補陽還五湯
こんにちは。
あっという間に桜も散ってしまい、初夏の香りが強くなりましたね。
皆さん、お変わりございませんか?
今日は、脳卒中で使われる漢方薬、「補陽還五湯」について、ご紹介致します。
脳卒中の漢方治療において大切になるのは「気虚」と「瘀血」の改善です。
よって、この二つの概念について少し説明をさせていただきます。
●気虚(ききょ)
気は、一種のエネルギーです。
そのため、重労働や激しい運動をしたあとには、だれでも一時的に気が不足した状態になります。
それでも、きちんと食べて、よく眠れば、翌日には自然に気が回復するはずですが、過労が続くと、気の回復が遅れ、慢性的に気が不足した状態となってしまいます。それを「気虚」といいます。
東洋医学では脳卒中を気の不足ととらえます。特に脳卒中後の半身不随側は、エネルギーの極端な不足により動かせないと考えます。
よって脳卒中後の治療としては、まずこの「気虚の改善」が望まれます。
●瘀血(おけつ)
「瘀血」とは、「血液の粘度が高くなって、血の流れが悪くなった状態」を表現した言葉です。脳卒中の病態が、ドロドロになった血液が血管中で詰まることであるため、「瘀血の解消」は必須の治療指針となります
●補陽還五湯
ここで登場するのが「補陽還五湯」です。
不足した気を0から5に回復(還五)させ、血液の流れを改善させながらエネルギー「陽」を入れる(補陽)、という意味で名付けられた処方です。
配合生薬を見てみるとその方向性が良くわかります。
・黄耆(おうぎ)~消化吸収機能を高めて気を補い、気を強化。気虚改善のために最も利用される生薬。
・当帰~血を補うとともに、血を循環させて瘀血を除去する。鎮痛作用も持つ。
・川きゅう、芍薬、桃仁、紅花~瘀血改善効果を持つ代表的な生薬。止痛作用があり。
・地竜~血流を改善し経絡の流れをよくする。地竜の主成分のみを集めた「ルンブルクス・ルベルス」の併用でさらに高い効果が期待できる。
*補陽還五湯の効能まとめ~血を流す原動力となる気を大量の黄耆で補い、少量の活血薬で血を通し、さらに地竜で血の通り道である経絡を通す組成(補気活血通絡)であり、通常の保険診療では使うことのできない脳卒中後遺症にとっておきの処方となります。
出典:王清任『医林改錯』
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