高濃度ビタミンC点滴療法

    ビタミンC点滴療法

    ビタミンCは天然に存在する最も強力な天然の抗がん物質のひとつです。これは酸化を防ぐ抗酸化物であるうえに、摂取する量によっては逆に、酸化を促す酸化物にもなります。ですから、ビタミンCは体を治癒し、免疫システムを強化するだけでなく、がん細胞や病原性微生物の治療でも使用されます。

    この重要なビタミンCですが、人間は体内で合成できず、必ず外部から摂取する必要があります。それに対し、野生の動物は傷ついたとき、体内で普段の1000倍ぐらいのビタミンCを作り出します。それが傷の治癒を促します。私たち人間が病気になったり怪我をしたりしたとき、大量のビタミンCが必要なのですが、自分では作れないので、サプリメントや食物で外から摂取しなければなりません。

    特に、がんから回復するとき、体の免疫機能と修復機能を支援するためにビタミン Cが必要です。

    このビタミンC治療においては、「超高濃度ビタミンC点滴療法 出版」「希望の抗がん剤点滴ビタミンC 河出書房新社」などの作者であり、高濃度ビタミンC点滴の日本における第一人者であり、またがんの統合医療を専門とする私の前職「健康増進クリニック」の院長である水上治先生より、10年学んできました。

    現在、それを応用して、様々な疾患に利用しています。

    高濃度ビタミンC点滴療法の対応疾患とリスク

    がん対策
    副腎疲労対策
    美肌対策
    感染対策
    リスクと副作用

    がん対策

    ビタミンC点滴療法

    25gから50gと大量のビタミンC点滴によって、体に過酸化水素(H2O2)という活性酸素を発生させ、がん細胞を殺傷するというものです。

    ●がん治療としての高濃度ビタミンC点滴療法の特徴
    1)がん細胞を死滅させるメカニズムがある
    高濃度ビタミンC点滴療法には、後述のように複数の抗がん作用が存在することが報告されています。単独でどの程度の効果があるかについてはまだ十分なデータはありませんが、世界で行われているさまざまな臨床試験の結果から、少なくともがんに対し効果があることが報告されています。

     2)副作用が少ない
    多くの臨床研究で、高濃度ビタ ミンC点滴療法が安全であることが確認されています。
    国内でも東海大学血液腫瘍内科にて、再発悪性リンパ腫症例に対して、抗がん剤との併用で大きな副作用はなく、安全に行えることを報告しています。
    抗がん剤や放射線療法は、腫瘍細胞のみならず正常な細胞にまでダメージを与えてしまうというマイナス面がありますが、高濃度ビタミンC点滴療法は、この点においては従来のがん治療とは異なり、ほとんど正常細胞にダメージを与えることはありません。

     3)抗がん剤や放射線療法と併用可
    放射線療法を行った場合、程度の差こそあれ皮膚傷害はほぼ必発です。しかし、ビタミンCを併用することにより、その程度は軽減され回復も早まります。 また、抗がん剤を使用することで、病気に加え、見た目の変化が精神的な負担になることが多いのですが、ビタミンCは後述するように美容効果もあるため、そのような負担を少しでも軽減できる可能性により、併用する価値は十分にあると考えいます。ビタミンCは、ある種の抗がん剤の副作用を軽減する、抗腫瘍効果を高めるというデータもありま す。
    また、栄養状態や全身状態の低下を防ぐという意味でも大きな意味があります。栄養状態や全身状態の悪化は、抗がん剤の量を制限せざるを得ない原因になり、時には標準治療をスケジュールどおりに遂行できない原因にもなります。逆に言えば、栄養状態や全身状態を良好に保つことは、より強いがん治療(標準治療)を受けられる条件でもあります。高濃度ビタミンC点滴療法はその部分においては十分な貢献ができます。
    これも後述しておりますが、高濃度ビタミンCには、体内の天然ステロイドホルモン「コルチゾール」を産生する副腎の改善作用が確認されているため、このコルチゾールにより、抗炎症作用、血液中のカルシウムレベルを下げ、骨へのカルシウムの取り込みを促進するなどの改善作用も期待できます。 

    4)抗ストレス効果がある
    病気が与える直接的なストレスと、がんになってしまったという精神的なストレス、そして抗がん剤など治療が与えるストレス。がん患者さんは心身ともにストレス大量に抱えています。 ストレスは体内のビタミンCを消費してしまうため、さらに免疫力が低下し、ストレスにも弱い状態に陥ります。がんと闘う状況下では、健康なときより大量のビタミンCを必要としています。

