腸管内善玉菌群移植療法(善玉菌カクテル注腸)
- 脂質やたんぱく質に偏った肉食中心の食事
- 睡眠不足、大量飲酒、運動不足などの生活習慣の乱れ
- 化学物質、食品添加物の摂取
- 抗生物質、胃薬など様々な薬品の使用
- 加齢(一般に60歳以降では善玉菌が極端に減少)
- 1種類のみを大量に投与すると、その菌は「バクテリオファージ*」という現象により腸内で失活してしまう。
- 健康な人の腸内フローラは不健康に比べて菌類バリエーション多い。
- 腸炎疾患があると、乳酸菌の菌種が極めて少なくなる。
- 600億プログラム:善玉菌群 乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌など13種類
- 1兆プログラム(推奨):乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌・土壌菌合計200種以上の微生物群
- 2兆プログラム(難治性便秘の場合):乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌・土壌菌合計200種以上の微生物群
- 腸壁の強化作用、腸透過性の低下作用などによるリーキーガット症候群の改善。
- 便秘・腹部膨満・下痢など腹部症状の改善。
- 腸内有害細菌抑制、腸内細菌のバランス回復など腸内フローラの安定
- 脳の成長ホルモンであるBDNF(脳由来神経栄養因子)増加による脳システムの改善
- キラー細胞活性化、免疫調整作用などによる免疫システムの改善
- 大腸粘膜上皮細胞のエネルギー源:上皮細胞はエネルギーを血液に頼らず、酪酸に依存(大腸粘膜上皮エネルギーの約60~80%は酪酸)しており、またバリア機能維持に使われる(Litvak Y, et al. 2018)
- 腸免疫力IgA抗体を増やす~大腸粘膜上皮細胞で作られるIgA抗体増加し、外敵から腸を守る
- 活性酸素除去:酪酸はKreap1-Nrf2系を刺激→抗酸化システム(グルタチオン、へムオキシゲナーゼ1など)を誘導→酸化ストレスから腸粘膜を守る
- 腸内酸素を消費し、酸素を利用する悪玉菌を減らす:酪酸によるエネルギー産生時酸素を消費する→酸素を好む好気性菌である悪玉菌減少+酸素を必要としない嫌気性菌の善玉菌増加。
- コロナ後遺症患者後遺症予防:酪酸不足はコロナ後遺症が多いと報告(Zhang F, et al. 2021)
- 制御性T細胞の分化促進し免疫の暴走を止める:酪酸→樹状細胞受容体と結合→制御性T細胞分化促進→免疫寛容(tan J, et al. 2016)。それにより膠原病、アレルギー体質を改善。実際・膠原病・潰瘍性大腸炎の人は酪酸が少ない・ミルク/卵アレルギーに酪酸が少ない、などが報告。(Zhang J, et al. 2017他)。またこれにより抗炎症効果発揮。
- B細胞自己抗体産生を抑制~SLEにおいて自己抗体を抑制し症状改善(Sanchez HN, et al. 2020)、関節リウマチ改善(Rosser EC, et al. 2020)
- マクロファージ(体内に侵入した細菌やウイルスを消化・殺菌する貪食細胞)改善作用:
・大腸粘膜マクロファージから炎症抑制サイトカインIL-10 を強力に誘導して大腸炎症を抑制(Hayashi A, et al. 2013)
・M2型マクロファージ分化促進作用により創傷治癒促進、腸管炎症促進作用が報告(Ji J, et al. 2016)。
・マクロファージの抗菌活性を高める遺伝子をONにする(Schulthess J, et al.2019) - 血糖低下作用改善:酪酸→腸管内分泌細胞GPR43受容体細胞刺激→GLP-1放出→胃(排出抑制~吐き気なども改善)・脳(食欲低下)・心(心保護作用)・脂肪(脂肪燃焼)・肝(脂肪肝抑制)・膵臓(インスリン増加し血糖値低下)(Jia L, et al. 2017 他)
- がん抑制遺伝子を活性化しがん予防に関与
・酪酸は遺伝子の発現調節に直接関与し、標的がん遺伝子の発現を抑制(Archer SY, et al. 1998)
・アポトーシス誘導、細胞増殖抑制、血管新生の抑制など(Fung KY, et al.2012)
・酪酸(クロストリジウム・ブチリカム=ミヤBM)が、大腸がん発生を抑制する効果が報告。また抗がん剤効果を高め、がん全生存率上昇の報告 - グアーガムとの併用:グアーガムは短鎖脂肪酸の中で特に酪酸を多く産生するこら、排便促進+抗炎症作用や感染予防効果が期待。水溶性食物繊維投与にてインフルエンザ感染抑制も報告(Trompette A, 2018)
