発酵食品の王様 納豆
「世界一素晴らしい健康食品は何だと思うか?」
と質問されたら、私は悩まず「納豆」と答えます。
納豆、素晴らしい点はてんこ盛りですが、今回「発酵食品」という視点から納豆の凄さを考えていきたいと思います。
●納豆を発酵食品として考える
1) 発酵食品としての素晴らしさ
納豆がなぜ素晴らしいのか、それは善玉菌たっぷりの発酵食品だからです。
発酵食品とは簡単に言えば、微生物を使って食品を変化させるものです。味噌は大豆を麹菌で、納豆は大豆を納豆菌で変化させています。そしてこの変化により、良い微生物、つまり「善玉菌」がたっぷり入った腸内改善食品に生まれ変わるのです。
腸とは小腸と大腸の総称です。全長約9m、広げるとテニスコート1面の面積ほどになる、体でもっとも大きな器官です。そして、この腸内には、※腸内細菌と呼ばれる菌が住みついています。この菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌(良いことも悪いこともしない菌群)」という3種類が存在し、ごく簡単に言ってしまえば、善玉菌が増えれば腸の状態は良くなり、悪玉菌が増えれば腸の状態は悪くなっていきます。
※腸内細菌:腸管内に暮らす細菌群の総称。種類にすると200~300種、総数100兆個、総重量は1.5kgにもなる
そして、この善玉菌こそ、納豆や味噌、醤油などを発酵させる菌であり、それがたっぷり入った食品を食べることこそ、体内で善玉菌を増やす一番簡単な方法なのです。では善玉菌がたっぷり入った納豆を食べることでどのような良いことが起こるのかを少し詳しく見ていきましょう。
●善玉菌の働き
① 栄養成分の吸収、排泄の改善
腸の働きは何と言っても「食べ物の消化、吸収」です。栄養分を腸で消化、吸収することで初めて人間が生きていく上でのエネルギーを得ることになります。つまり腸こそ、人間が生きるための最も大切な「根っこ」なのです。
根っこの働きである栄養分の吸収を促進するのが「善玉菌」です。善玉菌は腸がもっとも能力を発揮できるように腸管内を良い状態に保ち、さらに消化を助ける消化酵素やビタミン、ホルモンの産生にも関わります。
さらに「善玉菌」は排泄にも関わり、便秘解消作用も持っています。
以上のように、善玉菌は腸本来の働きである栄養の消化、吸収、及び老廃物の排泄にもっともかかわっている細菌なのです。
② 酵素、ビタミンを作る
体い大切な酵素やビタミン・ミネラルの一部は、実は体内でも作られています。「代謝酵素」、「消化酵素」、「ビタミン類(ビタミンB1,B2,B6,E,Kなど)」は善玉菌によって作られるのです。つまり、私たちの体にとって善玉菌は、「体内」の酵素、ビタミン維持のために必要不可欠なのです。
③ 免疫機能を改善させる
「免疫」を改善するのも善玉菌です。
免疫とは、自分の体を守る軍隊のことです。私たちが簡単に風邪をひかないのも、仮に罹患しても肺炎などになることはめったになく治癒するのも免疫細胞のおかげです。
さて、この私たちの体を守る免疫細胞ですが、実は、その多く(約60%)が小腸に存在しています。言い方を変えるなら、腸内は体内における免疫の最大基地なのです。
なぜ、免疫細胞の多くが腸管に集まっているのでしょうか?その理由は腸こそが体にとって最も危険な場所だからです。
考えてみてください。腸内には毎日毎日、外から食べ物が大量に入ってきます。この中には細菌、ウイルス、寄生虫、カビなどさまざまな異物が含まれています。これを体内に入れてしまえば、血液に乗ってダイレクトに体全体に散布されるので、命の危険すらあります。その危険な異物を水際で阻止するために、腸管を前線基地として多くの免疫細胞を配置しているのです。
この免疫前線基地において善玉菌が多いということは、消化、吸収、排泄がスムーズになり、さらにビタミン、酵素などがたくさん作られるということです。そして体全体の栄養状態は改善、代謝等も活発に行われるため、体内の戦士である免疫細胞も活動しやすくなります。また豊富な栄養素により、免疫細胞も多く供給されます。
これに対して悪玉菌が多くなれば、栄養供給低下が起こり、基地内(腸内)の環境悪化によって戦士(免疫細胞)の数と質が低下します。
このように、腸内環境の良し悪しが、直接体の免疫機能の良し悪しに繋がり、それを左右するのが善玉菌なのです。
つまり善玉菌を増やすことは、うがい、手洗いに負けない、風邪予防対策なのです。
④ 心を改善させる
善玉菌は、心も改善してくれます。
近年、脳科学の分野の発達は著しく、脳内にあるとみられている百数十種類の神経伝達物質のうち25種類程度が発見されています。
そして、その25種類の中でも特に注目されているのが「セロトニン」という神経伝達物質です。これは、脳内に「安らぎと幸せ」を与え「感情を調整し穏やかにしてくれる」伝達物質で、セロトニンが不足すると「安らぎと幸せ」を感じにくくなることが分かっています。実際、うつ病の治療薬として世界で最も処方される薬がこのセロトニンを増やすための薬です。
また、セロトニンの不足は不眠も引き起こします。セロトニンは代謝の過程で、睡眠を誘発するメラトニンを作り出します。セロトニンが不足すれば、睡眠誘発作用を持つメラトニンも当然不足しますから、人は眠りに陥りにくくなっていくのです。
以上をまとめると、セロトニンとは感情を安定化し、安らぎと幸せを感じさせ、そしてぐっすりと眠らせてくれる心の安定に必要不可欠な物質ということになります。
では、このセロトニンは善玉菌とどういう関係があるのでしょうか?
