有機酸検査(OAT)

    有機酸検査

    有機酸検査(OAT)とは、尿中に排泄されたヒトの細胞活動、食物の消化、腸内フローラの代謝副産物など74種の尿中代謝有機酸分子を測定・評価する検査方法です。

    日本で施行することはできず、生化学的検査・治療の進んだアメリカの研究機関にお願いして測定しています。

    この検査により、大別して12のことを診断していきます。
    実際の検査結果をお示ししながら、簡単に解説していきます。

     

    有機酸検査でわかること1:体の中のカビの存在

    有機酸検査

    これらの有機酸物が高い場合、カビの存在が示唆されます。

    例えば上の結果では3のグルタル酸、7のアラビノースが高値となっています。これにより以下と照らし合わせてカンジダの存在が示唆されることになります。

    有機酸検査

    ちなみにここで示されているカビの簡単な解説です。

    • カンジダ・アルビカンス:仮根を出して腸管を侵襲するためリーキーガット症候群の原因にもなる。砂糖を非常に好む性質がある。
    • アスペルギルス:自然界に最も普通にみられるカビ。醸造に使われるものから発がんに関わるものもある。
    • フモニシン:菌糸を出して増殖するカビ。体に大きな害を及ぼす毒素(マイコトシキン)を放出する。
    • マイコトキシン:特定の種類のカビから産生される有毒な代謝産物。マイコトキシン暴露により疲労感、頭痛、発疹、食物過敏症、関節痛、および咳などが出現する。

     

    有機酸検査でわかること2:腸管中の悪玉菌の存在~SIBOの可能性も判定

    有機酸検査

    10~14:悪性菌で上昇する
    14:良性菌でも上昇する。SIBOで上昇しやすい特徴を持つ
    15~18:クロストリジウム(特に問題になる悪玉細菌)により上昇する

    この症例では11が上昇していることより、カビだけでなく悪玉菌も多いことがわかります。腸内細菌の改善が急務であると推定します。

     

    有機酸検査でわかること3:シュウ酸の有無

    有機酸検査

    19のみ高い:原発性シュウ酸2型
    20のみ高い:AGT(補酵素B6 )機能低下
    21高い:シュウ酸の多い食事、真菌(カビ)の勢力拡大、善玉菌不足の可能性

    シュウ酸は、頭痛、筋肉痛、排尿痛、慢性外陰膣炎などの体調不良を誘発する物質です。善玉菌がシュウ酸を処理するため、悪玉菌優位の腸においてはシュウ酸が多いことも良く見られます。
    なおシュウ酸は水銀とくっつくためシュウ酸がある間はデトックスしても水銀が抜けません。まずはシュウ酸の多い原因を解消する(カンジダ・善玉菌不足など)ことが必要です。

     

    有機酸検査でわかること4:体内エネルギー産生機能チェック

    有機酸検査

    22から32までは体内でのエネルギー産生能力を見るものです。特に24以降はミトコンドリアの動きを見るために重要です。

    ミトコンドリアとは細胞内のエネルギー産生器官です。36兆個あるといわれる私たちの細胞内一つ一つに少ないもので100個、心臓や肝臓など仕事量が多い所では3000個もミトコンドリアが存在し、すべて集めると体重の10%を占めると言われています。人間が人間として活動するために、ミトコンドリアは最重要であり、ここに不具合が生じると、速やかに健康問題が生じる可能性が高くなります。
    ここに問題が見つかった場合、最重要ポイントとして治療を開始していきます。

     

    有機酸検査でわかること5:心の状態をチェック

    有機酸検査

    これらは体内の神経ホルモンの代謝産物を表します。
    ここにアンバランスがあると、不安や恐怖が強くなったり、イライラして自分の行動を制御できないなどの問題が出てきます。有機酸検査では、このように脳内ホルモンの代謝産物を見ることができ、またこれらのホルモンのアンバランスがある場合の対処方法もわかっているため、それらを調整することで、心穏やかな毎日のお手伝いにも役に立つ検査となっています。

     

