク(蛋白シールド)を破壊する
2-1)腸管リフォーム療法
交流磁気ベッドに横になりオゾン注腸療法を行う治療方法です。交流磁気治療ベッドの上で磁気を浴びながらオゾンを行うことで、交流磁気治療とオゾン治療が掛け算的な相乗効果となり大きな治療効果を発揮するこもれびの診療所オリジナル治療です。
(詳しくは腸管リフォーム療法をご覧ください)
3)除真菌
有機酸検査(または総合便検査)で真菌(カンジダなどのカビ)陽性がわかった場合(真菌が多いと二酸化炭素、アルコールからアセトアルデヒド放出されSIBOのような状態になる)は以下の治療をプラスしていきます。
・カンジダ除菌(おおよそ2か月)
なおカンジダ除菌中は免疫力が低下しやすいため、ビタミンDが足りない方は補充を行い免疫力をUPさせる。
注意1:体内に有害金属が多いことが判明した場合はまずは有害金属の除去を積極的に行います。なぜなら、体内に有害金属(特に水)が多いとカンジダ殺しにくいからです。
注意2:ダイオフ症状に注意:ダイオフとは治療時、死んだカンジダなど真菌の中にたまっている物質が一気に放出され、全身症状が出ることです。よって有害金属の多さを確認できた場合は、デトックス対応ミネラルであるケイ素を抗真菌対策薬内服後60~90分後に服用し、有害物質を吸着する方法をとります。
基本2か月程度 下記の項目を満たすことを目指します。
・カンジダ感染の症状(うつ、疲労、低血糖など)が改善されている
・砂糖、カフェインから離脱している
4)プロバイオティクス:抗生剤内服後に投与。消化管善玉菌群移植療法
SIBOの治療中は投与不可ですが、抗生剤等使用して、腸内細菌叢を破壊した場合、またはSIBO治癒した後に注意しながら利用します。
大切なのは「菌の多様性」と「数」と「バランス」であり、大腸のみに投与することです。
それをかなえるのが”腸管内善玉菌群移植療法”です。13種類(+酪酸などの短鎖脂肪酸)を大腸にのみ投与することで、腸管の安定を図ります。
なお、除菌したのにまだお腹の張りが続く、SIBO検査は陰性なのに腹部膨満がひどい、などの場合は以下のSIBO再発予防及び、脳-自律神経異常治療の方に進んでください。
SIBOの再発を予防する
SIBOは再発率が高いことが患者と医師双方にとっての課題です。
ある研究では、抗生物質による治療成功後、SIBOの再発率は3か月で12.6%、6か月で27.5%、および9か月で43.7%であることが示されました。臨床的には、一般的なSIBO再発期間は約2.5か月とされており、根本原因が治療されない限り再発までの期間はさらに短くなります。
よって、再発を防ぐために精一杯の対策をとりましょう。
1)食事管理を徹底する~低FODMAP食
FODMAPとは
F:Fermentable(発酵性)
O:Oligosaccharides(オリゴ糖)レンズ豆やひよこ豆に含まれるガラクトオリゴ糖と小麦やタマネギに含まれるフルクタン
D:Disaccharides(二糖類)牛乳やヨーグルトなどのラクトース(乳糖)
M:Monosaccharides(単糖類)果物のフルクトース(果糖)が代表
and
P:Polyols(ポリオール類)マッシュルームやカリフラワー、果物などに含まれるソルビトールやキシリトール
の頭文字をとったもので、つまり発酵食品及び腸管内で細菌を増殖させる4種類の糖類を少なくする食事を目指すということです。
通常納豆やヨーグルトなどの発酵食品は「腸に良い」とされていたものが悪いといわれると違和感があるかもしれませんが、消化管内に腸内細菌が増え続けて問題を起こしているSIBOの場合は、腸管内細菌を増やす食事は善玉菌であっても不可となります。
SIBOで目指すべきは低FODMAP食です。具体的には以下のようにモノになります。
(江田証著 専門医が教える お腹が弱い人の胃腸トラブルより)
簡単に言えば、小麦をやめて米中心の和食にする。ただし、和食のキーとなる大豆はオリゴ糖が多いため避ける、という感じです。
なお、低FODMAP食は少なくとも3か月以上続ける必要があります。なかなか困難かもしれませんが、一緒に頑張っていきましょう。
2)胃液減少により細菌の過剰な増殖を防ぐ
・消化酵素を含む食品(大根 パイナップル 塩麴 大葉)などをとる
・胃酸不足対策としてレモン水・大葉・紫蘇・ピクルス・梅など酸っぱい物をとる
・消化酵素、ベタイン塩酸などを摂取する
・胃薬の内服は安易に行わない:胃液に含まれる塩酸が細菌の過剰な増殖を防いでいますから、胃薬(プロトンポンプ阻害剤など)を安易に飲んで胃酸を減少させることは、腸内細菌を増殖させる危険がある。