- 脳の改善、成長:脳海馬や前頭葉で「BDNF(脳由来神経栄養因子)」を増加させ、脳の成長、健康維持、抗うつ作用を発揮(Tian T, et al. 2019)。ベルギーにて酪酸によりうつ病低下の報告(Valles-Colomer, et al.201988)。日本でも抗うつ薬に酪酸菌併用でうつ病の有効率が70%、寛解率35%アップの報告(Miyaoka T et al. 2018)
- 過敏性腸症候群に効果:
・酪酸:ムチン産生、タイトジャンクションを高め腸が改善
・プロピオン酸:大腸の粘膜から吸収され筋肉や肝臓、腎臓などのエネルギー源として利用
・酢酸:大腸環境を弱酸性に維持し悪玉菌増殖抑制。なお酢酸発生菌は水素をエネルギー源とする - SIBOでもOK:酪酸はガスを発生させない
このように酪酸は、論文ベースで非常に多くのメリットが報告されています。 - 600億:善玉菌群 乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌など13種類:10,000+税
- 1兆(推奨):乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌・土壌菌合計200種以上の微生物群:20,000+税
- 2兆(難治性便秘の場合):乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌・土壌菌合計200種以上の微生物群:30,000+税
- 酪酸追加:5,000+税
ヒトの腸管、主に大腸には約1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌群(腸内細菌叢や腸内フローラとよばれます)が生息しており、善玉菌、悪玉菌、中間菌(日和見菌)の3つのグループで構成されています。
腸内細菌の中で一番数が多い菌は中間菌で、次に善玉菌が多く、悪玉菌は少数で、これらの菌は互いに密接な関係を持ち、バランスをとっています。
しかし近年、以下のような影響により、悪玉菌や真菌(カビの一種)などが増殖し、腸内環境が著しく悪化していることが問題になっています。
腸内環境の悪化は、IBS(過敏性腸症候群)、SIBO(小腸内細菌増殖症)、LGS(リーキーガット症候群)などの消化管疾患はもちろん、自己免疫疾患、肥満、糖尿病、大腸がん、動脈硬化症など様々な疾患の発症にも関わることが報告されています。よって腸は、全身の健康維持にとっても必要不可欠な臓器といえます。
推奨検査
・総合便検査(+ゾヌリン検査)
・有機酸検査
などの検査により、まずは腸管内の状態を把握し、その後の治療方法を決定していきます。
こもれびの診療所における腸管内善玉菌群移植療法のポイント
「腸は人間にとっての木の根であり、すべての治療の基礎である」
これが医師としての長い経験で感じたことであり、また近年の多くの論文からの答えでもあります。
では腸をどのように改善に導くか? 注目した一つが糞便移植(Fecal Microbiota Transplantation: FMT)です。これは健康な人の便に含まれている腸内細菌を病気の患者さんに移植するという治療法で、腸から全身を改善させようとする画期的かつ可能性のある治療として注目されています。
しかし最大の問題は料金で、1クール6回、150万円前後という高額な治療費が、導入を躊躇させました。
ほかに糞便移植に変わる可能性のある治療はないか。
そこで出会ったのが「プロバイオティクス浣腸」でした。
これは、腸の専門家であり医学博士のDavid Perlmutter先生の提唱している方法で、善玉菌を直接大腸内に浣腸のように入れることで、腸内フローラの改善を図るというものでした。
私は「こらならFMTのような効果が狙えるのではないか」と考え、早速自分で試してみました。その結果、腸がとても喜んでいる感じがしました。さらに希望のスタッフと、同意してくださった患者さんにも試してもらったのですが、皆さん、お腹が今までと違う、とても良い感じがする、生まれかわった感じだ、とおっしゃってくれました。
私は、自分を含めた患者さんたちの感想や効果、またもちろんですが、安全であるこの治療に、高い可能性を見出しました。
なお、その後の経験により、David博士をベースにしながら、こもれびオリジナルとして2つのポイントを大切にしています。
ポイント1:菌の種類を増やす
当初5種類程度で始めた移植でしたが、現在ではビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌など合計14種もの善玉菌をカクテルにして大腸内に移植する方法を選択しています。
種類を増やした理由は次の通りです