    有機酸検査でわかること6:体の中の炎症の有無と脳機能をチェック

    有機酸検査

    これらは体内における炎症と神経毒の有無を見ることができます。
    38は、脳における幸せホルモン「セロトニン」の代謝産物であるため、これが少ない場合は、脳が不安定になっている可能性が示唆されます。
    39、40は感染・炎症がある場合に上昇し、又神経細胞の毒としての作用も持ちます。これらの上昇は、アルツハイマー型認知症・自閉症・うつ病・統合失調症などの増悪リスクにもなります。
    よって、炎症の原因(歯周病や上咽頭炎など)をより早く見つけ、速やかに対応しつつ、同時に神経毒から脳細胞を守るような対策が必要となってきます。

     

    有機酸検査でわかること7:メチレーション回路の状態

    有機酸検査

    メチレーションとはアミノ酸を変化させ体内で必要な物質を作ることです。よってメチレーションが上手く作動しなければ、体に必要なものが作れない状態になります。
    ここに問題が生じている場合は、核酸合成・神経伝達物質合成(ドーパミン、セロトニンなど)・解毒(環境ホルモン、有害金属など)・各種物質合成(Lカルニチンなど)・物質の分解(ヒスタミンなど)など体にとって必要不可欠な物質の作成などが滞っていることが示唆されます。
    この症例では39が上昇しており、メチレーションがうまく行われていないことがわかります。原因はこれまでの結果を踏まえると、カビの増悪によるメチレーション障害だと考えられます。カビは本当に体に様々な害を引き起こします。

     

    有機酸検査でわかること8:脂肪代謝力~痩せる力をチェック

    有機酸検査

    43・44はケトン体の上昇時に増加するため、これらが上がっている場合は脂肪代謝が進んでいることを意味します。この場合は糖尿病や極端な糖質制限を行っていないかのチェックが必要です。
    45~49は脂肪酸酸化物ですので、これが上昇する場合は、通常ミトコンドリア内で行われる脂肪酸代謝がうまくいってないことを意味します。つまり体質的に脂肪を燃やすのが苦手な身体なのです。ここでの問題を見つけたら、脂肪酸を燃やす手伝いをする栄養素の補給など行い、痩せやすい体を一緒に考えていきます。

     

    有機酸検査でわかること9:ビタミン量をチェック

    有機酸検査

    有機酸検査では通常の血液検査では見ることのないビタミン量をチェックできます。この症例はサプリメントをとっていることもあり、ビタミンB群、ビタミンCの量は、通常より多いことが示されています。

     

    有機酸検査でわかること10~デトックス力(毒だし力)をチェック

    有機酸検査

    ここでは解毒能力をチェックすることができます。症例において60が多くなっていますが、この場合アンモニアを処理する尿素回路が回っていないことが示唆されます。原因はいろいろあるのですが、腸内細菌のバランスの悪さが原因の一つとなっており、この症例もそれが原因と考えられます。

     

    有機酸検査でわかること11:タンパク代謝力をチェック

    有機酸検査

    ここは上昇のみが問題となります。上昇する際は先天的な代謝異常が疑われ、通常、ほどんどの人は正常な結果となっています。

     

    有機酸検査でわかること12:添加物の量・骨の状態をチェック

    有機酸検査

    現在の私たちがリン酸と接触する最大の原因の一つは「添加物」です。よって、ここが高い場合は、まず「加工食品摂取量の増加」がないかを考えます。
    それ以外には骨の代謝を上昇させる副甲状腺機能亢進や骨折、鉛汚染なども原因となり場合もあるため、上昇がみられる場合は、他の検査も併用しながら原因を検索する必要があります。

     

    有機酸検査を考えた方がよい人

    ・長く続く下痢・便秘 ・イライラや不安感などの気分変調 ・うつ症状 ・疲れやすい(副腎疲労・慢性疲労疑い) ・肥満・メタボ ・アレルギー症状 ・自己免疫異常 ・冷え性 ・睡眠障害 ・発達障害 など

    検査方法

    朝一番の尿を採取し、カップに入れて3時間冷凍保存した後、指定機関に送るだけです。なお、有機酸検査は米国の検査機関で測定されるため、検査結果が出るまでは約4週間ほどお時間をいただくことになります。

    検査結果

    全ての検査結果を上記の例で示したように、院長が解析、レポート化した上で、下記の内容を行います。

    • 検査結果の詳細な解説
    • 治療方針説明/生活指導
    • 食事指導
    • 必要時サプリメント、薬剤処方(サプリメント代等は別途)

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