3)胆汁酸・膵臓内の酵素減少による細菌の過剰増殖を防ぐ
・ウルソデオキシコール酸(UDCA)内服
4)小腸内免疫機能不全のよる小腸内細菌増殖を抑制する
・免疫アップビタミン、ミネラル摂取
・ビタミンD~血中濃度を測定し40ng/ml以上を目指す
・ビタミンC~免疫システムをサポートの主役。高濃度ビタミンC点滴療法が有名だが、通常内服も免疫アップには効果あり。ウイルス疾患に対する論文多数
・亜鉛~キラーT細胞は亜鉛と結合して初めて活性化。亜鉛濃度低下は感染症増加と相関との報告もあり
・マグネシウム~日本人のほとんどが不足とされる。300以上の酵素に関与。マグネシウムの有無が免疫力の増減に間接的に関わってくる
・セレン~世界最強ウイルスエボラ出血熱への対策でも活用されたミラクルミネラル。近年では抗癌ミネラルとしても注目
5)小腸下部の回盲弁閉鎖不全による大腸から小腸内への菌の侵入を防ぐ
・回盲弁:小腸と大腸の境にある弁で、小腸の内容物をよく留まらせ、細菌が多く含まれる大腸の内容物の逆流を阻止する
・大腸内のガス圧や、手前にある括約筋を自律神経が制御することで開閉
・便機能不全原因:自律神経失調、便秘など消化管蠕動運動異常、など
・閉鎖不全→小腸内に大腸より菌が逆流→SIBO発生
治療:ラジオ波深部温熱マッサージ
回盲部は自律神経が開閉を行う為、自律神経に問題がある場合、回盲部閉鎖不全が起こっていると考えられます。この場合、当院でお勧めするのが「ラジオ波温熱マッサージ」です。
ラジオ波と30MHz以上の高い周波数を持つ電磁波のことです。 体内に電磁波を流すと波長による振動が生まれ、細胞同士が摩擦して温熱作用を引き起こします。 これにより深部体温は上昇し、血行やリンパの循環を促し、便を含めた老廃物や水分の排出が良好になります。
更なる効果としては
➀ マッサージメリット:オキシトシン増加(オキシトシン:「愛情ホルモン」といわれる。抗ストレス作用強い)
② 深部体温上昇効果
・体内に熱源があるため、各細胞や内臓を最大3~7℃位まで上昇)
・ヒートショックプロテイン70(HSP)の増加(HSP70:ストレスに立ち向かい、損傷を受けた細胞を、ストレスがかかる前の状態に修復、整備する働き)
・内部体温上昇で休息状態に入り芯からリラックス
・エンドルフィン増加(エンドルフィン:幸せホルモンの代表格。自律神経を整えて幸福感をもたらし、心を平常に保つ「安定ホルモン」)増加
があげられ、これらの作用により自律神経が安定し、回盲部の閉鎖能力が改善することはもちろん、伝播性消化管収縮運動低下(腹部蠕動運動の異常)の改善も促してくれます。
*伝播性消化管収縮運動低下
SIBO検査は陰性なのに腹部膨満がひどい、また除菌したのにまだお腹の張りが続く、というのが非常によくある訴えですが、この理由は「脳―自律神経の異常に伴う腹部蠕動運動の異常」です。
この場合にも”ラジオ波深部温熱マッサージ”は高い効果を示します。
実際に腹部膨満治療(SIBO含む)において、”腸管リフォーム療法”に”ラジオ波深部温熱マッサー”を加えるようになり、一気に治癒率が上がりました。
腹部膨満はSIBOという小腸内に細菌が増殖している場合もありますが、SIBO陰性、または除菌したのに膨満が改善しない、という場合も多々あります。
これに対してこもれびの診療所では、様々な対応が可能になっています。
ぜひ、一人で苦しまず、こもれびの診療所にお電話ください。
一緒にお腹の張りのない、快適な毎日を目指しましょう。
●SIBO治療料金概算
料金の概算としては、初診料+再診料 14,300、検査(SIBO呼気検査:55,000 血液検査:15,000~20,000・有機酸検査まで行えば:55,000) 抗菌剤、抗真菌剤+サプリメント 50,000~70,000 IBSも併発している場合(SIBOを持つ人の86%はIBSも併発)は腸管リフォーム(1クール)71,500の、ラジオは温熱マッサージ(1回6,600 スタンダード 8回で約50,000)となる。よって一番安く済む場合は150,000程度、しかし多くは単純に除菌だけで終わる事は少ないため、プラスαで250,000~350,000程度かかることが一般的となります。ただしこれも症状や状況に応じて変化します事はご理解ください。
リーキーガット症候群(LGS)
リーキーガット(Leaky Gut)症候群は、腸管漏出、腸管壁侵漏、腸もれ などとも呼ばれており、グルテン、精製糖などの食事成分だけではなく、ストレスからも引き起こされる症状のひとつで、多くの疾患のベースにもなると考えられています。
