風土で考える正しい食事

   

では、改めて私たちは何を食べるべきなのか。それを「風土・地理」、そして「形体」という視点で考えてみたいと思います。

まずは「風土」。風土とは「その土地の気候・地質・景観などにみられる住民の生活や文化に深く働きかけるものとしての環境」ということになります。食だけにフォーカスすれば、その土地に暮らす人は、その土地でとれたものを食べるべき、という考えです。現在風に言えば「地産地消」ということになるでしょうか。

その視点で世界を見てみましょう。例えば、アマゾンの奥地に住むヤノマモインディアン。彼らは海から遠く離れた内陸地にすむため、塩がほとんど手に入りません。よって、1日の塩摂取量は平均0.1g程度となります。近年は塩分過多が健康の問題だと取り上げられるため、「塩は少なければ少ないほどいいのでは?」と思われるかもしれませんが、塩は体にとって必要不可欠な物質です。

まず、塩を単純にNaCl(Na:ナトリウム Cl:クロール)というミネラルで考えてみましょう。例えば体重70kgの成人男性の場合、60%が水分で構成されるため、42リットルは液体成分となります。内訳は、細胞内液28リットル、細胞外液14リットル。そして14リットルの細胞外液はさらに血液2.8リットル、間質液11.2リットルに分けられます。そしてこの間質液11.2リットルの中に含まれているのがNaClです。大体平均すると 200g位を含有しています。なお、NaClですが、細胞外液の浸透圧の維持、細胞間の栄養や水分の流入、排泄物の流出の調整、血液の酸塩基のバランス調整、筋肉の収縮、神経機構の維持、胃酸の生成、有害物質解毒、体温の維持など、人間が生きていくために必要不可欠な物質として、体内で多くの役割を果たしています。

この塩ですが、健康を維持するためには最低1日1.5g以上必要と推定されています。(Oliver WJ et al. culture Circulation 1975; 52: 146-51・Intersalt Cooperative Research Group. BMJ 1988; 297: 319-28)

これを踏まえて改めてヤノマモインディアンを見ていきましょう。彼らは自分たちの暮らす塩のない風土の中で、体内に塩がなくても生きていけるような体質に変化させ、0.1gという超微量でも体を維持することを可能にしました。逆に言えば、もし日本人がこの環境の中に暮らせば、塩分不足により健康被害(ひどい場合は低Na血症により痙攣や意識障害を伴う場合もある)が生じる危険があるということです。このような風土に伴い体質の変化を無視し、栄養学を押し付け、ヤノマモインディアンに塩を1.5g摂取させれば、現在の15倍以上摂取することになるため、1.5gの塩であるにもかかわらず、塩過剰により害(高血圧や胃がんなど)が生じる危険があると考えられます。

つまり、人は風土の中で食べるものを選択し、それにあった体を長い時間かけて形成してきたということです。と考えるなら、アラスカに生きるイヌイットが野菜をほとんど食べず、アザラシ、白熊の肉が主食として生きてきたことも、パプアニューギニア高地に住む人々が、主食としてサツマイモ(1日1kg以上)中心の食生活を送っているのも風土から見れば正しい食事なのです。

「風土食」とは、過去何千年という歴史の中で、先祖たちが食べては捨て、食べては選んでようやく作り上げた伝統の食習慣なのです。

とするならば、「風土」という視点で、私たち日本人をみれば、海に囲まれた島国という性質上、当然ながら海産物は風土食のはずです。実際、縄文時代のゴミ捨て場である「貝塚」には多数の貝や魚の骨などが見つかっており、数万年以上、日本人は海産物を食べ続けていたことがわかります。それ以外に、温暖で水が豊富な環境を生かし、お米や野菜の栽培は1万年以上前から行われているし、山に入れば、木の実や果物も豊富でありました。以上風土という視点から考えるなら、私たち日本人の食べるべきものは「魚介類、穀物、野菜、果物、木の実」ということになるのであります。

以上風土という視点から、日本人が食べるべきものを考えてみました。次回は地理から日本人が食べるべきものを考えてみたいと思います。





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