糖質制限食の問題

   

今日は糖質制限を続けることによりどういう弊害が起こる可能性があるのかを考えてみましょう。

 

昨日述べたように糖質制限食は、タンパク制限や脂質制限に比べて優れた減量効果がないことはお話しました。

「でも世の中では流行っているし、なんかよさそう」

「友達で痩せた人がいるのでやってみたい」

と思っている人がいるかもしれない。しかし、極端な糖質制限は様々な問題を誘発するリスクがあります。よって数回にわたり、糖質制限の問題点について考えてみたいと思います。

 

問題1:肉の多食

糖質制限食は当然ですが糖質を制限しています。よって糖質を制限した分、他の栄養素から必要カロリーを摂取しなければなりません。その時、中心になるのが肉を中心としたタンパク質ですので、おのずと肉多食になります。しかし、肉多食には数多くの問題が指摘されているので、いくつか列挙してみましょう。

①      赤い肉を1日100g摂取するごとに大腸がんのリスクは17%増加する

②      加工肉の1日摂取量が50g(ホットドッグなら1本、ベーコンスライスなら2枚)増えるごとに、大腸がんのリスクは18%増加する(①、②参考文献Bouvard V, et al. Lancet Oncol 2015; 16(16): 1599-1600)

③      日本の女性において赤身肉摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループに比べて大腸・結腸癌が48%高い

④      日本の男性において加工肉が最も多いグループは最も少ないグループに比べて結腸癌が37%高い(③、④参考文献 Takachi R, et al. Asia Pac J Clin Nutr 2011; 20(4): 603-12)

⑤      赤身肉と加工肉1日あたり120g程度食べていた人は、あまり食べていなかった人(20g程度)よりも総死亡率が3割近く高い(Larsson SC, et al. Am J Epidemiol 2014; 179: 282-9)

 

さらに、これまでの肉の摂取量とガンの発症における11研究を詳細に分析した論文において、1日あたり赤身肉、加工肉の摂取量は140gまでは直線的に大腸がんを増加させるという研究結果も報告されています(Chan DS, et al. PLoS One 2011; 6: e20456)。

なお、現在日本人の1日赤身肉摂取量は66g(平成28年国民健康・栄養調査)であるので、それを、この結果で考えるのであれば、日本人の大腸がんは赤身肉の摂取で1~2割増えた計算となります。

実際、日本人の大腸がんは増え続けています。

(平成29年我が国の人口動態より引用)

その他、赤身肉・加工肉は、大腸癌だけではなく、子宮内膜がん・食道がん・肺がん・食道がん・胃がんのリスクを増加させますし、(Yip CSC, el at.Eur J Clin Nutr 2018; 72: 18-29)、糖尿病のリスクも増加させます。(Pan A, et al.  Am J Clin Nutr 2011; 94: 1088-96)

以上を踏まえれば、肉の過剰摂取が如何にハイリスクな食べ方か理解できるのではないでしょうか。

なおここでは「肉が悪い」といいたいのではありません。ただご飯を制限してその分のカロリーを肉でとろうとすると肉過剰摂取となり、そのこと自体が体に無理が生じさせ、不健康になっていく危険がある、ということを言いたいのです。

ちなみにですが、日本人にとって肉といえば「牛・豚・鶏」が主用3食材だと思うのですが、この中では私は鶏を代表とする鶏肉をお勧めしています。

その理由です。まず鶏肉はがんの原因となる飽和脂肪酸、総脂肪量がが3つの中で最も少ないため、同量をとった場合、肉の中で最もがんのリスクが少なく、またカロリーも低くなります。それ以外にもビタミンが豊富(ビタミンA・ビタミンB群・ビタミンKなど)、コレステロールを減少させる不飽和脂肪酸がバランスよく含まれている、善玉コレステロール(HDL)の生成を助ける働きをもつステアリン酸が多い、脂肪肝の予防になるメチオニン、疲労回復に効くイミダペプチドが多い、など素晴らしい成分も豊富です。さらに、「鶏肉を1日あたり50g摂取したグループは大腸がんが1割減った」という論文も存在します。(Shi Y, et al. Eur J Clin Nutr 20115 54: 243-50)

これらを踏まえ、加藤は鶏肉を最も評価しています。

 

以上、糖質制限の代償としての肉の過食の問題点を癌を中心に考えてきました。一方で、白米はがんを増やすことはないことは2016年英国医師会雑誌のメタアナリシス研究(複数の研究の結果を統合し、より高い見地から 分析すること)において証明されています。(Aune D, et al. BMJ 2016; 353: i2716)

この点からも糖質制限による蛋白多食が間違った食事戦略だと考えます。

 





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