以上を踏まえて、菌の種類は可能な限り増やして行っています。
*バクテリオファージ:多種多様の細菌のいる腸内細菌叢に1種類の菌のみ大量に入れると、その腸内細菌に対してのみ反応するウイルスが増えて、その菌は消去されるという現象。Killer the Winner仮説ともいわれる。
ポイント2:投与量を増やす
当初200億で始めましたが、現在では1兆~2兆個まで量を増やす選択肢を作りました。というのも約1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌に影響を与えるには、ある程度の量が必要であると考えたからです。
よって、投与量を3段階設定し、症状や状況を伺いながら、投与量や投与間隔などを個人の症状に合わせて行うようにしています。
善玉菌群の効果(論文より)
腸管内の改善
その他
ポイント3:酪酸を併用する
酪酸とは「酪酸菌」が食物繊維を発酵分解して作り出す 「短鎖脂肪酸」の一種です。
これまで「酪酸菌をとると体に非常に有益なことが起こる」ということは数々証明されていましたが、その理由が、酪酸菌そのものではなく、酪酸菌が作り出す「短鎖脂肪酸」であることが分かってきました。
酪酸菌が作り出す短鎖脂肪酸には、「酪酸」「プロピオン酸」「酢酸」があります。それぞれ有益なのですが、中でも「酪酸」は別格の素晴らしい効果があります。ここでは、その効果を論文ベースで紹介させていただきます。
酪酸の効果
酪酸摂取方法
これまで行われていた方法は「酪酸を産生する酪酸菌を摂取する」という方法です。その代表が、医療機関で処方される酪酸菌(商品名:ミヤBM)です。飲んだことのあるかたも多いのではないでしょうか。ただ、これには3点問題があります。
1)酪酸菌を腸に入れても、それが腸内で定着するとは限らない
2)定着したとしても、酪酸菌が活動しにくい環境であると、酪酸を作る出すことができない(酪酸菌を飲むような方は腸の状態が基本悪い方が多い)
3)保険で出される量がその人にとって少なすぎる
なのでミヤBMを飲んでも効く人も確かにいるのですが、効果を実感できないかたも少なくない、ということになります。
そこで近年考えられているのが、”外部で酪酸菌を培養し、酪酸菌が産生した酪酸を直接摂取する”、という方法です。
これは「酪酸をとる」という目的に対しては、もっとも効率の良い方法です。
ただし経口投与された酪酸は人にとって最高の栄養物質であるため、小腸でほとんど吸収される、つまり大腸には届かない、ということにもなります。
当院には、とにかくお腹の問題を抱えている人(大腸がん・潰瘍性大腸炎・IBS・SIBO・SIFOなど)が多く来られます。これらの患者様の場合、酪酸を届けたいのは”大腸”です。しかし経口摂取ではその大腸まで酪酸がとど来ない。
そこで考え出したのが酪酸を直接大腸に注腸する方法です。
「善玉菌群移植療法」に「酪酸」をプラスさせることで、直接大腸内に善玉菌(酪酸菌を含む)と酪酸を送り込むことで一気に腸管内細菌叢を最高の状態に導く、という方法で、私を含め非常に多くの患者さんたちに喜ばれており、間違いない方法だと確信しています。
「酪酸を直接腸内に入れる」という治療方法は、日本はもちろん世界でもほとんど行われていないと思います。
お腹で困っている方はぜひ「酪酸注腸」もご検討ください。
腸管内善玉菌群移植療法のやり方
こもれびの診療所では、腸管内善玉菌移植療法のみを行うことは稀で、腸管リフォーム療法と、善玉菌群移植療法のセットを基本にしています。
なぜなら、私は腸管を「腸内細菌が住む家」だと考えているからです。
腸内細菌の家である腸管が、活性酸素だらけで血流が乏しく、栄養がいきわたらない状況であれば、どれだけ腸管に善玉菌を大量に送り込んだとしても、そこに定着してくれることは困難であると考えるからです。よって、善玉菌の移植には、基本腸管の立て直しを行う「腸管リフォーム療法」を併用することを提案しています。
なお、善玉菌を肛門から投与するにあたり、大腸全てにいきわたらせるために、善玉菌群投与後、体をくるくると動かしながら肛門から上行結腸の入り口まで菌を逆流させる方法をとります。
以上にて、善玉菌群を大腸内にいきわたらせ、腸の安定を図ります。
治療間隔と治療回数
基本は腸管リフォーム療法と併用で行っています。
●腸管リフォーム療法:基本10回を1クール(状況良ければ5回)
●善玉菌移植は、腸管リフォーム療法で腸管内及び腸管周囲の状況改善をした後、最後の1回、または2回行います。
その後は状況を見ながらプラスする場合もあります。
副作用
大きな副作用を認めることは基本ありません。
ただし、腸の手術歴がある場合などは、慎重に問診を行い、場合によっては行えないこともあります。