腸内細菌とアレルギーの関係
2001年、医学雑誌『ランセット』に、妊婦にプロバイオティクスを与えてその腸内環境を改善することが、生まれる子どものアトピー性疾患にどのような効果を及ぼすかを調査したフィンランドでの研究が掲載されました。
研究ではまず159名の妊婦さんを出産数週間前から出産後6カ月が過ぎるまで、ラクトバチルス・ラムノーサスGGと呼ばれる乳酸桿菌を飲ませるグループと飲まないグループに分け、生まれた子どもが2歳になった時点のアトピー性皮膚炎の発症を見たものです。
結果は、乳酸桿菌を飲んだ母親から生まれた子どもは、飲まなかった母親から生まれた子どもに比べてアトピー性皮膚炎の発症率が約半分であったことがわかりました。
さらに、4歳時、7歳時においても乳酸桿菌を飲んだグループの子どもはアトピー性皮膚炎の発症が抑えられており、その効果が長く続くことも実証されたのです。
少し古い論文なので申し訳ないのですが、お腹の状態がアレルギーに影響を与えるという視点では意味のある論文だと思います。
ではなぜ、アレルギーと腸内細菌がかかわるのでしょうか?
●免疫とアレルギー
普通、健康な人では、免疫機能の一つ、ヘルパーT細胞の一型(Th1)とヘルパーT細胞の2型(Th2)のバランスがとれていると考えられています。ところが、アレルギーの人はTh2のほうが優位傾向にあり、それに加えて、Th2が放出するサイトカインには肥満細胞を増やす作用もあるため、ますます肥満細胞が増えてアレルギー症状を起こしやすくなっていることが分かっています。
これに対して研究によりビフィズス菌にはこの1と2のバランスを調整する作用があることが明らかになってきました。その鍵となるのが、TLR(トールライクレセプター=トール様受容体)です。
TLRは近年発見されたもので、自然免疫を担う樹状細胞やマクロファージなどにあるレセプター(スイッチみたいなもの)です。腸内にビフィズス菌が入ってくると、腸管上皮細胞の樹状細胞やマクロファージにあるTLRは、ビフィズス菌であることを認識して主にTh1を誘導させるようなサイトカインを放出します。つまりビフィズス菌がTLRを通じて、Th1とTh2のバランス調整を働きかけ、さらにバランスを維持しているようなのです。
以上がすべてではもちろんなく、今回の研究結果は腸内細菌叢の改善がアレルギーの体質改善にかかわる機序の一つだとは思っています。
ただ、今までアレルギーには善玉菌がいいんだと、といわれていた中で、近年その理由がどんどんと証明されるようになったのはとてもよいと思っています。
アレルギーのある場合、特に腸活は必要となります。
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