    5)免疫力を高める
    ビタミンCには、白血球の食作用と遊走性、マクロファージの遊走性を高める、T細胞、NK細胞の増殖を亢進しその機能を調節するなど、さまざまな免疫の働きがあります。前述のようにビタミンCが不足した状態では、免疫力は低下し、感染症を合併しやすい、傷が治りにくい、などの問題が生じます。ビタミンCを補うことは、このような合併症を減らすことにもつながります。

    高濃度ビタミンC点滴療法の抗がん作用

    ビタミンCの抗がん作用につい でも数多くの研究が行われており、いくつかの抗がん作用が明らかになってきています。個々について少し詳しく述べたいと思います。

    1)細胞内酸化ストレス増加
    ・過酸化水素の誘導

    一日の摂取量が最大12.5グラムまでのときは、主に抗酸化物として、以下のような役割を果たします。
    1)フリーラジカルを除去し、DNAの保護
    2)結合組織の修復を助け、体の再生プロセスを促進
    3)免疫機能の最適化:がんと格闘するのに最も重要な免疫細胞のナチュラルキラー細胞を活発にする。さらに、免疫機能に関与する信号伝達インターフェロンを活性化する。
    しかしこれが12.5g以上の点滴投与になると、ビタミンCは酸化促進剤として天然の抗がん剤として作用します。なおビタミンC12.5g以上の投与は、内服では困難で、点滴により直接血中に供給しなければなりません。
    これにおいて有名な論文が2005年のNIH(アメリカ 国立衛生研究所)からの論文です。
    「抗酸化物質であるビタミンCを 大量に静脈内投与すると、むしろ強い酸化作用を誘導し、がん細胞を死滅させること、さらに正常細胞には何のダメージも与えないこと」
    ことが報告されました。 血液中のビタミンCが高濃度になると、強い酸化作用をもつ過酸化水素を誘導するのです。がん細胞はカタラーゼ(過酸化水素を中和することができる酵素活性)が低いという特徴があり、過酸化水素に攻撃されやすい環境にあります。一方、正常細胞はカタラーゼ活性が高く、過酸化水素による悪影響を受けにくいのです。 つまり、がん細胞を選択的に死滅させることが示されました。

    細胞内グルタチオン濃度の低下
    KRASあるいはBRAF遺伝子に変異のある大腸がんに高濃度ビタミンCが有効であるという論文が2015年に科学誌『Science』 に掲載されました。がん遺伝子KRASやBRAFの変異は、グルコーストランスポータ Glutlの量を増やします。 Glutlを介してがん細胞内に取り込まれた酸化型ビタミンCは、還元型グルタチオンの作用によって還元型のビタミンC に変換されますが、その際に、還元型グルタチオンが多量に消費されます。強い抗酸化作用を持つ還元型グルタチオンの枯渇により、 ROS産生が上昇します。その結果、がん細胞内の酸化ストレスが高まり細胞死に至るというメカニズムです。
    このメカニズムを検証し臨床試験(VITALITY試験)の結果が2022年に報告されています (Clin Cancer Res.28(19): 4232-4239, 2022)。
    転移性大腸がん患者の第一選択治療として、ビタミンC点静注+FOLFOX ± Bevacizumab療法と、FOLFOX ±Bevacizumab療法の有効性と安全性を比較する無作為化他施設共第Ⅲ相臨床試です。
    結果は次の通りでした。

    • RAS変異を有する患者はビタミンC群で無増悪生存期間が有意に改善しました(9.2ヵ月対7.8か月、P=0.01)
    • 化学療法に高用量のビタミンCを追加することがRAS遺伝子変異患者生存期間を延長する独立した因子であることが示されました。
    • 55歳以上ではビタミンC群の無増悪生存期間は対照群より長いことも確認されました。

    KRAS伝子の変異は大腸がんの40~50%にみられ、これらの変異がある場合、標準治療に抵抗性のことが多いことを考えると、高濃度ビタミンC療法はよい適応であると思います。

    2)HIFタンパク発現抑制
    東海大学血液腫瘍内科で行われたマウスを用いた研究で、血管新生に関わる分子(VEGF)を制御するHIFIαという分子の発現を抑制することに よって、腫瘍細胞の血管新生を阻害し、白血病細胞の増殖を抑制す るというメカニズムがあることが2013年に『Pros One』に報告されました。
    体内でがん細胞が成長するため には、酸素や栄養が必要となりますが、それらを供給するために新しい血管網が形成されることを血管新生といいます。 すでに標準治療でも血管新生を阻害することで、がんの増殖を抑制する分子標的薬が用いられていますが、高濃 度ビタミンC点滴療法には、同様の作用があることが少なくともマウスでは証明されたことになります。

