機能性ディスペプシアには六君子湯はベターで香砂六君子湯がベストです

      2023/09/09

機能性ディスペプシアとは、胃の機能が正常であるにもかかわらず、慢性的な上腹部不快感や痛み、膨満感、吐き気などの症状がある状態を指します。

メンタルや心理面が影響すると考えられており、ストレスや不安、うつ病などの精神的な状態が機能性ディスペプシアの発症に関与しているとされています。

ストレスは、交感神経の興奮を引き起こし、胃の運動を制御する迷走神経とのバランスを崩すことがあります。その結果、胃の運動が遅くなったり、逆流したりして、機能性ディスペプシアの症状が引き起こされます。

不安やうつ病のような精神疾患により、脳内物質であるセロトニンやノルアドレナリンなどの分泌が乱れることがあります。これらの物質は、胃の運動や消化液の分泌を調節するために重要な役割を担っています。そのため、精神的な状態が悪いと、胃の働きが乱れ、機能性ディスペプシアの症状が出やすくなるとされています。

また、機能性ディスペプシアの症状が長期間続くと、心理的なストレスを引き起こすことがあります。これにより、さらに症状が悪化するという悪循環に陥ることがあります。

以上のように、メンタルや心理面が機能性ディスペプシアの発症や症状の悪化に影響していることが知られています。そのため、治療においても、ストレス管理や心理的なアプローチが必要な場合があります。

 これを踏まえて、機能性ディスペプシアの西洋医学的治療薬「アコファイド」と東洋医学の「六君子湯」がスタンダード的に使われますが、今回は特に「六君子湯」にフォーカスを当ててみます。

六君子湯はとても良い薬なのですが、機能性ディスペプシアにさらに効果のあるのは「香砂六君子湯」です。

「六君子湯」と「香砂六君子湯」は、名前が似ていますし、実際構成成分の7割は同じです。

では何が違うのか?それは香砂六君子湯は、六君子湯にさらに、メンタル面の視点により胃腸機能の改善を施している点が挙げられます。

  • 香砂六君子湯の魅力

「六君子湯」は、人参、茯苓、白朮、陳皮、半夏、甘草、生姜、大棗の8種類の構成生薬からなります。主に脾胃虚弱、食欲不振、下痢、脱力感などの症状に用いられます。

一方、「香砂六君子湯」は、六君子湯に香附子(こうぶし)藿香(かっこう)縮砂(しゅくしゃ)の3味を加味した処方となっています。六君子湯の方意に、加味した3味は共に胃腸の機能を高め、気分の塞さがりを開く働きがあり、六君子湯に理気(メンタル・精神)作用を加えた処方といえます。

つまり、「香砂六君子湯」は、胃腸機能の改善に加えて、気のめぐりを促進する効果があります。

■2つの“香”と縮砂

六君子湯から香砂六君子湯になるときにプラスされた2つの香「香附子藿香」と「縮砂」は東洋医学的には以下のような力を持ちます。

藿香:芳香燥湿~芳香性があり、アロマのようにリラックスさせる力を持つ。また湿(湿気が多い、水分のとりすぎなど)に起因する食欲不振、 胃腸の不快感、 嘔吐、下痢などに効果。

・香附子:疏肝理氣~気滞(「気」の巡りが悪く停滞している状態。自律神経系の緊張やコントロールができなく不安定な傾向。精神的ストレスでイライラ、不安、憂鬱感などを感じやすい)による胸脇や胃部の痞え感、張り、げっぷ、食欲不振に効果。

・縮砂:醒脾和胃~”醒”とは、酔いや眠り、迷いなどから解き放たれてすっきりする様子で、「覚醒」の”醒”の意味。胃腸機能の低下による胃部膨満感、腹痛、胃腸の冷え、食欲不振、嘔吐、下痢などを覚醒させ元に戻す作用がある。また迷い、不安、苦しみに伴う神経性の胃腸炎も覚醒し改善させる。

  • 機能性ディスペプシアは胃の病気ではなく自律神経、脳の疾患ととらえる

機能性ディスペプシアの症状は胃ですが、本質は自律神経と脳です。

そういう視点で考えたとき六君子湯の中に陳皮・半夏・枳実を入れているのは素晴らしいです。なぜならこれらは、漢方の世界では「気(現在風に言えばメンタルや精神)」の治療薬としても使われる代表的な生薬だからです。

その特徴を簡単に示すと、消化機能改善作用のほかに

・陳皮:神経を落ち着かせ、リラックス効果を高める

・半夏:気の滞りを改善し、神経を鎮め、不眠や焦燥感を和らげる

・枳実:不安や緊張を和らげ、神経を鎮める効果

などの精神を安定させる作用です。
だからこそ、胃に効果のある漢方はあまたある中で、機能性ディスペプシアに対して六君子湯が選ばれているのでしょう。

さらに香砂六君子湯は、湿に対処する 「藿香」、全身を調える「香附子」、 醒脾和胃の良薬である「縮砂」が加わることで、胃腸が弱く食欲がない・胃部がつかえる・高温多湿が苦手で体がだるい・口中が粘る・ストレスで膨満感や胃痛や腹痛を起こしやすい等、種々の問題を抱える現代の機能性ディスペプシアにもってこいの処方構成となっています。

倦怠感や不眠 メンタルの不調を訴えながら、機能性ディスペプシアのように脾胃の機能低下が関連している場合、香砂六君子湯は、攻補のバランスがよく、おすすめ漢方薬と考えています。

 

 

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