■リーキーガット症候群とは
健康な方の場合には、小腸の粘膜上皮の細胞間にはタイトジャンクションと呼ばれる細胞同士を結び付けるバリアのようなものが形成されています。しかし、偏った食生活やストレス、糖質・グルテンおよびカフェイン・アルコールの過剰摂取、食物アレルギー(遅延型)などが原因でこの細胞間にわずかな隙間が開いてしまい、腸の内容物が漏れ出すことがあります。これが「リーキーガット症候群(腸漏れ)」と呼ばれている状態で、漏れ出たたんぱく質やウイルス、有害物質などが体内に入り込むことで、健康に悪影響を及ぼします。
具体的には、腸から漏れ出した栄養素や微生物、有害物質が体内に取り込まれ、それにより、体は様々な不具合が生じます。
・毒物が免疫をおかしくする~種々のアレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、リウマチなどの自己免疫疾患
・毒物が脳に溜まる~不眠、不安、攻撃的な行動、ぼんやりした頭、
・筋肉に溜まる~種々の痛み、慢性疲労症候群
・消化管の障害~腹部膨満、腹痛、下痢、便秘など
・腸管免疫が破綻する~何度もコロナなど感染症にかかるなど
・GLP-1分泌不全が起こる~本来は腸管内に糖が入ったときに出る物質です、リーキーガットは腸管粘膜が破綻しており、GLP-1が出ません。GLP-1は血糖値低下作用、食欲抑制作用があるのですがこれが破綻して、糖質をメインに多食し、体内の血糖値を上昇させてしまいます
(図:リーキーガット症候群が原因とされる疾患)
リーキーガット症候群の原因
*ちなみに品種改良により小麦のグルテン量は以前の40倍といわれる
リーキーガット症候群の検査
・腸管バリアパネル検査(リーキーガット症候群診断)および遅延型アレルギー検査
カンジダの原因物質となるゾヌリンをはじめカンジダ(カビ)、オクルディン(腸管上皮細胞同士をつなぐタンパク質で、腸管バリアの機能を保つ役割を果たす)、LPS(腸内細菌が産生する成分。LPSが腸管バリアを通過して血液中に漏れることで、免疫系が過剰反応し、慢性的な炎症が発生する)の抗体(IgG、IgA)、炎症物質(C3d)を測定して診断、同時に食べ物におけるリーキーガットの原因検索として、遅延型アレルギー検査を併用します。
なお補助診断として、総合便検査にてゾヌリンのみですが調べることが可能です。
リーキーガット症候群の治療
1) 腸管リフォーム療法:オゾン注腸療法+交流磁気治療をプラスしたもの
・オゾン注腸:➀腸管内血流促進作用、②活性酸素除去及び抗炎症作用、③免疫細胞活性・安定作用、④精神安定作用、⑤腸内細菌叢安定作用
・交流磁気治療:上記➀~④+自律神経調整作用
オゾン+交流磁気の相乗効果により、高い効果を目指す。
治療回数:10回を基本(症状に合わせて増減)
2) 腸管内善玉菌移植療法:腸管リフォーム及び腸内細菌叢の除菌・除真菌後に多種類の善玉菌を600万~2兆個までいれることで一気に腸内細菌叢の改善をはかる治療法。腸管リフォームの最後の1~2回を基本に行う。なお酪酸を混ぜると効果がアップすることが文献上わかっていますので基本併用とする。
3) ラジオ波深部温熱マッサージ:過敏性腸症候群において、原因において“脳―自律神経”の関与が大きいと考えられる場合は積極的に行う。
腸の温度を最大3~7℃位まで上昇させることで、腸管の血流を改善だけでなく、腸に5000万以上ある自律神経ニューロン刺激による自律神経調整、さらに脳内の幸せホルモンであるオキシトシン、エンドルフィを増加させ、脳―自律神経―腸という3本柱の治癒を目指す。さらに腸の温度上昇は、身体の全ての細胞の修復、整備を行うことができるHSP70を上昇させることができるため、これにより腸だけでなく、神経や脳の修復も可能にする。ストレスでお腹の症状が明らかに変化する、下痢と便秘を繰り返す、お腹が膨満するなどの場合は必須の治療と考える。
以上、IBS、SIBO、LGSと通常のクリニックでは扱わない腸疾患をメインに治療を行っています。なおIBSと診断された人の84%にSIBOが合併しているとの報告もあり、これらは混在している場合が非常に多いです。よって「お腹が張るからSIBOの検査」ではなく、一度受診いただき、どのような検査がベストかをご相談させてください。
●注意事項
■お腹外来で行います治療は医薬品医療機器等法上の承認を得ていないため、医療保険制度は使用できません。すべて自費診療となります。