    3)TET遺伝子の活性化
    ビタミンCが、 TETという選伝子を活性化することで、白血病進行を遅らせることができるという論文が、2017年に科学誌 『Cell』に掲載されました。TETはDNAの脱メチル化を促す働きがあるため、白血病だけでなく、 DNAのメチル化が発がんに関与するがんに対しての効果が期待でき、ビタミンCのTETを介した白血病や悪性リンパ腫に対 する効果については、その後もいくつかの論文で報告されています。

    4)コラーゲン合成
    ビタミンCによるコラーゲン合成の増加が、がんの浸潤や転移を抑制することが報告されています。

    現在でも米国を中心に、30ほどの大学病院やがん専門病院で膵臓癌、大腸がん、肺癌、乳癌、悪性リンパ腫などの臨床試験が実地されており、さらなるEBM確立が期待されています。

    抗がん剤や放射線など西洋医学治療との併用が可能で、安全に、そしてさらなるプラス面が続々報告されている高濃度ビタミンC点滴療法、ぜひ、がん治療における一つの選択として考えていただきたいと思っています。

    4)がん幹細胞に対する効果の可能性

    サルフォード大学(イギリス)の研究(2017年)です。
    ・ビタミンCは通常のがん細胞だけでなく、がん幹細胞(CSCCancer Stem Cells)も撃退することが示された。
    ・がん幹細胞は通常の化学療法では排除が難しいが、ビタミンCの高用量投与がこれを抑制する。
    ・ビタミンCががん細胞のミトコンドリアのエネルギー生産を阻害することで、細胞の生存能力を低下させる。(De Francesco EM, et al. 2017
    通常、抗がん剤ではがん幹細胞の処置は難しいと考えられていますが、これによりビタミンC点滴の可能性が示唆されています。

    ●ビタミンC点滴疫学報告

    ・約5000人の乳がん患者を対象にした4年間の追跡調査の結果、死亡リスクが13%減少、再発リスクが22%減少。これはビタミンCががん幹細胞の増殖を抑制したためと考えられる(Massey, 2017
    ・グリオーマ(悪性脳腫瘍)~医学雑誌 Neuroepidemiology 2015年に掲載された研究では、15の実験を分析した結果、ビタミンCの摂取がグリオーマのリスクを減少させることが示された。(Miller AB, 2014
    ・すい臓がんのリスク低減~オンライン学術誌 Scientific Reports2015年掲載)による17の実験のメタアナリシスでは、4827人のすい臓がん患者を対象に分析し、ビタミンCの摂取がリスクを軽減することが示唆された。(Morgan G, 2004

    ●治療回数
    がんにおいては基本的に週1~2回、最低合計30回が一つの基本となっています。
    量に関しては25g~75gの選択ができましが、近年はビタミンC点滴25gをベースに他の抗がん的点滴を併用することが多いです。

      副腎疲労対策

      ビタミンC点滴療法

      朝起きられない・夜眠れない・立ちくらみ・甘い物の強い欲求・性欲の格段な低下・アレルギー症状・集中力低下・神経過敏・慢性的な肩こり・筋肉痛

      これらの症状のうち2つ以上あれば、副腎疲労が疑われます。

      副腎とは、ホルモン産生臓器で、アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾール、性ホルモンなどを産生することで、血圧維持、血糖維持、免疫バランス、性ホルモンのサポート、体温の微調節、炎症を抑える、体内時計のコントロール、ストレスの抑制など多数の仕事をこなしています。そのためこの分泌がうまくいかなくなることで、上述の症状が出るようになります。

      これに対する治療として使われる一つがビタミンC点滴です。

      副腎は人間の臓器の中で最もビタミンCを必要とする臓器で、血管がレモン1個分のビタミンCを必要とするのに対して、副腎はなんとレモン150個分必要とします。
      よって、ビタミンCを点滴で投与すると、副腎に大量に取り込まれ、これにより副腎機能の改善が期待されるのです。
      投与量はがん治療の半分の25ℊ程度で十分と考えます。

      治療回数
      副腎疲労は食事を中心に様々な治療を組み合わせていくため、回数の設定は難しいですが、当院では1~2週間に1回程度から始め、その後数回行い、効果を判定したうえで継続するかどうか判断します。

