副腎疲労症候群検査~唾液中コルチゾール検査(+ Cortisol Awakening response:CAR)

    幹細胞上清療法

    副腎疲労の検査は通常、日内変動の変化を読み取るために1日4回(8時・12時・16時・24時)唾液をとり、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールを測定する、というものです。
    しかし現在、これだけでは副腎機能の本質をとらえていない、隠された副腎疲労を見逃してしまう、という事がわかってきました。
    なぜなら、副腎機能を見る時は、脳の働きを見ることも必要だからです。

    副腎と脳の関係

    副腎(adrenal gland)ホルモンのコルチゾールは副腎の判断で勝手に出ているわけではありません。脳内にある視床下部(hypothalamus)と下垂体(pituitary gland)により緻密にコントロールされています。
    例えば、過剰な糖質摂取→急激な高血糖の後に来る急激な低血糖、という負荷が体にかかると、脳の視床下部は低血糖を補正しようとして、「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)」を迅速に放出します。それにより脳下垂体が刺激され「副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)」が分泌、その結果「副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)」は副腎皮質を刺激して血糖改善ホルモンである「コルチゾール」を分泌します。

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    それ以外にも、ストレスがかかったとき、血圧が低下したとき、温度が下がったときなど、生命の維持に関わるときは常にこの視床下部―下垂体―副腎の連なる生命維持装置が働き、コルチゾールを間断なく速やかに放出してくれます。
    言い換えると、これらは独立分離することはなく、つねに連動して働いています。よってこれらの指揮命令系統を視床下部(Hypothalamus)、下垂体(Pituitary)、副腎(Adrenal)の頭文字をとってHPA軸(Hypothalamic-Pituitary-Adrenal axis)と呼んでいます。
    このHPA軸によりコルチゾールの放出がコントロールされ、覚醒時に十分なコルチゾールの分泌を行い、夜にかけて低下させていくという日内変動をおこし、毎日の生活を快活に、元気に過ごせるようにコントロールしています。

    しかし、長期にわたり繰り返される低血糖、強いストレス、炎症などを受け続けると、HPA軸機能が不安定となり、コルチゾールの分泌バランスが崩れ、副腎疲労症候群(副腎疲労、アドレナル・ファティーグ)を引き起こします。この副腎疲労により、慢性疲労症状、うつ症状、不眠、ストレスに耐えられないなど、さまざまな症状を感じるようになるのです。
    このような症状で苦しんでいる場合に、その原因検索のために行われてきたのが、「唾液中コルチゾール検査4回法」です。
    これは唾液から分泌されるコルチゾール量を測定するもので、採血などに比べて検査にかかるストレスが少ないため、ストレスに影響されやすいコルチゾールの値を知るためには有効な方法となってきました。
    ただし、これはあくまでも副腎からでるコルチゾールの日内変動のみを追ったもので、脳の影響によるHPA軸障害による副腎疲労症候群を見つけることはできません。これを調べるためには、これまでの起床直後に加えて、起床後30分、60分の2回をプラスした6回測定法が唯一の方法となります。
    なぜ、起床後から3回連続の測定をするかというと、それによりCortisol Awakening Response(CAR)を測定することができるからです。

    CARとは朝の覚醒後30~45分後にコルチゾール放出のピークを迎える反応のことです。
    これは「CARコルチゾール覚醒反応」とも呼ばれるもので、通常、光刺激を受けた脳の視床下部及び下垂体は副腎にコルチゾール放出の指示を出します。
    健常人の場合、起床から30分で35%以上コルチゾール放出量が増えます。これに対して、HPA軸障害に伴う副腎疲労症候群の場合、CARコルチゾール覚醒反応の低下、つまり脳の反応低下により副腎を刺激するホルモンが出ず、それにより副腎疲労症候群を起こしている、ということがあるのです。わかりにくいと思うので実際の症例でご説明いたします。

    40代男性、20年以上続く強い疲労感のある唾液検査

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    上記の場合、通常の4回コルチゾール検査では、「Wake(8:00)」、「Middy(12:00)」 「Afternoon(16:00)」、「Evening(24:00)」に測定することになるため、normalラインである緑に基本入っていますから「異常なし=副腎疲労症候群ではない」と判定される危険があります。
    しかしCARを加わることで朝の反応の悪さをとらえることができましのたで、これにより、HPA軸障害があることが判定できて います。
    ちなみに今回のように「CARの低下のみで、日中リズムは正常タイプ」のHPA軸障害による副腎疲労症候群は、PTSD・燃え尽き症候群・季節性うつ冬季タイプ・寝不足・長期ストレスなどが原因とされます。よって後述する通常の副腎疲労の対策に加えて、これらの原因に対する改善対策も必要となってきます。

    それ以外に
    ・CAR,日中リズム共に上昇しているパターン
    ・日中リズムが夕方に上昇しているパターン
    ・全日で低下している状態
    などのタイプがあり、それぞれで原因が異なるため、その都度対応していくことになります。

     

    DHEAS

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    当院で行う唾液検査はDHEASの測定も行えます。

    DHEASは「デヒドロエビアンドロステン:Dehydroepiandrosterone」といわれるもので、欧米などでは『若返りのホルモン』として注目されています。
    DHEASもコルチゾール同様副腎で作られ、・免疫力を高める・脂質異常症・動脈硬化を予防する・筋力を維持する・代謝を高める・ストレスを軽減する・性機能を向上させる・認知機能の衰えを防ぐ、などの効果が期待されています。

    なお、DHEASは30歳から急激に減少し、最近では、この減少が老化に関与しているといわれていますし、副腎疲労症候群の場合、このDHEASの低下が症状の悪化に拍車をかけている場合もあります。よってこれも測定し、不足がある場合はDHEASの補充なども、必要な治療となってきます。
    この対策を加えることにより、副腎疲労症候群時に見られる症状回復を早めることが可能となります。

    治療計画

    • 基本的指針~日常生活の改善
      HPA軸障害にともなう副腎疲労症候群の基本的指針としては、コルチゾール分泌異常を起こす4大原因、①慢性炎症、②慢性の血糖の乱高下、③慢性ストレス、④慢性の夜更かし、の改善ということになります。
      これはどのタイプであっても基本必須の治療項目となります。
    • 応用的指針~HPA軸機能回復計画
      HPA軸(脳・自律神経・副腎システム)障害のパターンにより、どこをメインに改善していくかを検討します。
      当院ではYNSA®、低周波治療、Vielightなどの治療があり、これらを組み合わせて対応していきます。
    • DHEASの不足がある場合
      上記1~2の治療によりDHEASの改善も見られることが少なくありません。しかし疲労症状が強く、DHEASも明らかに不足している場合は、DHEASの補充を行う場合もあります。
      ただしDHEAは筋肉に働きかける作用もあるためオリンピックなどではドーピング検査の対象となりますから、運動選手は接種に注意してください。

     

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