オゾン療法 〜さまざまな適用法と適応疾患〜

   

オゾンは、日本ではほとんどご存知の方はおりませんが、ヨーロッパでは長く国際学会・会議が行われており、世界各国から多数が参加し、熱意のある討論が行われています。
コロナ対策の現状と同じように、日本と世界とではオゾン療法の社会的地位や認知度にずいぶん差があると感じます。
なお、この学会の全体として強調されているのは、オゾン療法は EBM(evidence-based medicine、根拠に基づく医療)である、ということです。
2017 年開催オゾン療法学会ヨーロッパ共同体主催(EUROCOOP)のベルリンオゾン療法会議の副題が「OZONE IN MEDICINE / EVIDENCEBASED MEDICINE OF THE LOW-DOSE OZONE-CONCEPT」であったことにも表れています。
オゾン療法はドイツを中心としたヨーロッパで発展し、100 年超ともいわれる歴史の中でさまざまな疾患を抱える患者さんたちに実施されてきました。しかし、一つの治療法が多種多様な疾患や病態に対して効果を発揮するという事実は、ときにあらぬ誤解を生じさせる原因ともなります。ましてや作用機序がよくわからないとなればなおさらで、西洋医学に従事する医師たちがオゾン療法に対して抱く感想は、一昔前までは「効果はあるのかもしれないが、なにやら怪しい治療法」というものが大半だったようですが、近年オゾン療法の作用機序解明が大きく前進したことで、EBM としてのオゾン療法がいよいよ幕開けしたのです。
100 年超のオゾン療法の長い歴史においてわずかこの十年ほどで、医療従事者たちのオゾン療法に対する認識は、「なにやら怪しい」から「なるほど、こうした作用メカニズムならば多くの疾患に有効なことも納得できる」に変わってきました。

●オゾン療法
【全身療法】
A. 「大量自家血液療法(Major Autohemotherapy, MAH)」: 全身療法として最も一般的に行われています。これは、患者さんから採取した静脈血と一定濃度のオゾンガス(医療用の純酸素と、その酸素から製造されるオゾンガスとの混合ガス)を接触・反応させ、その血液を再び患者さんの体内に点滴で戻すという方法です。
適応疾患としては、まず①脳虚血、②虚血性心疾患、③閉塞性動脈硬化症などの下肢虚血といった虚血性疾患が挙げられます。これは MAHが、トロンボキサン合成を阻害することにより血小板凝集抑制作用を示すこと、NO(一酸化窒素)の産生誘導により血管拡張作用をもたらすこと、組織プラスミノーゲンやウロキナーゼの活性化により線溶素溶解を増加させること、赤血球において解糖系を亢進させ ATP 産生および 2,3-DPG(2,3-ジホスホグリセリン酸)を増加させることによります。2,3-DPG の増加は、末梢において赤血球が酸素を放出する作用を高めますが、MAH においては、オゾン感作血液を激しく混和することを避けなければなりません。振とうにより赤血球が壊われてしまいますので、上記の反応が抑制されてしまうからです。
次に、④細菌やウイルスなどによる感染症です。オゾンは強力な酸化剤であり細菌やウイルスを不活化することが知られていますが、MAHで用いるオゾンガスによって細菌やウイルスが直接不活化されるわけではありません。なぜならば、血漿中にはアスコルビン酸や尿酸などの抗酸化成分が豊富に存在するため、これらによりオゾンは速やかに消去されてしまうからです。血液にオゾンガスを通じた際に生じる二次生成物を介して、ウイルスの複製などに重要な役割を果たしているレドックス(酸化還元)バランスを調整することや免疫系をマイルドに活性化すること、さらに炎症を抑制することなどによって感染症を改善させると考えられています。
⑤自己免疫疾患に対してはMAH により発揮される抗炎症作用が主要なメカニズムと考えられています。
B.「オゾン直腸注入法(Rectal Insufflation, RI)」: これはカテーテルを肛門から挿入しオゾンガスを直接直腸内に入れる方法です。オゾンガス浣腸とも言われています。血管穿刺を必要としないため、血管が細い小児や血管が脆弱な患者さんに対しても容易に用いることができます。RI では、オゾン濃度として 10〜30μg/ml、オゾン用量として 100〜200ml で用います。適応疾患は MAH と同じものがあげられますが、当院では特に、腸管疾患に使用してとても良い成績を上げています。

【局所療法】
オゾンガスを関節内に注入する方法も、局所療法としてしばしば用いられます。注射をする関節にもよりますが、例えば膝関節の場合にはオゾン濃度 10〜20μg/ml、オゾン用量 5〜20ml で実施されることが多いです。
日本において古くから実施されている局所療法に、「オゾンガス皮下注射」があります。これは筋骨格系疾患などで圧痛がある場合、圧痛点あるいはその周辺に対して 5〜20μg/ml のオゾンガスを少量ずつ皮下注射する方法です。
また、傍脊椎筋に対してオゾンガスを注射する方法は、腰痛治療としてよく用いられる方法です。この場合のオゾン濃度や用量は、皮下注射とほぼ同じになります。
さらに、オゾン軟膏を用いた患部の清掃や炎症の鎮静化は、皮膚感染症や熱傷、褥瘡などに対して良い適応があります。

漢方や鍼灸と同じように、長く伝統的なオゾン療法がEBMの科学の土台に乗ってきました。
古くて新しいこの治療を、ぜひ多くの人に知ってもらいたいと願っています。



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