実はセロトニンの90%以上は小腸の粘膜にあるクロム親和細胞で作られます。
腸の状態によって、体内のセロトニン量が左右されるということはつまり、腸管環境を整える善玉菌が、セロトニン量を決めている、つまり、善玉菌があなたの幸せを決めている、と言い換えることが出来るのです。
「消化排泄の改善」「酵素、ビタミンの生成」「免疫力の改善」「心の安定」を行うのが、発酵食品の摂取によって増える善玉菌です。
中には納豆が苦手な方もいらっしゃるでしょう。しかしご安心ください。日本には納豆だけでなく多くの発酵食品があり、その種類の豊富さは世界一といわれています。前述した味噌をはじめ、醤油、酢などの調味料はすべて発酵食品です。また食べ物でいえば、ここで取り上げる納豆、ぬかづけを代表とする漬物、甘酒、鮒ずし、鰹節なども発酵食品として挙げられます。
ぜひ、腸のために、健康のために発酵食品を積極的に摂取してください。
ちなみに、腸内の善玉菌を増やすためには、発酵食品を直接取る方法以外に善玉菌の好物を摂取するという方法もあります。
善玉菌の好物とはこんにゃくのグルコマンサン、野菜や穀物に含まれるセルロース、リンゴ、みかんに代表されるペクチン、海草のカルゲナなどの食物繊維と野菜や果物に含まれる甘み成分のオリゴ糖です。
つまり善玉菌は野菜や海草、果物が大好きということです。
ぜひ、発酵食品とともに、これらの食べ物を積極的に食べるようにしていただければと思います。
なお、私が世界一の食品と推薦する納豆は発酵食品として以外にも多くの素晴らしい作用が証明されています。
①天然の胃薬~たっぷりの消化酵素で胃の働きを助ける
②天然の抗生剤~納豆菌が生産する「ジピコリン酸」は、大腸菌をはじめ腸内の悪玉菌に対する幅広い抗菌スペクトルを持っています。
③天然の骨粗しょう症予防薬~骨を強くするビタミンK2は世界最大の含有量を誇り、骨粗しょう症・骨折を予防します。
④天然の抗不安薬~健脳食といわれる豊富なレシチンにより、精神を安定させます。
⑤天然の血栓予防薬~心筋梗塞や脳硬塞の患者さんに、救急病院で使われる治療薬ウロキナーゼとほぼ同等の力があるとされる「ナットウキナーゼ」により血液をサラサラにします。
その他ナットウキナーゼには、朝鮮人参に匹敵するほどの強壮作用(納豆カリクレインによる精子活性上昇作用)があることも分かっています。つまり納豆は精力剤でもあるのです。
今回、納豆に対して発酵食品としての素晴らしさのみお話しましたが、大豆のプラス面など考えれば、実はもっともっと素晴らしい点は山もりです。
この納豆、国産遺伝子組み換えなし大豆であっても1パック100円以下と超格安です。
様々なサプリメントも素晴らしいですが、健康習慣のためにぜひ納豆を取り入れてください。
茨城在住の加藤、いつの日か「納豆大使」になれる日を夢見ています(笑)
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
皆様の毎日がハピネス一杯でありますように。
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