      美肌対策

      私たちの肌が黒くくすんでいく最大の原因は紫外線です。紫外線により以下の機序で皮膚の状態は悪化していきます。

      • ①紫外線に暴露された皮膚は活性酸素種を生成、それに伴い炎症、酸化が発生、メラノサイト活性化因子放出が起こる

      • ②メラノサイト活性化因子によりメラニン産生色素細胞内のメラニン合成酵素チロシナーゼが促進、黒いメラノソームがどんどん生成される

      • ③黒く成熟したメラノソームが表皮へ大量移動していく

      • ④⑤成熟メラノソームが入り込むことで表皮細胞のターンオーバーが低下、また表皮細胞に居座ることでシミ・色素沈着がおこる

      ビタミンC点滴療法

      このような機序で悪化した皮膚を助けてくれるのがビタミンCです。
      ビタミンCは

      • 1)炎症、酸化、メラノサイト活性化因子放出に対して抑制作用
      • チロシナーゼ活性を阻害

      という2つの機序阻害作用を持ちます。
      以上より、ビタミンC点滴は美肌に非常に寄与する点滴となっています。

      治療回数
      25ℊを投与します。
      回数は多い方が効果は高いですが、金銭的なものもありますので、その他のものと組み合わせながら状況を見て判断します。

      感染対策

      ビタミンCは風邪に効く、と聞いたことがある方は多いかもしれません。
      それらの根拠となっている論文をいくつかご紹介致します。

      1. ビタミンCの摂取量を増やすと、ウイルスなどをやっつけてくれる白血球の遊走性が亢進する(アンダーソン 1981、1982)
      2. ビタミンCの摂取量が多い程、風邪症状が軽減する(Douglas 30のスタディレビュー 2000)
      3. 1日3回、1000㎎のビタミンC摂取、風邪症状が出たら1日6回ビタミンCを摂取したグループは摂取しなかったグループに比べて85%風邪症状が減少した(Gortonの二重盲検試験 1999)
      4. 重症の敗血症の患者に対し➀従来の治療、➁従来の治療+ビタミンC点滴併用、の2つのグループで比較検討した。その結果➀の院内死亡率40.4%に対して、➁のビタミンC併用グループの死亡率は8.5%と大幅に減少していた(イースタンバージニア医科大学救命救急医療部)

      これらを踏まえ、感染症に対して、ビタミンCは非常に期待できる治療と考えます。

      治療回数
      通常は内服で対応します。感染の症状が強いときなどは点滴をご提案いたします。

      注意事項(免責事項)

      • 医療広告ガイドラインに基づく表記
        本ページの内容は、一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患に対する診断・治療を保証するものではありません。
      • 医師の判断を優先してください
        高濃度ビタミンC点滴療法は、補完的な健康サポートを目的としたものであり、医療機関による診断や標準治療の代替を推奨するものではありません。治療を受ける際は、必ず医師の指導のもと適切な治療方針を検討してください。
      • 個人差について
        高濃度ビタミンC点滴療法の効果には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。また、当院では治療の結果について特定の効果をお約束するものではありません
      • エビデンスに関する説明
        本ページで紹介されている内容は、国内外の研究報告をもとにした情報提供を目的としていますが、日本国内における医薬品としての承認を得たものではなく、医療保険制度の適用外となり、自費診療での提供となります。
      • 他の治療との併用について
        本療法は、従来のがん治療(手術、化学療法、放射線治療)と併用することで、補助的な役割を果たす可能性があります。従来の治療を自己判断で中断せず、医師と相談しつつ適切な治療の一環としてご活用ください。
      • 副作用・リスクについて
        薬剤に関係なく点滴治療として針を静脈に穿刺するので、局所出血や感染の可能性があります。なおアレルギーに関してはビタミンCそのものはすべての人間の体内にあるものですから非常に起こしにくいとされます。ただし、原料がトウモロコシであり、トウモロコシにアレルギーがある場合、湿疹が出る人が1000人に2~3人程度いると考えられていますので特に初回は注意しながら行います。

      注意すべき人

      1)むくみなどある人
      ビタミンC製剤の中にナトリウムが入っているので、むくみや腹水、胸水のある人は悪化する恐れがあります。
      心不全、腎不全、著明な胸腹水など、水分負荷が全身状態の悪化につながる場合、ビタミンC療法は行えません。

      2)糖尿病にて簡易血糖測定器を使っている人
      ビタミンCは糖と分子構造が類似しているため、簡易血糖測定器(指を小さな針でパチッと突き少量の血液で血糖を見るタイプのもの)で測定すると偽高血糖(血糖を上げるわけではありません)を示すことがあります。またその効果は投与後8~12時間程度続く場合があります。
      よってC投与後12時間は簡易血糖測定器では正確な値は見ることができないことをご理解ください。
      なお、簡易血糖測定器ではなくヘキソキナーゼ法(病院で採血にて行うタイプのもの)なら正確な測定は可能です。

      必要検査項目

      G6PD検査(検査の項目をご覧ください)

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