低周波鍼通電運動療法(Electrical Acupuncture Kinesitherapy: EAK)
低周波鍼通電療法(以下EAK)は、リハビリ認定医(専門医制度以前)である永山隆造先生が片麻痺改善のために開発した治療法です。
麻痺がおこっているターゲット筋肉、及び神経を特定し、その部位に鍼を刺し通電することで、麻痺を改善させるような動きを自動的に行わせる、というものです。
例えば、脳卒中後の片麻痺で、肘関節、手関節、すべての指関節が屈曲し、固まってしまっている(拘縮位)場合、EAKでは、橈骨神経近傍に屈曲改善電気刺激を行います。
それにより、
伸筋群の活動を高める→伸筋群の活動亢進により拮抗筋である屈筋群の緊張を低下させる→上肢の運動機能改善
という現象を引き起こします。
なお、この技術は麻痺側の下肢、躯幹、顔面など、起こりえるすべての麻痺に対してターゲット筋肉、神経が決められているため、種々の麻痺治療に応用可能となっています。
EAKを用いたリハビリ
EAKの電気刺激は、連続ではなく、筋肉の収縮、弛緩を繰り返し行わせる非連続刺激となっています。これにより、麻痺側のターゲット筋肉は「曲げる・伸ばす」の動作を自動的に繰り返すことが可能となります。
当院では、この自動運動中に、「曲げる⇔伸ばす」と意識的に繰り返してもらうリハビリを併用します。繰り返し動作と意識を連動させると、大脳から脊髄までの神経回路の再建・強化が起こるからです。つまり、EAKを使って、筋肉のアンバランスの修正および、脳神経の再構築を行うのです。
さらに、痙性筋群の減弱、弛緩伸筋群の潜在筋力の強化、拮抗筋の協調性の改善作用により、通常行っているリハビリが行いやすくなります。また、これまで動かなかった筋肉が自動運動により伸展する姿は、リハビリテーションの動機づけとなり、意欲も出てきます。
以上よりEAKはリハビリテーション促進のツールともいえます。
その他EAKのメリット
EAKは上述したメリット以外にも、
・筋肉運動による末梢血行障害の改善
・麻痺に伴う痛み・しびれなどの鎮静
・片麻痺の廃用性萎縮の予防及び回復
なども期待できます。
以上より、当院では、EAKはYNSAと並ぶ脳卒中後遺症改善のカギとなる治療方法となっています。
リスク(注意点)
鍼治療や点滴療法と同様ですが、EAKも体に鍼を入れるため
①血管の損傷 ②神経の損傷 ③感染のリスク
があります。
よって解剖学的知識を念頭に刺鍼に最大限注意し、また感染対策として、消毒、ディスポーサブル手袋装着など、感染対策は徹底して行っていきます。
EAK施術の禁忌
*ペースメーカー埋め込みのある方
*高度な不整脈のある方
*熱のある方